患者のT細胞を取り出して改変し戻す従来のCAR-T(ex vivo)に対し、体内で直接CAR-Tを作らせる「in vivo」アプローチが2026年に相次いで前進しました。CircioとAcuitas Therapeuticsは、Circioの環状RNA発現技術「circVec」とAcuitasのT細胞標的型LNPを組み合わせるin vivo CAR-Tの評価契約を締結(4月15日)。Eli Lillyは、レンチウイルス系の体内遺伝子導入基盤(iGPS)を持つKeloniaを最大70億ドルで買収すると発表しました(4月20日)。
ex vivoの自動化と、in vivoの台頭
ex vivoの世界では、Sartoriusの「Eveo」のように患者ごとのバッチ製造を自動化・集約してスループットとコストを改善する動きが進みます。一方でin vivoは、「患者ごとの細胞加工」という工程そのものを無くす方向です。投与した分子が体内のT細胞に入り、患者自身の体でCAR-Tを生成させる発想で、CircioはLNP製剤化と発現・活性・持続性の評価を、LillyはKLN-1010(抗BCMA)などの開発を進めます。
製造の重心が移る
in vivoが現実になると、製造の難所はクリーンルームでの患者細胞処理から、「投与する分子」の量産と品質へ移ります。具体的には、LNP(イオン化脂質・封入)、mRNA・環状RNA、ウイルスベクターといった素材の製造比重が高まり、無菌・規格・スケールの作り込みが鍵になります。患者単位のスケールアウトから、ロット単位のスケールアップへ──製造設備・人員・分析の設計思想が変わりうる論点です。
いずれもまだ評価・臨床段階であり、ex vivoが置き換わると決まったわけではありません。ただ、細胞治療と核酸・LNP・ベクター製造の境界が溶け始めていることは、製造側が早めに見ておきたい流れです。