スイスの大手受託製造機関(CDMO)であるLonzaが、ADC(抗体薬物複合体)の製造キャパシティを拡大するとともに、名称非開示の大規模な米国製薬企業との受託製造パートナーシップの範囲を広げたと発表した。ADCは近年、がん治療薬として相次いで承認され、製造需要が急伸している分野だ。
ADCとはなにか──製造が難しい理由
ADCは、がん細胞を標的とする抗体(モノクローナル抗体)と、細胞毒性を持つ低分子薬(ペイロード)をリンカーと呼ばれる化学的な橋でつないだ複合薬だ。構造的には「バイオ医薬品」と「低分子化学薬」の二面性を持ち、製造には両者の設備と技術を高度に組み合わせる必要がある。特にペイロードとして使われる化合物の多くは高活性医薬品成分(HPAPI)に分類され、取り扱いに特殊な封じ込め設備が求められる。コンジュゲーション(抗体とペイロードの結合)工程では薬物抗体比(DAR)の均一性が製品品質に直結するため、反応条件の精密なコントロールが欠かせない。こうした複雑性から、ADC製造を内製化できる企業は限られており、専門CDMOへの委託が業界標準となっている。
受託製造の「戦略的パートナー」化
今回のLonzaの発表が示すのは、単なるキャパシティ増強にとどまらない。名称非開示ながら大手米国製薬との「パートナーシップ拡大」という表現からは、スポット契約ではなく長期的・包括的な製造委託関係が構築されていることが読み取れる。ADCのような複雑な製品では、原薬(DS)から製剤(DP)まで一貫した製造品質管理が求められるため、ひとつの信頼できるCDMOとの深い関係構築が重視される。LonzaはすでにHPAPIおよびADCペイロード・リンカーの製造能力拡大も発表しており、ADC製造のフルスタック対応を加速させていることがわかる。
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