技術トピック
2026.06.13

なぜ今みんな「灌流」に動くのか──2,000Lで2万L級をまかなう連続生産の現実味

技術トピック

ここ数年、上流(培養)の話題は「いかに濃く、長く回すか」に寄っています。その中心にあるのが灌流(パーフュージョン)。新鮮な培地を入れ続け、老廃物を抜き続けることで、細胞を高密度のまま長期間走らせる方式です。なぜ今、各社がここに動くのでしょうか。

規制の追い風

大きかったのは、2023年に確定したICH Q13(連続生産のガイドライン)です。連続生産が「正式に承認を取れる商用の道」として認められたことで、移行のハードルが下がりました。技術的に可能、というだけでなく、出口(承認)が見えたことが効いています。

設備が小さくて済む、という現実的な魅力

灌流の魅力は、突き詰めると「設備が小さくて済む」ことに集約されます。ある解説では、80×10⁶ cells/mL級で回す2,000Lの灌流バイオリアクターが、20,000L規模のfed-batchトレインに匹敵する年間生産量を出しうるとされています。

設備が小さければ、建屋も投資も小さくなります。さらにシングルユースの灌流構成なら、洗浄バリデーションの負担も大きく減ります。多品種・変動する需要に、身軽に応えたい——その要請と灌流の特性がかみ合っています。

現場目線での注意点

もちろん良いことずくめではありません。高密度になるほど酸素供給が律速になりやすく、乳酸の蓄積や代謝の破綻と隣り合わせです。細胞保持にはATF(交互タンジェンシャルフロー)などの装置も要ります。fed-batchの「決まった日に仕込んで、最後に回収」という分かりやすさを手放す覚悟も必要です。

それでも、設備効率という一点で灌流が持つ引力は強く、シングルユース市場全体(2030年に約337億ドル規模との予測もある)の拡大と歩調を合わせて、選択肢として定着しつつあります。

※ 本記事は学術・業界メディアおよび市場調査の公開情報をもとにした解説です。

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