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糸状菌 発酵培養用培地

糸状菌 発酵培養用培地は、AspergillusやTrichodermaなどの糸状菌(カビ)を分離・胞子形成・前培養から大量発酵まで培養し、酵素・有機酸・組換えタンパク質を生産させるための培地である。菌糸形態・分泌誘導・高粘度ブロスの酸素供給を前提に、炭素源と窒素源のバランスで設計する糸状菌特有の培地系であり、哺乳類細胞や単細胞微生物とは選定軸が全く異なる。

糸状菌発酵AspergillusTrichoderma培養培地窒素源胞子形成

用途・特徴

糸状菌発酵では、酵母や大腸菌と違って菌糸が伸長・分岐し、ペレット状やフィラメント状の塊として生育するため、培地は粘度・酸素移動・菌形態の制御を前提に設計されます。AspergillusやTrichodermaは細胞外に酵素や有機酸を大量分泌するため、誘導性プロモーターを駆動する炭素源(セルロース、ラクトース、ソフォロースなど)と、十分な窒素源の量比が生産性の律速になります。哺乳類細胞培地の糖鎖や比産生速度ではなく、分泌誘導とブロス物性が選定軸です。

培地系は性格が二分されます。FGSC標準に準拠した最少培地(AMM)/完全培地(ACM)や規定培地は、栄養要求性マーカー・遺伝子発現解析・株評価で組成の再現性を重視する研究用途で選ばれます。一方、産業発酵では酵母エキス系ニュートリエントや麦芽エキス・ジャガイモデキストロースなどの複合原料を窒素源・増殖促進因子として大量投入し、力価とコストで選定します。同じ宿主でも目的が研究か生産かで銘柄が置き換わります。

他モダリティでは選定基準も原料も全く異なります。CHO/HEK293の哺乳類本培養は無血清・化学的定義培地が中心で、ここで使う複合原料や寒天系分離培地は使われません。大腸菌・酵母発酵とも、糸状菌は分生子(胞子)からの前培養・形態制御・高粘度ブロスの酸素供給という固有の課題を持ち、PDA・麦芽エキス・Czapek-Doxといった胞子形成・分離向けの基準培地が前段で必須になる点が独特です。

Point
  • 菌糸の伸長・ペレット/フィラメント形成でブロス粘度と酸素移動が律速になり、培地で菌形態を制御する
  • 細胞外への酵素・有機酸の分泌誘導を狙い、炭素源(セルロース・ラクトース等)の種類で誘導が決まる
  • 胞子形成・分離・前培養には PDA・麦芽エキス・Czapek-Dox など糸状菌の基準培地が前段で必須
  • 研究用は FGSC 標準の最少(AMM)/完全(ACM)培地で組成再現性、産業発酵は複合原料で力価重視と使い分ける
  • 酵母エキス系ニュートリエントや麦芽エキス・ジャガイモデキストロースが大量発酵の窒素源・増殖促進因子になる
  • Aspergillus と Trichoderma で得意な生産物(酵素・有機酸・組換えタンパク質)が異なり最適組成も分かれる

使用方法

基本的には、宿主菌種と生産物(酵素・有機酸・組換えタンパク質)に合わせて分離・前培養と本発酵の培地を決め、分生子の取得から高粘度の本発酵へ進めます。

1宿主菌種・生産株・選択/栄養要求マーカーを確認する
2研究用(規定・最少/完全培地)か産業発酵(複合原料)かを決める
3PDA・麦芽エキスなどで胞子形成させ分生子懸濁液を準備する
4炭素源(誘導基質)と窒素源の量比、前培養培地を設計する
5菌形態・粘度・溶存酸素・pHを見ながら本発酵し誘導する
6菌体量・力価・分泌量を評価し培地組成を最適化する
実際の条件は、宿主菌種、生産物、誘導基質、菌形態(ペレット/フィラメント)、培養スケール、酸素供給能、GMP/力価要件によって変わります。

使用される工程

糸状菌 発酵培養用培地は、菌株の分離・胞子形成から前培養、高粘度の本発酵、分泌誘導までの糸状菌上流工程で使われます。

分離・胞子形成

PDA・麦芽エキス・Czapek-Dox などの基準培地で菌株を分離し分生子を形成させる。

主な用途
  • 菌株分離
  • 胞子形成

前培養(種培養)

分生子懸濁液から本発酵へ渡す菌糸体を立ち上げる前培養に複合培地を使う。

主な用途
  • 種培養
  • 菌糸立ち上げ

高密度本発酵

ジャーやバイオリアクターでの大量発酵で複合原料や酵母エキス系ニュートリエントを投入する。

主な用途
  • 大量発酵
  • 窒素源投入

分泌誘導・生産

誘導基質を含む炭素源で酵素・有機酸・組換えタンパク質の分泌を立ち上げる。

主な用途
  • 分泌誘導
  • 酵素生産

使用されるモダリティー

糸状菌 発酵培養用培地は糸状菌発酵モダリティの中核で、哺乳類細胞系や単細胞微生物のモダリティでは選定基準も原料も置き換わります。

糸状菌発酵
関連度
Aspergillus/Trichoderma 発酵胞子形成・前培養高粘度本発酵
本カテゴリの主用途。菌形態と分泌誘導を軸に分離培地から本発酵培地まで使い分ける。
工業用酵素
関連度
セルラーゼアミラーゼプロテアーゼ
Trichoderma/Aspergillus による酵素分泌生産で誘導基質を含む発酵培地が直接効く。
有機酸・代謝物
関連度中〜高
クエン酸発酵グルコン酸生産
Aspergillus による有機酸発酵で炭素源・窒素源設計が力価を左右する。
組換えタンパク質
関連度中〜高
糸状菌発現株培養異種タンパク質分泌
糸状菌を宿主とした組換えタンパク質生産で発現株向けの規定・複合培地が関わる。
微生物発酵(細菌・酵母)
関連度低〜中
大腸菌・酵母との対比
同じ微生物上流だが単細胞系は菌形態制御や胞子前培養が不要で培地系が置き換わる。
哺乳類細胞・ウイルスベクター
関連度低〜中
関連原料酵素の供給
製造本体は哺乳類細胞系で対象外。糸状菌で作る原料酵素を供給する場合に限り関係する。

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