アジア太平洋(APAC)地域では細胞・遺伝子治療(CGT)への投資と開発意欲が急速に高まっているが、製造の根幹を支えるウイルスベクターやプラスミドDNAの供給体制が上流工程で大きく不足しているとBioPharma APACが報じた。欧米の主要CDMOへの依存が続く中、地政学的リスクも相まってAPAC域内での自給体制構築が急務となっている。
なぜベクターとプラスミドが製造の首根っこを押さえるか
CGT製造において、ウイルスベクター(AAVやレンチウイルスなど)は治療用遺伝子を標的細胞に届ける「運び屋」として不可欠な存在だ。そのベクターを産生するためには、まず高品質なプラスミドDNAが大量に必要になる。プラスミドは大腸菌などで発酵・精製されるが、治療グレードで求められる純度・残存宿主DNA量・スーパーコイル比率などの品質規格は非常に厳しく、製造施設の整備には相応の時間と投資がかかる。APAC地域はこのプラスミド製造拠点が慢性的に不足しており、欧米の外部委託に頼らざるを得ない状況が続いている。
「罠」から抜け出すには何が必要か
記事ではこの状況を「CGT Trap(CGTの罠)」と表現している。製品開発は進んでいるのに、製造の材料調達ができないという矛盾が競争力を損なう。解決策としては、域内でのプラスミドDNA製造専業企業の育成、国家レベルでの製造インフラ整備支援、そしてCGT製造を専門とする地域CDMOへの資本誘致などが考えられる。韓国・シンガポール・オーストラリアなどは既に政策的な後押しを強めており、日本でもCGT関連の製造能力増強が重要課題と認識されている。上流素材の確保なくして「APAC発のCGT製造」は絵に描いた餅に終わる、との警鐘が鳴らされている。
※ 本ページは公開情報(BioPharma APAC報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。