米国テキサス州サンアントニオを拠点とする非営利組織BioBridge Globalの子会社であるBBG Advanced Therapiesは2026年7月7日、Kite(ギリアド・サイエンシズ傘下の細胞療法企業)と連携し、移動型アフェレーシスセンター(Mobile Leukapheresis Center、MLC)をテキサス州で運用すると発表しました。MLCは、CAR-T療法の起点となる患者T細胞の採取(アフェレーシス)を、患者が暮らす地域のより近い場所で行うことを狙った、車両型の採取拠点とされています。BBGはこの車両を「世界初」と位置づけています。
発表では、Kiteはこれまでに34,500人を超える患者にCAR-T療法を提供してきた一方、米国で適応となる患者のうち実際に治療を受けられているのは約2割にとどまるとされ、この差を埋めるための新しいアクセスモデルが必要だと説明されています。BBGのCOOであるAdrienne B. Mendoza氏は、Kiteが築いてきた細胞療法エコシステムの実績を挙げ、連携先として適していると述べたと伝えられています。
アフェレーシスがCAR-T製造の起点になる理由
CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞、Chimeric Antigen Receptor T-cell)療法は、患者自身のT細胞を体外で改変してがん細胞を攻撃できるようにする自家細胞療法です。この一連の工程は、患者の血液から目的の白血球(主にT細胞)を選択的に集めるアフェレーシス(白血球アフェレーシス/ロイカフェレーシス)から始まります。ここで集めた細胞が、その後の製造すべての出発原料になります。
一般に、採取された細胞は製造施設へ搬送され、CAR遺伝子を導入したうえで必要な数まで増やす(拡大培養)工程を経ます。その後、品質の確認を経て、認定治療施設(Authorized Treatment Center)へ戻され、患者に一度だけ投与されるという流れが取られます。BBGの発表でも、MLCで採取した細胞をKiteの施設へ送り、CAR遺伝子の導入と増殖を経て、認定治療施設で投与するという工程が説明されています。
自家細胞療法では、出発原料である患者細胞の状態が最終製品の品質に直結するとされ、採取から搬送、製造開始までの時間や温度管理(コールドチェーン)が重要になります。採取拠点が地理的に限られると、遠方の患者は移動負担が大きく、適応があっても治療につながりにくいという課題が指摘されてきました。採取工程を車両で地域に持ち込む今回の取り組みは、製造の起点そのものを分散化し、こうした地理的な制約を緩めようとするアプローチとして受け止められます。