韓国のInventage Lab(インベンテージ・ラボ、本社:京畿道城南市)が、独自のマイクロ流体(microfluidics、微細な流路で液体を精密に混合する技術)プラットフォームを基盤とするmRNA-LNPの大量製造技術を、CRS 2026で発表すると報じられています。CRS 2026はControlled Release Society(放出制御学会)の年次大会で、ポルトガル・リスボンにて現地時間の月曜から木曜にかけて開催されるとされます。同社はポスター発表の形で成果を示す予定と伝えられています。
報道によると、発表の中心となるのは同社の「IVL-GeneFluidic」プラットフォームと、それを実装した「HANDYGENE」製造システムです。LNP(Lipid Nanoparticle、脂質ナノ粒子)は、壊れやすいmRNAを脂質の膜で包み込み、体内の細胞まで安定して届けるための運搬体で、mRNAワクチンや遺伝子治療の要となる部材です。今回の技術は、このLNPを小規模の研究段階から商用規模まで、粒子径と均一性を保ったまま製造できる点が特徴とされています。線状mRNAや自己増幅型mRNA(saRNA)、環状mRNAといった複数の種類で均一性を保てたとも報じられています。
数値面では、製造収率を最大89%まで高め、従来法よりも小さく均一なLNPが得られたと報じられています。あわせて、製造中に溶媒(有機溶剤)の濃度を下げる独自の「インライン希釈(in-line dilution)」技術により、粒子の安定性を改善したとされます。同社は「One Process. One Platform. Any RNA, Any Scale」を掲げ、海外装置への依存を国産システムで置き換えることも狙いに挙げていると伝えられています。
LNP製造でスケールアップが難しい理由
LNPは一般に、mRNAを溶かした水相と脂質を溶かしたアルコール相を、マイクロ流体チップの中で瞬間的に混ぜ合わせることで形成します。混ぜ方の速さや均一さが粒子の大きさとばらつきを左右するため、流路を大型化したり本数を増やしたりして生産量を上げると、混合の条件が変わり、粒子径分布や封入効率(mRNAがどれだけ粒子内に取り込まれたかの割合)が小規模時と揃わなくなりやすいことが、量産化の一般的な難所として知られています。
そのため製造装置の分野では、小規模で最適化した条件を商用規模でも再現できる「スケールに依存しない設計」や、混合後に溶媒濃度を速やかに下げて粒子を安定化させる工程が重視されます。溶媒が高い濃度のまま残ると粒子同士の融合や凝集が進みやすいため、希釈のタイミングと精度が品質を左右する要素とされています。今回の発表は、こうした量産と品質の両立という課題に対する一つのアプローチとして位置づけられます。