米サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)が、ブラジル・サンパウロ都市圏のバルエリ(Barueri)に新しい製造拠点を建設していると報じられています。ブラジル経済紙ヴァロール(Valor Econômico)の報道を引く形で複数の媒体が伝えており、同社のジャンルカ・ペッティティ(Gianluca Pettiti)社長は「サンパウロの新しい製造ユニットは建設中」と述べたとされます。稼働時期や投資額など一部の数値は、現時点では公表されていません。
報じられている内容によると、この新工場は生物学研究に使う血清(serum)の生産を主な目的とし、輸出の役割も担うとされます。血清は、細胞を体外で育てる細胞培養(cell culture)の培地に加えて細胞の増殖を助ける添加物で、なかでもウシ胎児血清(FBS=fetal bovine serum)は研究用途で広く使われてきました。抗体医薬やワクチン、再生医療などの研究・開発の川上を支える基礎資材にあたります。
同社のブラジル事業はこれまで、一部の分子生物学向け材料や試薬をラテンアメリカ諸国に輸出するにとどまっていたとされ、今回の工場はそこに新しい生産の軸を加える位置づけと報じられています。立地に選ばれたバルエリは、サンパウロ都市圏の主要なビジネス集積地の一つで、物流インフラや研究機関・病院・ヘルスケア企業への近さが利点として挙げられています。
現地生産が意味するもの
血清をはじめとする細胞培養資材は、輸入に頼ると輸送のリードタイムや通関、コールドチェーン(低温輸送・保管)の維持がボトルネックになりやすい領域です。ブラジル国内に生産拠点を置くことは、ラテンアメリカ市場への供給を安定させ、地域の研究・バイオ関連の需要に応えるうえで意味を持つと考えられます。血清は生物由来の原材料であるため、実際の生産では原料のトレーサビリティ(来歴の追跡)や無菌性、ロット間のばらつき管理といった品質面の作り込みが重要になる分野でもあります。
今回の報道は建設中の段階を伝えるもので、稼働開始の時期や生産能力、投資規模といった詳細は明らかになっていません。続報で具体的な数値や製品ラインナップが示されるかが注目されます。