英国のセルエンジニアリング企業bit.bioが、iPSC(人工多能性幹細胞)由来の細胞を培養するための培地キットを新たに市場投入した。ヒト細胞研究への参入障壁を下げ、研究室間での再現性向上を狙った製品ラインナップとされる。
iPSC由来細胞の製造に培地が与える影響
iPSCは患者由来の体細胞を初期化して得られる多能性幹細胞であり、神経細胞・心筋細胞・免疫細胞など多様な細胞種への分化誘導が可能だ。再生医療や細胞治療への応用に加え、創薬スクリーニングのためのヒト細胞モデルとしても需要が急拡大している。
一方、iPSCの培養・分化誘導は非常に繊細であり、培地の組成が分化効率や細胞の品質に大きく影響する。研究室ごとに培地を独自に調製するケースが多く、組成や製造ロット間でのばらつきが再現性の低下を招きやすい。これは研究段階だけでなく、製造工程のスケールアップにも障害となる。
キット化による標準化と民主化
発売されたのは、同社のiPSC由来ニューロン(ioGlutamatergic Neurons)とミクログリア(ioMicroglia)向けの2種のキットで、培地の調製にかかる費用を約18分の1に抑えられるとDrug Target Reviewは伝えている(同社の主張で、比較の基準は示されていない)。「民主化(democratise)」という表現が使われているように、高度なセルバイオロジーの専門知識がなくても安定した品質のヒト細胞を扱えるようにすることが目的とみられる。
バイオ製造の観点では、培地の標準化はスケールアップや規制当局への品質証明を行ううえで前提条件となる。ただし今回のキットが対象とするのは研究用途のiPSC由来神経細胞とミクログリアで、細胞治療のGMP製造向けとは明示されていない。iPSC由来細胞の製造が治療・研究の両面で本格化するなかで、専用培地の整備は今後ますます重要性を増すだろう。
※ 本ページは公開情報(Drug Target Review報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。