Sartorius、BiosanaPharma、シンガポールのA*STAR(科学技術研究庁)の研究者らは、CHO細胞の灌流培養で収量を抑えているのは、アンモニアや乳酸ではなく、測定されていない細胞由来の老廃物だとするモデルを報告した。European Pharmaceutical Review(EPR)が8月上旬に伝えた。
この老廃物をためる方向に培地交換の日程を組んだところ、モデルの学習に使った培養のうち最良の実績に対して、体積生産性(培養液1 Lあたり1日に得られる量)が50%上がった。
アンモニア・乳酸ではなく未測定の副産物が増殖速度と対応
モデルは、機構モデルとデータ駆動型を組み合わせたハイブリッド型だ。解析では、アンモニアも乳酸も、観測された増殖速度とは相関しなかった(CHO培養のアンモニア、乳酸の代謝シフト)。効いていたのは、細胞が出す副産物をひとまとめにした未測定の変数である。
この老廃物をためると細胞周期が止まり、細胞が大きく育つ。大きな細胞は抗体をより多く作る。この知見から導いた日ごとの培地交換の計画で、50%の増加が得られた(灌流速度の決め方はCSPR)。
Cell Insightsに組み込み、実機の自動運転バイオリアクターで実証
モデルはSartoriusのデジタルツイン用ソフトウェア「Cell Insights」に組み込まれ、自動運転(self-driving)のバイオリアクターを動かした。原型は2024年9月にBiotechnology Progressへ載った論文で、2025年の学会ポスターで細胞周期の制御に拡張された。土台は2022年のFrontiers in Bioengineering and Biotechnologyの論文で、副産物を1つの変数に集約する考え方もここから来ている。EPRによれば、自律運転の実証はシミュレーションではなく実機で行われた。
モデルは200 mLで学習し、5 Lへ外挿した。最初の外挿は12.5日目以降にずれ、スケール間のフィルターの違いを補う篩係数(sieving coefficient)の調整が要った。
実務の確認ポイント数字を読む際の留意点
著者にはSartoriusの所属者が含まれ、モデルは同社のソフトウェア製品に入っている。50%の比較相手は学習に使った培養の最良の実績であり、他社のプロセスや一般的な灌流条件ではない。自社の細胞株と培地で同じ向きに動くかは、別に確かめる必要がある。
※ 本ページは公開情報(European Pharmaceutical Reviewの報道。モデルの原報は2024年9月のBiotechnology Progress、土台は2022年のFrontiers in Bioengineering and Biotechnology)をもとにしたProglenth編集部による整理です。数値は著者側の報告で、スケール間の補正の詳細は一次情報でご確認ください。