コスミックコーポレーションは2026年7月31日、研究用試薬「HER2 測定イムノクロマトキット」を発売した。同社の発表によれば、京都大学大学院医学研究科の研究グループとの共同開発による製品で、検体にHER2が含まれるかどうかを短時間で調べられる。
示されている特徴は、操作が簡便で検体をその場で測定できること、測定結果がおよそ10分で得られること、そして 「3+/2+/1+/0」の4段階で半定量的に評価できることである。基礎から応用まで幅広い研究用途を想定している。流通は東邦薬品が受託する。
なお本製品は研究用試薬(RUO)であり、疾病の診断・治療・予防といった医療目的には使用できず、保険請求の対象にもならないと明記されている。
イムノクロマト法という選択
HER2はがん研究で長く扱われてきた分子であり、その検出には免疫組織化学染色(IHC)やELISA、FISHといった手法が使われてきた。いずれも装置と手技を要し、結果が出るまでに時間がかかる。
イムノクロマト法は、妊娠検査薬や抗原検査キットでおなじみの、試験紙の上を検体が毛細管現象で移動していく方式だ。標識抗体と捕捉抗体で対象を挟み、ラインの濃さとして可視化する。装置がいらず、その場で、短時間で結果が出るという点が、他の手法にはない強みになる。
代わりに失うのは定量性だ。ELISAのような連続値は得られない。今回の製品が4段階の半定量にとどまるのはそのためで、これは弱点というより、この原理の設計上の帰結である。研究の場面でいえば、多数の検体をふるいにかけて、詳しく見るものを絞り込む用途に向く。絞り込んだ先で定量が要るなら、そこでELISAや質量分析に渡せばよい。
4段階という区切り
「3+/2+/1+/0」という表記は、HER2の評価で広く使われてきた区分に合わせたものである。研究者にとって馴染みのあるスケールで結果が返ることは、既存のデータとの突き合わせを容易にする。
ただし、原理の異なる手法どうしの段階が一致する保証はない。染色像を目で見て判定するIHCと、試験紙上のラインを読むイムノクロマトでは、測っている対象の状態も、判定を左右する要因も異なる。同じ「2+」でも中身が同じとは限らないという前提で使う必要がある。研究に組み込むなら、自分の検体系で既存法との対応づけを取っておくのが確実だ。
研究用試薬という位置づけ
RUOの表記は形式的な但し書きに見えるかもしれないが、実務上の意味は小さくない。診断薬として承認された製品は、性能が定められた基準で検証され、その結果に基づいて臨床判断ができる。研究用試薬にはその裏づけがなく、得られた値の解釈は使う側の責任になる。
裏を返せば、承認プロセスを経ない分だけ、新しい着想が早く現場に届く。大学の研究グループとの共同開発から製品化まで進んだ今回のような例は、研究用試薬の枠組みだからこそ成立している面がある。
※ 本ページは公開情報(PR TIMESでの発表)をもとにしたProglenth編集部による整理です。仕様・入手方法の詳細は一次情報および流通元をご確認ください。