CREATE Medicinesは2026年7月31日、Monash大学およびMonash Institute of Pharmaceutical Sciences(MIPS)との戦略的研究提携と独占ライセンス契約を発表した。CREATEはMonashの標的化LNP技術(独自のバインダーと脂質化学を含む)を利用でき、提携から生じる知的財産の全世界での独占ライセンスと、指定した標的に対するCAR製品の開発・商業化の権利を得る。
MIPSには研究資金のほか、マイルストーンとロイヤルティが支払われる。研究はAngus Johnston教授が主導する。
in vivo CAR-T療法とLNPデリバリーの課題
CAR-T細胞療法は、患者から採取したT細胞を体外でウイルスベクターを用いて遺伝子改変し、がん細胞を攻撃するよう設計して患者に戻す治療法として知られる。しかしこのアプローチは、細胞採取・培養・品質試験・再投与という複雑なプロセスを必要とし、製造コストが非常に高く、治療を受けられる患者数も限られる。
この限界を突破しようとする新たな方向性が「体内(in vivo)CAR-T」だ。あらかじめ製造した遺伝子デリバリービークルを患者に直接投与することで、体内のT細胞を改変しCAR-Tとして機能させる方法で、既製品として多くの患者に届けられる可能性がある。このアプローチでLNPは有力な候補技術の一つだが、既存のLNPは静脈内投与後に肝臓に大量に集積するという物性上の制約があり、免疫細胞への選択的なデリバリーが難しかった。
Monash技術が解く「肝臓問題」
今回の契約の対象について、Tech Timesは、MonashのAngus Johnston氏らが2025年にNature Nanotechnologyで報告した抗体捕捉システムだと伝えている。LNP表面に抗Fcナノボディ(TP1107)を載せ、化学的な結合なしに市販のIgG抗体を固定して向きをそろえる方式で、T細胞への標的化送達を狙う。論文は、非標的LNPの1,000倍以上、従来の抗体修飾法の8倍以上のタンパク質発現を報告している。ただしこの数値は論文の実験結果であり、今回の契約発表には含まれていない。治療に必要なmRNAや遺伝子編集ツールの量を減らせれば、安全性プロファイルの改善とコスト削減にも直結するためだ。
LNPを用いた非ウイルス遺伝子デリバリーは、mRNAワクチンの普及以降、医薬品製造の観点からも注目度が急上昇している。ウイルスベクターに比べてスケールアップが容易で、製造の標準化が進めやすい点も利点だ。今回のライセンス契約は、in vivo CAR-Tという次世代細胞治療の実現可能性をさらに押し上げるものとして、業界内外から注目されている。
※ 本ページは公開情報(Tech Times報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。