米Duke University School of Medicineの研究チームは、RNAを標的にするCRISPR(dCas13)で前立腺がんの免疫回避の仕組みの一つを解除し、マウスで免疫チェックポイント阻害療法に反応しやすい状態にした。成果はNature Biomedical Engineeringに掲載された論文で、2026年7月下旬にScienceDailyが紹介した。DNAを切る遺伝子編集ではなく、mRNAに結合して状態を戻す方法である。
前立腺がんは免疫細胞の浸潤が少ない「冷たい腫瘍」で、チェックポイント阻害薬が効きにくいがん種です。論文(責任著者はQianben Wang氏、筆頭著者はFurong Huang氏)は、その理由の一つを突き止めました。前立腺の腫瘍では、SPSB1遺伝子のmRNAの3'末端(3'UTR)が短くなり、SPSB1タンパク質が増えます。SPSB1はE3リガーゼ(分解の目印をタンパク質につける酵素)のアダプターで、MHCクラスI(がん細胞が抗原をT細胞に見せる分子)の分解を進めます。PD-L1には影響しません。
DNAを切らないdCas13
使われたのは、切断活性をなくしたCas13(dCas13)による3'UTRCESという仕組みです。mRNAに結合するだけで切らず、3'UTRが短くなった状態を元に戻します。脂質ナノ粒子(LNP)で腫瘍に届けると、MHCクラスIの発現が回復しました。同系マウスではCD8 T細胞の浸潤と殺傷活性が高まり、腫瘍がチェックポイント阻害療法に反応しやすくなっています。
マウスまでの結果
確認されているのは前臨床、つまりマウスの段階です。ヒトでの安全性や、LNPを全身に投与したときの届き方、効果がどれだけ続くかは、公開された範囲では分かりません。DNAを書き換えないため、ゲノム編集とは区別して読む必要があります。
※ 本ページは公開情報(ScienceDailyの記事、論文の要旨)をもとにしたProglenth編集部による整理です。論文は要旨の範囲で確認しており、細部は一次情報でご確認ください。