ScienceDaily が伝えた最新の研究成果によると、CRISPR遺伝子編集技術を使って前立腺がん細胞の免疫回避機構を無効化し、免疫療法への感受性を高めることが可能であることが示された。前立腺がんはこれまで免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法に対して一般的に応答が低いがん種とされてきており、今回の知見はその壁を乗り越えるための新たな手がかりを提供するものとして注目されている。
前立腺がんが免疫療法に応答しにくい理由
固形がんの中でも前立腺がんは「免疫学的に冷たい腫瘍(cold tumor)」として知られ、腫瘍微小環境(TME)への免疫細胞の浸潤が少なく、T細胞の活性も低い状態に置かれやすい。その背景には複数の免疫回避機構が存在する。腫瘍細胞がMHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスI分子の発現を低下させることでT細胞による認識を回避する経路、あるいはPD-L1などの免疫チェックポイントリガンドを発現してT細胞を疲弊させる経路などがその代表だ。免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/PD-L1抗体)は肺がんや黒色腫で顕著な成果を挙げているが、前立腺がんに対しては限定的な効果しか示されておらず、新たなアプローチが切望されてきた。
CRISPRで「冷たい腫瘍」を「熱く」する
今回の研究では、CRISPRによるゲノム編集を用いて前立腺がん細胞内の特定遺伝子をノックアウトすることで、免疫回避を担う分子的ブレーキを取り除くアプローチが採られた。その結果、T細胞による腫瘍細胞の認識・殺傷が増強されたことが確認された。この戦略は、がん細胞そのものを編集して免疫原性を高める「がんワクチン設計」や「免疫感作(immunosensitization)」と呼ばれる概念に近く、免疫療法との組み合わせで相乗効果が期待できる。
創薬研究の観点からは、今回の知見はCRISPRスクリーニング技術のがん免疫学への応用という文脈でも重要だ。ゲノムワイドCRISPRスクリーニングは、免疫回避に関わる遺伝子を網羅的に同定するうえで強力なツールとなっており、薬剤標的の発見を加速する。同定されたターゲット遺伝子は低分子阻害薬や抗体医薬の開発候補にもなり得る。前立腺がんに限らず、他の「冷たい腫瘍」への適用可能性も研究者の関心を集めており、CRISPR編集と免疫療法の組み合わせはがん治療の新しいパラダイムとして研究が加速している。
※ 本ページは公開情報(ScienceDaily報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。