固定型センサーでは見えなかった発酵槽内の「空間的不均一性」を可視化する手がかりが生まれつつある。GENは、ボストン大学とCapra Biosciencesの研究チームが進める、微生物由来の生体素子と電子回路を組み合わせた浮遊型ハイブリッドセンサーのネットワークについて、溶存酸素(DO)・温度・pH・溶存二酸化炭素のほか、槽内溶液の混合状態や液体移動時間まで計測できるようになるとの見通しを伝えた。BioMADEとNSFが支援する2026年開始のプロジェクトで、製造規模のバイオリアクターでの検証はこれからだ。
発酵プロセス計測における「点」の限界
バイオリアクターや発酵槽では、従来から電極式のDOセンサーやpHプローブが壁面や底部に固定されてきた。しかしタンク内の攪拌・通気状態によっては局所的な濃度勾配が生じ、固定点での計測値が槽全体を代表しない場合がある。特に大型の商業スケールバイオリアクターでは、この空間的不均一性が細胞の増殖や代謝に影響し、再現性の低下やバッチ間のばらつきにつながることが知られている。プロセス分析技術(PAT)の観点からも、複数点・リアルタイムのデータ取得は品質管理の高度化に不可欠と位置づけられている。
浮遊型センサーが拓く新しいプロセス監視
浮遊型センサーは槽内を自由に移動しながらデータを収集するため、固定型では捉えられない空間分布情報を得られる。センサーはヒヨコ豆ほどの大きさで、槽の外に出ることなく内部にとどまる。研究者のMiguel Jimenez氏は、細菌や酵母などの生きた細胞を組み込むことで計測できる項目が増え、バイオ製造に直接関係するパラメータを監視できるようになると説明している。混合時間や液体の流れを定量化できれば、スケールアップ時の攪拌条件最適化にも活用できる。将来的には、このようなセンサーネットワークから得られるデータをAI・機械学習と組み合わせることで、プロセスの異常検知や予測制御に繋げる可能性が開かれる。バイオプロセスのデジタル化が進む中、発酵プロセスの「空間的な見える化」は製造安定性の向上に向けた重要な技術的方向性の一つとなりそうだ。
※ 本ページは公開情報(Genetic Engineering and Biotechnology News報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。