三洋貿易は、グループのKOTAIバイオテクノロジーズが米10x Genomics社の全トランスクリプトーム空間解析装置「Atera」を導入すると発表した。創薬・医療研究領域での空間解析サービスをさらに強化するもので、国内の製薬企業・研究機関に向けた受託サービスの提供開始を準備している。
発表によれば、Atera の導入により、遺伝子発現解析・タンパク質解析・バイオインフォマティクスを組み合わせて空間解析サービスを拡張する。組織構造、個々の細胞ごとの遺伝子発現、タンパク質情報を多面的に解析できるようになり、創薬候補の探索、疾患メカニズムの解明、バイオマーカー研究といった領域で、より高度な研究支援が可能になるとしている。
「どこで起きているか」を測る
従来のシングルセル解析は、組織をばらばらにほぐしてから1細胞ずつ読む。細胞の種類とその中身は分かるが、その細胞が組織のどこに、何と隣り合っていたかという情報は、ほぐした時点で失われる。
空間解析(spatial biology)は、組織切片の形を保ったまま、位置情報つきで遺伝子発現やタンパク質を測る手法群を指す。腫瘍の内部で免疫細胞がどこまで入り込んでいるか、線維化がどの領域から進んでいるか——といった、位置が意味を持つ問いに答えられる。がん免疫や炎症性疾患の研究で急速に使われるようになったのは、そのためだ。
「全トランスクリプトーム」を冠する装置は、あらかじめ決めたパネルの遺伝子だけでなく、転写産物を広く捉えることを狙う。仮説を立ててから測るのではなく、まず広く測って後から絞り込む使い方ができる。
受託という形が持つ意味
空間解析は、装置を買えばすぐ回せる技術ではない。切片の作製条件がデータの質を大きく左右し、出てくるデータは1検体でも大きく、解析にはバイオインフォマティクスの体制が要る。装置・手技・解析の三つが揃って初めて結果になるため、自社で一式を抱えるには相応の投資と人が必要になる。
受託サービスは、この立ち上げ負担を外に出す選択肢だ。今回の発表が装置の導入と同時に「遺伝子発現解析・タンパク質解析・バイオインフォマティクスの組み合わせ」を掲げているのは、装置単体ではなく一連の流れとして提供する形を示している。
国内での提供が用意される点も実務的な意味を持つ。検体を国外に出す場合、輸送中の品質管理、契約、個人情報を含む試料の取り扱いといった論点がついて回る。国内で完結できれば、その分だけ手続きは軽くなる。
使う側で決めておくこと
サービスを利用する側には、依頼前に固めておくべき点がある。
- 検体の作り方:固定方法や保存状態が結果を左右する。既存の保存検体が使えるかは、事前に確認が要る。
- 問いの立て方:広く測れる手法ほど、何を見たいのかが曖昧だとデータに埋もれる。比較する群と、その群数を先に決めておく。
- データの受け渡し:解析済みの結果だけを受け取るのか、生データも含めて自社で再解析できる形にするのか。後から追加解析をしたくなる場面は多い。
※ 本ページは公開情報(三洋貿易の発表に関する報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。サービス内容・提供時期の詳細は一次情報および提供元をご確認ください。