二重特異性抗体や三重特異性抗体に代表される多重特異性分子は、がん免疫療法や自己免疫疾患を中心に開発が急増している。しかしその複雑な構造ゆえ、製造工程での課題も通常のモノクローナル抗体より格段に大きい。Bioprocess Onlineは、こうした分子の製造性を確保するには、設計の初期段階から製造を視野に入れた「デザイン・フォー・マニュファクチャリング(DfM)」という考え方が不可欠だと指摘する。
多重特異性抗体が製造に突き付ける課題
多重特異性抗体は、異なる抗原エピトープへの同時結合など通常の抗体では実現できない機能を持つ一方、製造上の難しさも際立つ。まず発現系での正しい鎖のペアリング(アセンブリ)が難しく、望まない副産物(ミスペアード分子)の生成が問題となる。精製工程でも、通常のProtein Aクロマトグラフィーだけでは不純物を除ききれず、複数のクロマトグラフィーステップの組み合わせが必要になることが多い。さらに凝集傾向が高い構造的特徴を持つものも多く、製剤化・保存安定性にも細心の注意が求められる。
設計と製造の対話が商業化を左右する
製造性を後から付け加えるのではなく、分子設計の段階から「どう作るか」を考える発想の転換が求められている。具体的には、鎖の正確なペアリングを誘導する電荷ペアリング変異や、ノブ・イントゥ・ホール技術などのエンジニアリングが設計時に組み込まれることで、精製スキームを大幅に簡素化できる場合がある。また細胞株スクリーニングの段階から製造性の指標を組み入れ、プロセス開発チームと分子設計チームの対話を早期に促す体制が商業化成功率を高めるという考え方が業界に広がりつつある。多重特異性分子のパイプラインが急拡大する中、DfMの概念がバイオプロセス設計の標準的な視点として定着しつつある。
※ 本ページは公開情報(Bioprocess Online報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。