米国のバイオテクノロジー企業Phoenix NestがNIH(米国立衛生研究所)の資金援助を獲得し、サンフィリッポ症候群を対象とした遺伝子治療の製造基盤整備に取り組むことが明らかになった。サンフィリッポ症候群はムコ多糖症III型とも呼ばれる希少な小児神経変性疾患で、治療選択肢が極めて限られている領域だ。
希少疾患遺伝子治療が直面する製造の壁
遺伝子治療の主要なベクターであるAAV(アデノ随伴ウイルス)の製造は、高度な精製技術と品質管理を要し、バッチあたりの製造コストが非常に高い。特にサンフィリッポ症候群のような患者数の少ない希少疾患では、商業規模での製造投資を民間資金だけで賄うことが難しく、製造ボトルネックが治療開発全体を遅らせる大きな要因となっている。一般にAAVベクター製造では、上流の産生工程(HEK293細胞やバキュロウイルス系を用いた一過性発現など)から、下流のアフィニティクロマトグラフィーや限外ろ過による精製、そして充填までの各工程が複雑に絡み合う。製造スケールや力価の均質性を確保するための工程開発には多大な時間と資源が必要とされる。
NIH支援で製造能力の確立を目指す
こうした背景から、NIHは公的支援によって希少疾患遺伝子治療の製造障壁を下げる取り組みを続けており、今回のPhoenix Nestへの支援もその流れに位置づけられる。希少疾患向けのAAV遺伝子治療は、患者数が少ないため市場規模が小さい一方、製造に必要なインフラとノウハウは大規模疾患向けと変わらない。公的資金の活用によって、民間投資だけでは整備が進みにくい製造基盤を先行して確立し、臨床・商業化への道筋を開くことが期待される。遺伝子治療製造の技術的・経済的課題に対する公民連携のアプローチとして、業界から注目されている事例だ。
※ 本ページは公開情報(AllSci報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。