計算創薬プラットフォームを提供するReceptor.AIと、独自のポリマクロサイクリックペプチド化学基盤を持つSetherが、難治療標的(difficult therapeutic targets)を対象とした閉鎖ループ型の創薬・最適化ワークフローの構築に向けた協業を開始すると発表した。GENが2026年8月3日に報じた。
「困難な標的」とは何か──創薬AIが挑む未開の領域
創薬研究において「困難な標的(difficult targets)」とは、従来の低分子化合物や抗体では結合・阻害が難しい標的タンパク質群を指す。タンパク質間相互作用(PPI)の界面のように平坦で広大な結合面を持つものや、構造が動的で明確なポケットがない標的などが代表例だ。こうした標的へのアプローチとして注目を集めているのが、ペプチドと低分子の中間的な性質を持つ「マクロサイクリックペプチド」や、より複雑に環状化した「ポリマクロサイクリックペプチド」だ。これらは一般的な線状ペプチドより構造的に安定で、膜透過性も高められる場合があり、新たな創薬モダリティとして研究が進んでいる。
一方、Receptor.AIのような計算プラットフォームは、分子の構造・機能予測や最適化を計算機上で高速に行うことで、実験回数を絞り込みながら候補化合物を効率よく探索することを可能にする。GENの報道によれば、今回の協業はReceptor.AIの計算基盤をSetherの独自化学ライブラリ・スクリーニングデータに適用することを中心に据えており、両社はそれぞれのバックグラウンドプラットフォーム技術を維持した上で協業を進める形をとる。
閉鎖ループ型ワークフローが創薬研究を変える
「閉鎖ループ(closed-loop)」型の創薬ワークフローとは、計算予測→実験検証→データフィードバック→次サイクルの計算予測、という一連のサイクルを自律的・反復的に回す設計思想を指す。各サイクルで得られた実験データをモデルの更新に使うため、繰り返すほど予測精度が上がり、探索効率が向上する。近年、ロボティクス・AIを組み合わせたセルフドライビングラボなどの概念とも近接しており、創薬プロセスの高速化・省力化への期待が高まっている。
難治療標的×ポリマクロサイクリックペプチド×計算AI、という三つの先端領域を組み合わせた今回の協業は、従来の創薬では手が届きにくかった疾患領域への展開可能性を秘める。双方の技術をどう統合し、どのような候補化合物を生み出すか、今後の成果が注目される。
※ 本ページは公開情報(GEN(Genetic Engineering and Biotechnology News)報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。