島津製作所は2026年7月2日、細胞培養の最適化を支援するソフトウェア「CellTune Ver.2」を世界同時発売した。既存バージョンから機能を強化・拡張するとともに、同ソフトを活用したカスタム培地の製造受託によるリカーリング事業を海外市場へと広げる方針も同時に発表した。バージョンアップにより利用形態をサブスクリプション型へ移行し、継続的な収益モデルの構築を図る点も特徴的だ。
培地設計ソフトウェアとは何か——なぜ培養の最適化が難しいのか
細胞培養における培地は、細胞の増殖・生存・目的物質産生を左右する最も重要なパラメーターの一つだ。一般に製薬や再生医療向けのバイオプロセスでは、培地組成はアミノ酸・ビタミン・糖類・微量元素など数十種に及ぶ成分から成り、それぞれの濃度や比率を最適化する作業は膨大な実験コストと時間を必要とする。従来は熟練した科学者の経験則や試行錯誤に頼る部分が大きく、データ駆動型の設計へ移行することがバイオプロセス全体の生産性向上において急務とされてきた。CellTuneのようなソフトウェアは、実験データを系統的に解析し、成分間の相互作用を統計・機械学習的に捉えることで、最適組成の探索を効率化する。
分析機器メーカーが培地ビジネスへ——島津の戦略的ポジション
島津製作所はHPLCや質量分析計などの分析装置メーカーとして、バイオ医薬品の品質管理・工程分析市場で長年の実績を持つ。今回のCellTune Ver.2の投入は、分析から培地設計・最適化という上流工程へと事業領域を広げる動きだ。さらにカスタム培地の製造受託を組み合わせたリカーリングモデルを海外に展開することで、ソフトウェアの販売にとどまらず、継続的な受託収益をソフトとセットで獲得しようとするビジネス設計が見える。抗体医薬やCAR-T細胞療法など、細胞培養を基盤とするモダリティの製造開発ニーズが世界的に拡大するなか、分析機器のノウハウを培地最適化へ応用する日本の大手精密機器メーカーの取り組みとして、海外バイオプロセス市場での存在感向上が期待される。
日本では少数の分析機器・計測メーカーがバイオプロセスの上流工程支援ツール市場へ参入を試みているが、培地組成最適化ソフトに製造受託(リカーリング)を組み合わせた商業モデルは差別化要因になり得る。国内外のCDMOや製薬企業が高度なプロセス管理と培地設計の内製化・効率化を求めるニーズと、本製品の方向性が一致している点が注目ポイントだ。
※ 本ページは公開情報(shimadzu.co.jp / 日経バイオテクONLINE報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。