バイオ医薬品の製造における下流工程の課題の一つが、宿主細胞タンパク質(HCP)をはじめとする宿主細胞由来不純物の除去だ。BioProcess Internationalはこのほど、糖質の一種であるトレハロースが清澄化デバイスを用いた工程でこれらの不純物を効率的に低減できることを示す事例を公開した。
宿主細胞由来不純物はなぜ問題か
CHO細胞などの動物細胞を使った組換えタンパク質製造では、目的タンパク質と同時に膨大な量の宿主細胞タンパク質(HCP)が産生される。HCPは最終製剤中に微量残留した場合でも、患者に免疫原性リスクをもたらす可能性があるため、規制当局は厳格な除去を求めている。一般的な精製プロセスはプロテインAアフィニティークロマト、イオン交換クロマト、疎水性相互作用クロマトなどを組み合わせてHCPを段階的に除去するが、工程数が増えるほどコストや収率損失が生じる。
そこで注目されているのが、清澄化ステップ(細胞除去後のハーベスト液処理)の段階でHCPをあらかじめ低減する手法だ。清澄化でのHCP低減率を高めることができれば、後続のクロマト工程の負荷を減らし、全体の精製コストを削減できる。
トレハロースが清澄化工程に与える効果
トレハロースは一般に、タンパク質や細胞の低温保護剤あるいは製剤安定化剤として広く使われている糖質だ。しかし今回BPIが紹介した事例では、清澄化デバイスとの組み合わせでHCP低減に有効であることが示されており、従来とは異なる文脈での応用として注目を集めている。
宿主細胞由来不純物の低減には、フロキュレーション(凝集沈殿)剤や深層フィルターの表面改質など様々なアプローチが開発されてきたが、一般試薬として入手しやすいトレハロースが清澄化工程で追加的な効果をもたらすとすれば、コスト面でも実装面でも優位性が生まれる可能性がある。製造現場での採用には最適濃度の検討やプロセスへの適合性評価が必要だが、実用的な戦略の一つとして広がりが期待される。
※ 本ページは公開情報(BioProcess International報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。