北京大学の伊成器(Chengqi Yi)氏と華東師範大学の李大力(Dali Li)氏らの研究グループは、ゲノム編集酵素の特異性を高める手法 ContactSeek を発表した。AlphaFold3(AF3)が予測する、残基どうしの「接触確率」を使う。論文「Precise DNA base editing using AlphaFold3-based contact modelling」は、2026年7月下旬にNatureがオンラインで公開した。アデニン塩基編集酵素(ABE)では、Cas9と脱アミノ化酵素TadA8eに1つずつ変異を入れた改変体が、既知の高精度型ABEを複数上回ったという。
手順は次のとおりです。まず、Cas9とTadAをつないだABEについて、ヒト腎臓由来の細胞でゲノム全体のオフターゲット部位を洗い出します。そのオフターゲットのDNA配列をAF3に入力します。Cas9・sgRNA・DNAの複合体と、デアミナーゼ・RNAの複合体のそれぞれで、標的配列とミスマッチを含むオフターゲット配列とで接触確率がどう変わるかを比べます。変化が共通して大きい領域を順位づけ、特異性を決める残基を絞り込みます。TadA8eの鍵になる残基も、同じ方法で見つかりました。
論文の要旨によれば、接触確率は、予測された立体構造そのものよりも、標的とオフターゲットの複合体の違いに敏感でした。
改変体の検証とCas12aへの展開
検証には、標的アンプリコンシーケンス、ゲノム全体のプロファイリング、R-loopアッセイ、RNAシーケンスが使われ、特異性が大きく高まったことが確認されました。最良の改変体は、北京大学の発表でABE8e-DDと呼ばれ、Cas9のK1020DとTadA8eのF156Dの組み合わせです。
手法はCas12aを使うシトシン塩基編集酵素にも広げられ、Cas12aのR284Eと、デアミナーゼAPOBEC3A(A3A)のH29Dを組み合わせた改変体が示されました。ContactSeekのコードとデータは公開されています。
製造と開発の側から見た位置づけ
塩基編集を治療に使う場合、意図しない編集がどれだけ入るかは評価の中心にあります(CRISPRのオフターゲット検出、塩基編集・プライム編集の届け方)。今回の報告は、その低減に使える残基を、AF3の予測から絞る手順を示しました。
ただし、検証されたのはCas9とTadAをつないだABEと、Cas12a系のシトシン塩基編集酵素で、ほかの編集酵素に通じるかは今回の範囲では分かりません。オフターゲット編集の減少幅と、標的での編集効率とのバランスも、要旨の範囲では確認できませんでした。
今回の貢献は、特異性を決める残基をAF3の接触確率から絞る手順を示した点にあります。減少幅や効率の数字は、論文の図表で確かめる必要があります。
※ 本ページは公開情報(Natureの論文要旨、北京大学の発表、報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。論文本体の図表は確認しておらず、数値は掲載していません。