装置
2026.07.11•Thermo Fisher Scientific

Thermo Fisher、質量分析計Orbitrapの新3機種をASMS 2026で発表──バイオ医薬向け「Orbitrap Excedion」は複雑な試料で検出できる化合物3〜5倍をうたう

装置

Photo: Mezidi Zineb / Unsplash

分析機器大手の Thermo Fisher Scientific が、高分解能の質量分析計 Orbitrap(オービトラップ)の新機種を3つ発表しました。中でもバイオ医薬品の開発向けの Orbitrap Excedion は、複雑な試料から検出できる化合物が 3〜5倍 に増える、と同社は説明しています。薬に混じるわずかな不純物や、体内で薬が変わってできる代謝物のように、量の少ない成分を見落としにくくする機能です。発表は米国質量分析学会の年会 ASMS 2026(サンディエゴ、2026年5月31日〜6月4日)に合わせたもので、企業リリースは6月1日に配信されました。

新機種は Orbitrap Tribrid Apex、Orbitrap Excedion、Orbitrap Exploris GC S の3つです。Orbitrap は、分子の重さ(質量)を精密に量る装置です。分子をイオンにして電場の中で周回させ、その振動の周波数から、質量(正確には質量と電荷の比)を割り出します。タンパク質や核酸から低分子の医薬品まで、試料に何がどれだけ含まれているかを調べるのに広く使われてきました。

主成分に埋もれる微量成分を拾う拡張ダイナミックレンジ

Excedion の目玉として同社が挙げるのが、拡張ダイナミックレンジ(enhanced dynamic range、eDR)です。ダイナミックレンジとは、1つの試料の中で、大量にある成分とごく微量の成分をどこまで同時に測り分けられるかという幅を指します。

たとえるなら、大勢が話す会議室で、隅の小さな声まで聞き取れるかどうかです。医薬品の試料では、主成分の信号が強すぎて、そばの微量成分が埋もれがちです。オリゴ核酸(核酸医薬の本体になる短いDNA・RNAの鎖)がよい例でしょう。目的の全長体が大半を占め、合成の途中で1塩基欠けた n-1 体のような不純物はわずかしか含まれません(オリゴ核酸の固相合成)。低分子の代謝物同定(MetID)でも、血液や肝細胞の成分にまぎれた少量の代謝物を拾えるかで結果が変わります。

同社によると、eDR を使うと複雑な試料から検出できる化合物が3〜5倍に増え、試料数の多い研究でも結果の再現性が高まります。用途には、薬物代謝の解析からオリゴ核酸やペプチドの分析までを挙げています。n-1 体のような不純物や、生体成分にまぎれた代謝物を拾いやすくなる点が、分析の現場にとっての利点と考えられます。

もう一つの特徴は、後から性能を足せる設計です。据え付けた装置を入れ替えず、その場で上位版の Orbitrap Excedion Pro へ上げられます(フィールドアップグレード)。費用と、進行中の業務への影響を抑えられる、と同社は説明しています。

同時に公開された解析ソフト BioPharma Finder 5.5

あわせて、解析ソフト BioPharma Finder の新版 5.5 も公開されました。トップダウン質量分析の複雑なデータを、より速く処理できるようにした、と同社は説明しています。トップダウンでは、タンパク質を酵素で切らずに丸ごと装置に入れ、装置の中で壊して配列や修飾を読みます。先に酵素で細かく切るペプチドマッピングとは逆の進め方です。抗体を切らずに分子量を確かめる使い方は、インタクト質量解析で詳しく扱っています。

同じ発表では、オリゴ核酸・mRNA の分析に向けた UHPLC(超高速液体クロマトグラフ)「Vanquish Amplify」も公表されています。

分析・購買・品質保証の担当者が見ておきたい点

3〜5倍という数字は同社の公表値です。検出できる化合物の数は、試料の種類や前処理、測定条件で大きく変わります。導入を考えるなら、どの装置・どの設定と比べた数字かをまず聞きましょう。そのうえで、自社の試料でデモ測定をしてもらうのが確実です。

購買や予算の担当者にとっては、段階的に投資できる点が利点です。まず標準機を入れ、仕事が増えたら上位版へ上げる、という組み方ができます。見積もりの段階で、Pro に上げたときに増える機能と費用、装置を止める日数まで聞いておくと、数年先の予算が立てやすくなります。

品質保証の立場では、もう一歩先まで見ておく必要があります。GMP の試験室で使う装置なら、据え付けたままのアップグレードでも変更管理の対象です。装置が正しく動くことを示す適格性評価を、どこまでやり直すかを前もって決めておきます。

検討するときは、公表値の倍率より、自社の試料で何が新しく見えるかと、上位版へ上げるときの手続きを確かめてください。

※ 本ページは2026年6月1日の企業リリースをもとにした紹介です。

プレスリリース
businesswire.com
プレスリリースを見る ↗

本記事は企業のプレスリリースをもとに、Proglenth編集部が独自に見出し・要約・解説を加えて整理したものです。正確性には努めていますが、最終的な仕様・条件は各社の公式情報・一次情報をご確認ください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

ProgLoopで続きをこのニュース、現場ではどう受け止める?ProgLoopでは、製品ニュースに研究者・技術者がコメントを添えて共有しています。ProgLoopで見る

この記事に関連する工程

関連製品
関連記事
Newsletter

装置・試薬の新製品ニュースを、メールで

こうした製品ニュースと、製造・分析・品質の解説記事を月数回お届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。

登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

← 製品ニュースの一覧へ