電荷・糖鎖

LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析)

LC-MSは、液体クロマトグラフィーで分離した成分をエレクトロスプレーイオン化(ESI)で気相イオンに変え、質量分析計で質量電荷比(m/z)を測定する手法です。タンパク質医薬では、インタクト質量、サブユニット質量、ペプチドマッピング、糖鎖プロファイル、翻訳後修飾(PTM)の同定、宿主細胞タンパク質(HCP)のMS定量などに使われ、近年はこれらを一つの試験法に統合するMulti-Attribute Method(MAM)の基盤にもなっています。

インタクト質量ペプチドマッピング糖鎖プロファイルMAM
分類
電荷・糖鎖
主な用途
インタクト質量 / ペプチドマッピング / 糖鎖プロファイル / MAM
関連モダリティ
抗体医薬 / 二重特異性抗体 / ADC / Fc融合・組換えタンパク質 / ワクチン / mRNA-LNP / 核酸(オリゴ)
代表メーカー
Thermo Fisher Scientific・Waters・SCIEX・Agilent ほか計5社
関連キーワード
糖鎖分析 / 電荷異性体 / ペプチドマッピング / 特性解析 / MAM / 宿主細胞タンパク質

用途・特徴

LC-MSは、LCで複雑な混合物を分離し、ESIでイオン化したうえで質量分析計に導入して、各成分の正確な質量を測定する手法です。タンパク質はESIで多価イオン(多数の電荷状態)として検出されるため、得られた多価スペクトルをデコンボリューションして、実際の分子量(中性質量)に変換します。これにより、抗体や組換えタンパク質のインタクト質量、軽鎖・重鎖・Fc/Fabなどのサブユニット質量を直接確認できます。

酵素消化(トリプシンなど)で得たペプチドをLC-MS/MSで測定するペプチドマッピングでは、配列の確認に加え、酸化、脱アミド、C末端Lys、N末端ピログルタミン酸といったPTM、糖鎖修飾の部位と相対量を評価できます。糖鎖はPNGase Fで遊離させた後に標識してプロファイルを取得することも、ペプチド上のグリコフォームとして観察することもあります。これらの属性を一つのペプチドマッピング法でまとめて測定・定量し、新規ピークの検出(new peak detection)まで含めて工程管理に使う運用がMAMです。

宿主細胞タンパク質(HCP)の評価では、ELISAを補完する形で、LC-MS/MSによる個々のHCP種の同定と定量(スパイクド標準ペプチドなどを用いた絶対・相対定量)が行われます。装置はQ-TOFやOrbitrapなどの高分解能質量分析計が主流で、用途によっては単四重極の小型システムも使われます。

Point
  • LCでの分離とESIによる多価イオン化、デコンボリューションで分子量を求める
  • インタクト質量・サブユニット質量で全体構造と分子量を確認する
  • ペプチドマッピングで配列確認とPTM(酸化・脱アミド・C末端Lys・N末端ピログルタミン酸)を評価する
  • 糖鎖プロファイル(遊離糖鎖/グリコフォーム)の同定と相対定量に使う
  • MAM(Multi-Attribute Method)で複数の品質特性を一法で測定・定量し新規ピークも検出する
  • 宿主細胞タンパク質(HCP)のMS定量でELISAを補完する
  • オリゴ核酸(アンチセンス・siRNA等)の質量確認・不純物解析にも使える
  • 高分解能・高質量精度のQ-TOF/Orbitrapが特性解析の中心となる

使用方法

基本的には、測定目的に合わせて試料を調製(脱糖・還元・酵素消化など)し、LCで分離、ESIでイオン化したうえでMSまたはMS/MSスペクトルを取得し、デコンボリューションや配列照合を経て同定・定量し、結果をレポートにまとめます。

1測定目的(インタクト/サブユニット/ペプチドマッピング/糖鎖/HCP)を決める
2試料を調製する(脱糖・還元・アルキル化・酵素消化・脱塩など)
3LC(逆相・HILIC・SEC等)で成分を分離する
4ESIで気相イオン(多価イオン)を生成する
5MSで質量電荷比(m/z)を測定する
6MS/MSでフラグメントを取得し配列・修飾部位を確認する
7多価スペクトルをデコンボリューションし分子量に変換する
8データベース照合・理論質量との比較で同定する
9ピーク面積などから修飾・不純物・HCPを定量する
10結果をレポートにまとめ申請・工程管理に利用する
実際の条件は、測定目的、質量分析計の種類(Q-TOF/Orbitrap/単四重極)、分解能・質量精度、LCモード、試料調製、解析ソフト・MAM対応、CSV/GMP対応、スループットによって変わります。試料調製で生じる人為的な修飾(脱アミドや酸化など)と本来の品質特性の区別には注意が必要です。

掲載情報の確認日:2026年7月(メーカー公開情報をもとに編集部が確認。最新・正確な仕様は各社公式をご確認ください)