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製品由来不純物と工程由来不純物の違いとは?抗体医薬の品質評価で見るべき不純物を整理する

製品由来不純物と工程由来不純物の違いとは?抗体医薬の品質評価で見るべき不純物を整理する

抗体医薬の品質評価では、「不純物」という言葉がよく使われます。

ただし、不純物といっても、すべてを同じものとして扱うわけではありません。抗体そのものが変化して生じる不純物もあれば、製造工程から持ち込まれる不純物もあります。

この違いを整理するうえで重要なのが、 製品由来不純物工程由来不純物 という考え方です。

製品由来不純物は、目的物質である抗体そのものに由来する不純物です。たとえば、凝集体、断片、分解物、修飾体、電荷バリアントなどが含まれます。

一方、工程由来不純物は、製造工程から持ち込まれる不純物です。代表例として、HCP(宿主細胞由来タンパク質)、残存DNA、Protein Aリーク、培地成分、精製工程由来成分などがあります。

この2つを分けて理解すると、純度、凝集体、電荷異性体、HCP、残存DNAなどの分析項目がつながって見えるようになります。

本記事では、抗体医薬における製品由来不純物と工程由来不純物の違い、代表例、分析法、工程での見方、DS / DPでの読み方を整理します。

製品由来不純物と工程由来不純物とは何か

抗体医薬の不純物は、大きく分けると、製品由来不純物と工程由来不純物があります。

分類由来代表例
製品由来不純物抗体そのものの変化凝集体、断片、分解物、修飾体、電荷バリアント
工程由来不純物製造工程からの持ち込みHCP、残存DNA、Protein Aリーク、培地成分

製品由来不純物は、目的抗体が製造・精製・保存・製剤化の過程で変化して生じるものです。抗体は高分子タンパク質であり、温度、pH、塩濃度、界面、撹拌、凍結融解、酸化、脱アミド化などの影響を受けます。

その結果、抗体分子が会合して凝集体になったり、一部が切断されて断片になったり、化学修飾によって電荷や構造が変化したりします。

一方、工程由来不純物は、抗体そのものではなく、製造に使った細胞、培地、精製材料、工程操作などに由来するものです。CHO細胞などの宿主細胞からはHCPやDNAが残る可能性があり、Protein A精製ではProtein Aリガンドのリークが評価対象になることがあります。

つまり、同じ「不純物」でも、 由来が違えば、評価する分析法も管理の考え方も変わります

なぜ不純物を2つに分けて考えるのか

不純物を製品由来と工程由来に分ける理由は、リスクの性質と分析法が異なるためです。

製品由来不純物は、抗体そのものの品質変化を反映します。凝集体や断片は、抗体の安定性や有効成分量に関係します。電荷バリアントや修飾体は、活性、安定性、薬物動態、バッチ間の一貫性に関係する場合があります。

工程由来不純物は、製造工程の除去能力や清浄性を反映します。HCPや残存DNAは、細胞培養や精製工程から持ち込まれる不純物です。これらは、工程開発や工程管理の中で、どこまで低減できているかを確認します。

観点製品由来不純物工程由来不純物
主な由来抗体そのものの変化細胞・培地・精製材料・工程
管理の意味抗体の品質・安定性を確認する工程の除去能力・管理状態を確認する
主な分析SEC-HPLC、CE-SDS、CEX-HPLC、icIEF、LC-MSELISA、qPCR、LC-MS、Protein A ELISA
関連する工程精製、濃縮、製剤化、保存培養、清澄化、精製、ポリッシング

この切り分けができると、分析項目を選びやすくなります。

たとえば、凝集体や断片を見たい場合はSEC-HPLCやCE-SDSが候補になります。酸性・塩基性バリアントを見たい場合はCEX-HPLCやicIEFが候補になります。

一方、HCPを見たい場合はELISAやLC-MS、残存DNAを見たい場合はqPCRやddPCRが必要になります。

POINT

製品由来不純物は「抗体そのものの変化」で安定性・活性に関わり、工程由来不純物は「製造からの持ち込み」で工程の除去能力に関わります。由来が違うと、選ぶ分析法も管理の意味も変わります。

製品由来不純物とは:抗体そのものの変化

製品由来不純物は、 抗体そのものが変化して生じる不純物 です。

抗体医薬は、同じ目的抗体を作っているように見えても、完全に均一な分子だけで構成されているわけではありません。製造や保存の過程で、抗体分子にはさまざまな変化が起こる可能性があります。

代表的な製品由来不純物には、次のようなものがあります。

種類主な分析法
高分子量体凝集体、二量体、多量体SEC-HPLC、SEC-MALS、DLS
低分子量体断片、分解物SEC-HPLC、CE-SDS
電荷バリアント酸性バリアント、塩基性バリアントCEX-HPLC、icIEF
修飾体脱アミド化、酸化、糖化、糖鎖変化LC-MS、ペプチドマッピング、糖鎖分析
ミスフォールド体立体構造が変化した分子種高次構造解析、機能試験など

たとえば、凝集体は抗体分子が複数会合した高分子量体です。断片は、抗体の一部が切断されて生じる低分子量体です。これらは、サイズの違いとしてSEC-HPLCで評価されることがあります。

電荷バリアントは、抗体分子の電荷状態が変化した分子種です。脱アミド化、C末端リジン、糖鎖、酸化、糖化などが関係することがあり、CEX-HPLCやicIEFで評価されます。

製品由来不純物は、抗体の安定性、活性、均一性、規格設定に関わるため、抗体医薬の品質評価では重要な対象になります。

工程由来不純物とは:製造工程から持ち込まれるもの

工程由来不純物は、抗体そのものではなく、 製造工程から持ち込まれる不純物 です。

抗体医薬では、CHO細胞などの宿主細胞を使って抗体を産生します。そのため、細胞培養液には、目的抗体以外にも、宿主細胞由来タンパク質、宿主細胞由来DNA、培地成分、細胞片などが含まれます。

精製工程では、これらの不純物を段階的に除去します。

代表的な工程由来不純物には、次のようなものがあります。

種類由来主な分析法
HCP宿主細胞由来タンパク質ELISA、LC-MS
残存DNA宿主細胞由来DNAqPCR、ddPCR
Protein AリークProtein A樹脂由来リガンドELISA
培地成分培地・添加成分LC、MS、専用分析法など
精製工程由来成分バッファ、界面活性剤、樹脂由来成分など成分ごとの分析法

工程由来不純物は、工程設計と除去能力の確認が重要です。

たとえば、HCPや残存DNAは、ハーベスト、清澄化、Protein A、ウイルス不活化、ポリッシング、UF / DFなどを通じて低減されます。最終的な原薬や製剤では、これらが管理範囲に入っていることを確認します。

工程由来不純物は、製品ごとの製造工程や細胞基材によってプロファイルが変わります。そのため、単に「低いかどうか」だけでなく、その工程で一貫して低減できているかが重要になります。

主な例:凝集体・断片・電荷異性体・HCP・残存DNA

抗体医薬の品質評価でよく出てくる不純物やバリアントを整理すると、次のようになります。

項目分類何を見るか主な分析法
凝集体製品由来不純物抗体分子が会合した高分子量体SEC-HPLC、SEC-MALS、DLS、MFI
断片製品由来不純物抗体が切断されて生じた低分子量体SEC-HPLC、CE-SDS
電荷異性体製品由来バリアント酸性・塩基性バリアントCEX-HPLC、icIEF
糖鎖バリアント製品由来バリアント糖鎖構造の違いHILIC-UPLC、LC-MS
HCP工程由来不純物宿主細胞由来タンパク質ELISA、LC-MS
残存DNA工程由来不純物宿主細胞由来DNAqPCR、ddPCR
Protein Aリーク工程由来不純物Protein A樹脂由来リガンドELISA

ここで重要なのは、分析対象によって測定方法が大きく変わることです。

凝集体や断片は、抗体のサイズや分子量の違いとして評価します。電荷異性体は、電荷状態やpIの違いとして評価します。HCPや残存DNAは、抗体とは別の工程由来成分として評価します。

つまり、不純物を正しく見るには、まず「何由来の不純物なのか」を整理する必要があります。

分析法は不純物の種類によって変わる

抗体医薬の不純物評価では、 ひとつの分析法ですべてを見ることはできません

SEC-HPLCは、モノマー、凝集体、断片などのサイズバリアントを見る方法です。CE-SDSは、変性後の分子量成分を見る方法です。CEX-HPLCやicIEFは、電荷異性体を見る方法です。ELISAは、HCPやProtein Aリークなどの特定成分を測る方法です。qPCRやddPCRは、宿主細胞由来DNAを測る方法です。

分析法主に見るもの対象の分類
SEC-HPLCモノマー、凝集体、断片製品由来不純物
CE-SDS完全長抗体、重鎖、軽鎖、断片製品由来不純物
CEX-HPLC酸性・塩基性バリアント製品由来バリアント
icIEFpIの違い、電荷プロファイル製品由来バリアント
LC-MS修飾、分解物、HCP同定製品由来・工程由来の両方
ELISAHCP、Protein Aリーク工程由来不純物
qPCR / ddPCR残存DNA工程由来不純物

このように、分析法は「測りたい不純物の性質」に合わせて選びます。サイズを見るのか、電荷を見るのか、タンパク質を測るのか、DNAを測るのか、特定成分を定量するのか、原因を同定するのか。この整理ができると、分析法の使い分けが理解しやすくなります。

不純物ごとの分析法マップ:サイズを見る(凝集体・断片=SEC-HPLC / CE-SDS)、電荷を見る(酸性・塩基性バリアント=CEX-HPLC / icIEF)、タンパク質不純物を見る(HCP・Protein Aリーク=ELISA / LC-MS)、DNAを見る(残存DNA=qPCR / ddPCR)

なお、LC-MSは製品由来の修飾同定にも、工程由来のHCP同定にも使われるため、表では「両方」に位置づけています。同じ装置でも、何を対象にするかで役割が変わります。

POINT

ひとつの分析で全部は見えません。サイズはSEC-HPLC / CE-SDS、電荷はCEX-HPLC / icIEF、HCPはELISA、DNAはqPCR。測りたい不純物の性質に合わせて分析法を選び、組み合わせて評価します。

工程での見方:どこで発生し、どこで減らすのか

不純物は、製造工程の中で発生し、変化し、低減されます。

製品由来不純物は、抗体そのものの変化によって生じます。たとえば、低pHウイルス不活化、濃縮、撹拌、界面接触、凍結融解、保存などで、凝集体や断片が増えることがあります。

工程由来不純物は、主に培養液や精製材料から持ち込まれ、精製工程を通じて低減されます。HCPや残存DNAは、ハーベスト、清澄化、Protein A、ポリッシング、UF / DFなどを通じて段階的に低減されます。

工程製品由来不純物との関係工程由来不純物との関係
細胞培養抗体品質・糖鎖・電荷に影響するHCP、DNA、培地成分が多い
ハーベスト / 清澄化抗体へのせん断・保持条件に注意細胞・細胞片を除去する
Protein A精製抗体回収、低pH溶出条件に注意多くのHCP、DNAを低減する
低pHウイルス不活化凝集体増加のリスクがあるDNA除去工程ではないが条件影響を見る
IEX / HIC / MMCバリアントや凝集体の低減に関係HCP、DNAなどの低減に関係
UF / DF濃縮ストレス、凝集リスクがあるバッファ交換後の残存量を確認する
製剤化 / 保存凝集、断片化、電荷変化を確認通常は新たに増えず規格確認が中心

工程開発では、どの工程で不純物が増えるのか、どの工程で低減されるのかを確認します。

この見方があると、 分析結果を単なる数値ではなく、工程の状態として読める ようになります。

製造工程における不純物の発生と低減の流れ:細胞培養→ハーベスト/清澄化→Protein A→低pHウイルス不活化→IEX/HIC/MMC→UF/DF→DS/DP。工程由来不純物は精製で段階的に低減し、製品由来不純物は工程ストレスや保存で増えることがある

DSとDPで不純物管理の意味は変わる

不純物管理は、 DSとDP でも意味が変わります。

DSはDrug Substance、つまり原薬です。DPはDrug Product、つまり製剤です。

DSでは、不純物管理は主に製造工程と精製工程の結果を確認する意味を持ちます。抗体がどこまで精製され、HCPや残存DNAがどこまで低減され、凝集体や電荷バリアントがどの程度管理されているかを見ます。

DPでは、不純物管理は製剤としての安定性や最終製品の規格適合性を確認する意味が強くなります。処方、容器、保存温度、輸送、凍結融解などによって、凝集体や断片、電荷変化が生じないかを確認します。

区分不純物管理の主な意味
DS精製工程で目的抗体をどこまで整え、不純物をどこまで低減できたか
DP製剤として保存・使用時に品質が維持され、規格に適合しているか

製品由来不純物は、DSでもDPでも重要です。DSでは精製工程の結果として読み、DPでは製剤安定性の結果として読みます。

工程由来不純物は、主にDSまでの工程で低減されます。DPでは、最終製品として管理値や規格に適合しているかを確認します。

同じ不純物でも、どの段階のサンプルを測っているのかによって意味が変わります。

DSとDPで不純物管理の意味は変わる:DS(原薬)は精製工程の結果を見て工程の除去能力と抗体の品質を確認、DP(製剤)は保存中の品質変化と最終製品としての規格適合性を確認する

まとめ

抗体医薬の不純物は、大きく製品由来不純物と工程由来不純物に分けて考えます。

製品由来不純物は、抗体そのものが変化して生じる不純物です。代表例として、凝集体、断片、分解物、電荷バリアント、修飾体などがあります。これらは、SEC-HPLC、CE-SDS、CEX-HPLC、icIEF、LC-MSなどで評価されます。

工程由来不純物は、製造工程から持ち込まれる不純物です。代表例として、HCP、残存DNA、Protein Aリーク、培地成分、精製工程由来成分などがあります。これらは、ELISA、qPCR、ddPCR、LC-MSなどで評価されます。

この2つを分けて理解すると、分析法の使い分けが見えやすくなります。サイズを見るならSEC-HPLCやCE-SDS、電荷を見るならCEX-HPLCやicIEF、HCPを見るならELISAやLC-MS、DNAを見るならqPCRやddPCR、というように対応します。

抗体医薬の品質評価では、ひとつの分析だけで全体を判断するのではなく、不純物の由来と性質に応じて、複数の分析法を組み合わせて評価します。

製品由来不純物と工程由来不純物の違いを理解することは、 抗体医薬の分析項目、製造工程、品質管理をつなげて読むための基礎 になります。

参考文献

  • ICH Q6B: Specifications — Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological / Biological Products.
  • EMA: ICH Q6B specifications — test procedures and acceptance criteria for biotechnological / biological products.
  • EMA: Guideline on development, production, characterisation and specification for monoclonal antibodies and related products.
  • USP: Monoclonal Antibody Analytical Guide.
  • Pilely K, et al. Monitoring process-related impurities in biologics: host cell proteins. 2021.
  • ICH Q5A(R2): Viral Safety Evaluation of Biotechnology Products Derived from Cell Lines of Human or Animal Origin.
この記事は、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法や品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。