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SEC-HPLC(サイズ排除クロマトグラフィー)

SEC-HPLCは、分子の流体力学的サイズの違いで分離するサイズ排除クロマトグラフィーをHPLC/UPLCで行う分析手法です。抗体などの凝集体(HMW)、モノマー、断片(LMW)を保持時間で分け、UV検出のピーク面積から各成分の比率を算出します。原薬・製剤の純度評価や安定性試験の代表的な指標として、QC試験や工程開発で広く使われています。

凝集体(HMW)評価純度・モノマー含量保持時間・分離度安定性試験

用途・特徴

SEC-HPLCは、孔径が制御された多孔質粒子を充填したカラムに移動相を流し、分子を大きさの順に分離する手法です。大きい分子ほど粒子内部の孔に入りにくく早く溶出し、小さい分子ほど遅れて溶出します。これにより、凝集体(HMW)、モノマー、断片(LMW)を一度の測定で分けて確認できます。

検出は主にUV(280nm付近)で行い、得られたクロマトグラムのピークを積分して各成分の面積%を求めます。等張に近い塩濃度の移動相を一定流速で送液する分離モードのため、勾配をかけるイオン交換などと比べて操作はシンプルで、ランごとの再現性を取りやすいのが特徴です。

近年はBEH系などの小粒子カラムをUPLC装置で使う高速・高分離度の構成が増えており、絶対分子量を求めたい場合はMALS検出器を連結したSEC-MALSへ拡張できます。手法・カラム・装置・データ解析ソフトを組み合わせた製品群として運用されます。

Point
  • 凝集体(HMW)・モノマー・断片(LMW)をサイズで分けて定量できる
  • ピーク面積からモノマー含量や凝集体%を算出する
  • 安定性試験で凝集・断片化の経時変化を追跡しやすい
  • 等濃度溶離(アイソクラティック)で操作・再現性を取りやすい
  • 保持時間・分離度・理論段数などでシステム適合性を確認する
  • UV検出が基本で、絶対分子量はMALS連結(SEC-MALS)で補える
  • 移動相の塩濃度やpHで非特異吸着・分離挙動が変わる
  • 希釈や移動相条件で可逆的な凝集解離が起こる場合がある

使用方法

基本的には、目的に合うSECカラムと移動相を選び、システムを平衡化・適合性確認したうえでサンプルを注入し、クロマトグラムからHMW/モノマー/LMWを積分して比率を算出します。

1カラム孔径・粒子径と移動相を選定する
2移動相でカラムを平衡化する
3標準品でシステム適合性を確認する
4サンプルを規定濃度・量で注入する
5一定流速でクロマトグラムを取得する
6保持時間でHMW/モノマー/LMWを帰属する
7各ピークを積分する
8面積%(モノマー含量・凝集体%)を算出する
9判定基準と照合し合否を判断する
10カラム洗浄・保管と記録を行う
実際の条件は、対象分子のサイズ、カラムの孔径・粒子径、移動相のpH・塩濃度、流速、注入量・濃度、検出波長、装置の流路材質(非特異吸着)によって変わります。可逆的な凝集解離や非特異吸着が疑われる場合は、移動相条件や注入量を振って確認します。

SEC-HPLCとAUC(沈降速度法)の違いは?

SEC-HPLCとAUC(分析超遠心・沈降速度法)は、いずれも凝集体やサイズ分布を評価できますが、原理・スループット・希釈の影響が異なります。

結論

SEC-HPLCは「カラムで素早くサイズ分離して日常的に凝集体・純度を測る方法」、AUCは「希釈や担体の影響を受けにくく、SECの結果を確認・補完する直交法」と整理すると使い分けやすくなります。

分離原理

溶液中の沈降速度(質量・形状)

カラム孔への入りやすさ(流体力学的サイズ)

固定相・担体

担体なし(溶液中で測定)

多孔質粒子カラムを使用

希釈・吸着の影響

受けにくい

カラム上の希釈・非特異吸着の影響を受けうる

スループット

1検体あたり時間がかかる

短時間・多検体に向く

主な出力

沈降係数分布(c(s))

クロマトグラム、面積%

主な用途

直交法での確認、メソッド検証

リリース試験、工程内管理、安定性試験

位置づけ

確認・補完の直交法

日常的なルーチン分析の中心

SEC-HPLCの選定軸

対象分子のサイズや求める分離度、運用条件に応じて、カラム・装置・移動相・ソフトを選びます。

カラム孔径対象分子のサイズに合う孔径か(抗体・凝集体まで分けられるか)
粒子径2〜3µm(UPLC向け)か5µm前後(HPLC向け)か。分離度と圧力のバランス
UPLC vs HPLC高分離度・短時間のUPLCか、汎用性・既存資産のHPLCか
移動相リン酸塩などの緩衝液・pH・塩濃度。非特異吸着を抑えられる組成か
装置の不活性化バイオイナート流路で金属への吸着・キャリーオーバーを抑えられるか
検出器UVが基本。絶対分子量はMALS、微量成分は蛍光を併用するか
分離度HMW/モノマー/LMWを基準どおりに分けられる分離度が得られるか
スループット1検体あたりの分析時間と検体数の見合い
ソフト・CSV対応Empower/OpenLab/Chromeleon等。監査証跡・データ完全性に対応できるか
カラム寿命注入回数・洗浄頻度に対する寿命とロット間差
標準品システム適合性・帰属に使う標準品(分子量マーカー等)の入手性
再現性保持時間・面積%のラン間・装置間のばらつき

測定する主な項目

サイズの違いに基づき、凝集体からモノマー、断片までを分けて評価します。

項目内容主な指標
HMW凝集体モノマーより大きい高分子量成分(多量体・凝集体)凝集体%(面積%)
二量体モノマー2分子からなる成分。HMWの一部として評価二量体%
モノマー目的分子の単量体。主ピークモノマー含量(%)
LMW断片モノマーより小さい分解物・断片断片%(面積%)
保持時間各ピークの溶出時間。帰属と再現性の確認に使う保持時間(分)
分離度隣接ピークの分かれ具合分離度(Rs)

主な注意点

結果の妥当性を保つため、吸着・希釈・適合性の確認が重要です。

注意点内容
非特異吸着カラム充填剤や流路へ分子が吸着すると回収率・面積%がずれる。移動相・流路材質で抑える
移動相の塩濃度塩濃度・pHが分離挙動と非特異相互作用に影響する。組成を一定に保つ
濃度依存性注入濃度・量により凝集体の見え方やピーク形状が変わる場合がある
可逆的な凝集解離希釈や移動相条件で凝集体が解離・形成し、実態と異なる結果になりうる
システム適合性保持時間・分離度・理論段数などを毎回確認し、基準を満たすことを担保する
カラム寿命・差使用回数やロットで分離が変化するため、定期的に適合性を確認する

使用される工程

SEC-HPLCは、純度・凝集体を確認する必要がある工程で広く使われます。

原薬リリース試験

原薬の純度・凝集体%・モノマー含量を規格と照合し、出荷可否の判断に使います。

主な用途
  • 凝集体%
  • モノマー含量
  • 規格判定

工程内管理(IPC)

培養・精製の各段階でサイズ分布を確認し、工程の状態を把握します。

主な用途
  • 工程内サイズ分布
  • 状態確認
  • 次工程判断

安定性試験

保存条件・期間に伴う凝集体や断片の経時変化を追跡し、有効期間の根拠にします。

主な用途
  • 経時変化
  • 凝集・断片化
  • 有効期間

精製条件検討(凝集体除去評価)

クロマトや限外ろ過などの条件を変えた際の凝集体除去効果を比較します。

主な用途
  • 凝集体除去
  • 条件比較
  • 回収率

製剤スクリーニング

緩衝液・添加剤・pHなどの製剤条件が凝集に与える影響を比較評価します。

主な用途
  • 製剤条件比較
  • 凝集抑制
  • 処方選定

プロセス開発

工程条件の検討段階で純度・凝集体を指標に最適化を進めます。

主な用途
  • 条件最適化
  • 純度指標
  • 工程設計

特性解析

分子の純度・サイズ分布を把握し、SEC-MALS等と組み合わせて構造情報を補完します。

主な用途
  • サイズ分布
  • 純度把握
  • SEC-MALS連携

メソッド開発・移管

カラム・移動相・装置の条件を最適化し、システム適合性を含めて手法を確立・移管します。

主な用途
  • 条件最適化
  • 適合性設定
  • 手法移管

使用されるモダリティー

SEC-HPLCは、凝集体やサイズ分布の評価が重要なモダリティーで特に使われます。

抗体医薬
関連度
原薬リリース安定性試験凝集体(HMW)評価
抗体の凝集体・モノマー・断片の定量に広く使われる基本手法。
二重特異性抗体
関連度
副生成物確認純度評価凝集体評価
ミスペアや凝集体が生じやすく、サイズ分布の確認が重要。
ADC
関連度
コンジュゲート後の凝集体評価純度確認
薬物結合による疎水性増加で凝集が起きやすく、凝集体%の管理に使う。
Fc融合・組換えタンパク質
関連度
凝集体・断片評価純度確認
凝集・断片化が品質に直結するため、サイズ分布の評価に使われる。
ワクチン
関連度中〜高
タンパク質抗原のサイズ確認凝集評価
サブユニットや組換え抗原の凝集・サイズ評価に使われる場合がある。
mRNA-LNP
関連度
脂質ナノ粒子の補助的サイズ評価
粒子サイズはDLS等が中心だが、成分のサイズ評価に補助的に使われることがある。

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