純度・凝集体

分析超遠心(AUC)

分析超遠心(AUC)は、溶液中の分子に遠心力をかけ、その沈降挙動を光学検出でリアルタイムに観測する物理分析法です。担体やゲルを使わずに溶液状態のまま分離するため、マトリックスや希釈の影響を受けにくく、SEC-HPLCの別の方法として凝集体・断片の確認に使われます。沈降速度法(SV)と沈降平衡法(SE)の2モードがあり、AAVの空殻/満殻比評価にも用途が広がっています。

凝集体定量SEC別の方法分子量・会合状態AAV空殻満殻
分類
純度・凝集体
主な用途
凝集体定量 / SEC別の方法 / 分子量・会合状態 / AAV空殻満殻
関連モダリティ
抗体医薬 / Fc融合・組換えタンパク質 / 二重特異性抗体 / ADC / AAV / ワクチン
代表メーカー
Beckman Coulter Life Sciences・NIH(Peter Schuck 研究室)・AUC Solutions / Demeler 研究室・Nanolytics ほか計5社
関連キーワード
沈降速度法 SV-AUC / 沈降平衡法 SE-AUC / c(s)分布解析 / 凝集体 HMW / SEC-HPLC 別の方法 / AAV 空殻 満殻

用途・特徴

AUCには沈降速度法(SV)と沈降平衡法(SE)の2つの基本モードがあります。SVは分子の沈降係数(S値)の分布を求めるもので、c(s)分布解析によりモノマー・二量体・高次会合体(HMW)や断片(LMW)を分離して相対量を求められます。SEは平衡到達後の濃度勾配から見かけの分子量や会合定数を求めるもので、可逆的な自己会合の評価に向きます。

最大の特徴は、ゲルろ過担体やカラムを介さず溶液中で直接分離する点です。SEC-HPLCで懸念される担体への非特異吸着、移動相による希釈、せん断などの影響を受けにくいため、SEC値が実態を反映しているかを確認する別の方法として位置づけられます。一方で測定時間・サンプル量・解析の専門性が必要で、ルーチン定量よりは特性解析・トラブルシュート・規格設定の場面で使われます。

検出はUV-Vis吸光(おおむね170〜800 nm)と干渉(屈折率)光学が一般的で、多波長検出に対応する機種もあります。蛍光検出を併用すれば微量成分の選択的観測も可能です。AAVなどのウイルスベクターでは、ゲノム封入の有無で密度が変わることを利用し、SV-AUCで空殻/満殻(および中間粒子)を分離・定量します。

Point
  • SV(沈降速度)でS値分布を求め、HMW(凝集体)・LMW(断片)・モノマーを分離定量する
  • c(s)分布解析(SEDFIT等)で連続的な沈降係数分布を高分解能で得る
  • SE(沈降平衡)で見かけ分子量・会合定数を求め、可逆的自己会合を評価する
  • 担体を介さない希釈・マトリックス非依存の分離で、SEC-HPLCの別の方法になる
  • UV吸光・干渉光学・多波長・蛍光など検出系を用途に応じて選べる
  • SV-AUCでAAVの空殻/満殻/中間粒子を分離し、満殻比(CQA)を評価できる
  • 標準物質に頼らず一次的(first-principle)に沈降挙動を観測できる
  • 測定時間・サンプル量・解析スキルを要し、ルーチンより特性解析向き

使用方法

ここでは抗体・組換えタンパク質の凝集体評価を想定したSV-AUC(沈降速度法)の基本的な流れを示します。具体的な回転数・温度・濃度・解析設定はサンプルとモードによって変わります。

1目的(凝集体定量/会合解析/空殻満殻)とモードを決める
2緩衝液・サンプル濃度・OD(吸光)レンジを調整する
3セル(センターピース)と窓材を組み、リファレンスを充填する
4ローターにセルを装填し、真空・温度を平衡化する
5規定回転数まで加速し、沈降境界を時系列で取得する
6吸光/干渉スキャンを連続記録する
7SEDFIT等でc(s)分布解析・ノイズ除去・フィットを行う
8S値・分子量・各成分の相対量を読み取る
9SEC-HPLC等の結果と突き合わせ直交性を確認する
10ロット比較・規格設定・報告書にまとめる
実際の条件は、対象分子のサイズ・濃度、緩衝液の密度・粘度、検出系、回転数、温度、セルのパス長によって変わります。低濃度域や弱い相互作用の評価では、検出感度と解析モデルの選択が結果を左右します。

掲載情報の確認日:2026年7月(メーカー公開情報をもとに編集部が確認。最新・正確な仕様は各社公式をご確認ください)