精製(ダウンストリーム)
プロテインAやイオン交換などの溶出画分で、A280からタンパク質濃度を確認します。
- 溶出画分のA280確認
- プール濃度の把握
- クロマトUV検出の補完
UV-Vis分光光度計は、紫外〜可視域(おおむね190〜1100nm)の吸光度から濃度や純度を測る装置です。バイオプロセスでは、280nmの吸光と吸光係数(ε)を用いたタンパク質濃度、A260/A280比による核酸混入の確認、260nmからの核酸濃度、A320での散乱・濁り補正などに使われます。
タンパク質の濃度はLambert-Beerの法則(A = ε・c・l)に基づき、280nm付近の吸光度から算出します。εはTrp・Tyr・システイン由来の吸収に支配されるため、配列から計算した分子吸光係数、または実測したA1%(1 mg/mLあたりの吸光度)を用います。εが不明な場合のBCA等の比色法と違い、添加試薬なしで短時間に測れるのが利点です。
核酸はA260で定量し、A260/A280比でタンパク質との相互混入を、A260/A230比で塩・有機物の混入を確認します。タンパク質側ではA260/A280比から核酸混入の目安も得られます。光散乱を含む濁ったサンプルでは、吸収を持たないはずのA320(またはA340)のベースラインを差し引いてA280を補正し、見かけの濃度の過大評価を避けます。
形式はマイクロボリューム型とキュベット型に大別されます。マイクロボリューム型は1〜2µLを短い光路(0.05〜1mm相当)で測り、高濃度の原薬を希釈せず測定できます。キュベット型は10mmなど一定光路で希薄サンプルや動力学(kinetics)・スペクトル測定に向き、温度制御を組み合わせられます。
基本は、ブランクで装置をゼロ点合わせし、サンプルを所定の光路で測定して、設定した吸光係数や換算係数から濃度を算出します。
同じUV-Vis測定でも、サンプル量・光路長・濃度域の前提が異なります。原薬の濃度域と希釈の許容度で選びます。
希釈せず高濃度原薬を少量で測るならマイクロボリューム型、希薄サンプルやkinetics・温度依存・スペクトル測定が要るならキュベット型。両対応のハイブリッド機もあります。
1〜2µL程度
数百µL〜数mL(マイクロキュベットで数十µL)
0.05〜1mm相当(自動可変のものあり)
10mmなど固定(5mm・2mm等も選択可)
高濃度原薬を希釈せず測定
希薄サンプル向き(高濃度は要希釈)
原則不可〜限定的
ペルチェ等で温度制御・動力学測定が可能
可能だが光路短く高濃度寄り
フルスペクトル・微小吸収の検出に有利
滴下のみで速い(多検体対応機あり)
充填・洗浄に手間(フローセルで効率化可)
測定面の拭き取りが重要
キュベット洗浄・使い捨てで管理
精製画分・原薬の濃度確認、核酸定量
規格試験、kinetics、濁度・凝集の評価
波長・指標ごとに、何を読み取るためのものかを整理します。
| 指標・波長 | 読み取る内容 | 実務での使いどころ |
|---|---|---|
| A280 | 芳香族アミノ酸(Trp・Tyr)等の吸収によるタンパク質濃度 | 精製画分・原薬の濃度確認、ロット間比較 |
| 吸光係数 ε/A1% | A280を濃度に換算する係数(配列計算値または実測) | モノクローナル抗体は概ねA1%≈1.4前後を用いることが多い |
| A260 | 核酸(dsDNA・RNA・オリゴ)の吸収 | プラスミド・mRNA・オリゴの濃度定量 |
| A260/A280比 | 核酸とタンパク質の相互混入の指標 | DNA約1.8・RNA約2.0が目安、低いとタンパク質混入 |
| A260/A230比 | 塩・有機物・カオトロープ等の混入の指標 | 2.0前後が目安、低いと残留試薬の混入 |
| A320/A340 | 本来吸収を持たない波長のベースライン(散乱・濁り) | 濁りや凝集の補正、見かけ濃度の過大評価防止 |
| フルスペクトル | 190〜1100nm等の連続スペクトル | 未知ピーク・色素標識(A4xx等)・凝集傾向の確認 |
導入・更新時に確認しておきたい項目です。
定量がぶれる主因と、現場での切り分けの目安です。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 濃度が高めに出る | サンプルの濁り・凝集による光散乱 | A320/A340で補正、必要なら遠心・ろ過 |
| A260/A280比が低い | タンパク質の混入、または核酸が少ない | 精製状況を確認、対象に応じて期待値と照合 |
| A260/A230比が低い | 塩・有機物・カオトロープ等の残留 | 脱塩・透析・再精製で残留試薬を低減 |
| 値の再現性が悪い(µV型) | 滴下量不足・気泡・測定面の汚れ | 測定面を拭き取り、滴下を再現性よく行う |
| 吸光度が頭打ち | 高濃度で直線性範囲を超過 | 希釈するか、より短い光路で測定 |
| ブランクがずれる | マトリックス不一致・キュベット汚れ | 同一緩衝液でブランク、キュベットを洗浄 |
UV-Vis分光光度計は、濃度を素早く把握したい工程や、純度の一次確認が要る場面で広く使われます。
プロテインAやイオン交換などの溶出画分で、A280からタンパク質濃度を確認します。
DS/中間体の濃度をε/A1Pで算出し、規格や工程内管理値と照合します。
高濃度処方での濃度確認や、A320補正による凝集・濁りの傾向把握に使われます。
A260で核酸濃度を、A260/A280・A260/A230比で純度の一次確認を行います。
含量試験の濃度測定や、ICH Q6Bに沿った規格項目の評価に使われます。
培地成分や上清の濃度確認、細胞密度関連の光学測定の補助に使われます。
色素標識やADCで、タンパク質と標識の吸収比から標識率の目安を求めます。
試薬・原材料の同一性や濃度の一次確認に、スペクトルや吸光度を用います。
UV-Vis分光光度計は、タンパク質・核酸の濃度を扱うほぼ全モダリティーで使われます。対象が吸収を持つ波長と純度指標に応じて使い分けます。