分析機器の Agilent Technologies が、HPLCカラムのシリーズ「Altura」に、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムと、ポリマー製の逆相カラム「PLRP-S」を加えました。2026年7月8日の発表です。どちらも、試料がカラムの金属部分にくっつくのを抑える「Ultra Inert」という技術を使っています。試料がくっつくと、凝集体(分子どうしがくっついた塊)の量が実際より少なく出るなど、品質試験の数字がずれることがあります。対象は、抗体やGLP-1ペプチド、オリゴ核酸、mRNA、ADC(抗体薬物複合体)といったバイオ医薬の分析です。用途には、凝集体の評価や分子量の確認、サイズ分布、ADCの薬物抗体比(DAR)の測定が挙げられています。
金属に吸着しやすい分子のためのカラム
HPLCのカラムは、多くがステンレスの筒に粒子を詰めた作りです。リン酸基を持つオリゴ核酸や、酸性の部分が多いペプチド・タンパク質は、この金属の表面にくっつきやすい性質があります。焦げつきやすい食材を鍋で煮ると、一部が底に残って器に届かないのと似ていて、ピークが尾を引いたり(テーリング)、入れた量より小さく出たりします。Ultra Inert はこの金属との相互作用を抑える技術で、今回はそれを2種類のカラムに広げました。
Altura SEC は、同社の既存の AdvanceBio SEC カラムを土台にしています。分子を大きさの順に分け、凝集体の量や分子量、サイズ分布を調べるためのカラムです。メーカーは、GLP-1ペプチドの凝集体分析で、同じく「インナート(不活性)」をうたう他社カラムに比べて最大2倍の感度が出たとしています。微量の不純物を見つけやすくなる、という説明です。
Altura PLRP-S は、質量分析計をつないで使う LC-MS 向けの逆相カラムです。PLRP-S は、シリカではなくポリスチレン系の樹脂の粒子を詰めた充填剤です。もとは Polymer Laboratories が開発し、いまは Agilent が扱う定番の銘柄です。シリカの表面には試料を引きつける部分(シラノール基)が残りますが、樹脂にはそれがもともと無く、高いpHや高温にも強いため、オリゴ核酸や大きなタンパク質の分析で使われてきました。今回は、タンパク質系の医薬の分子量の確認に向けています。
従来のステンレスカラムで吸着が気になる分析では、下準備で対処するのが一般的です。装置を酸で洗って、金属の表面を試料と反応しにくい状態に整えるパッシベーションや、本番の前に試料を何回か流して吸着する場所を先に埋めておく方法です。最近は、カラムや流路の金属を処理したインナート製品が各社から出ていて、Altura もその一つです。カラムの側で吸着を抑えられれば、こうした手間に頼る部分を減らせます。
凝集体の測定で起きがちな見落とし
SECで凝集体を測るとき、塊になった分子は、1分子のままのもの(モノマー)より流路やカラムにくっつきやすい傾向があります。その分だけ、凝集体の割合が実際より低く出ます。凝集体は免疫反応(免疫原性)につながるおそれがあり、多くの製品で出荷試験や安定性試験の項目に入っています。低く出た数字は、品質を実際より良く見せてしまう。
比較の題材に選ばれたGLP-1ペプチドは、肥満症や糖尿病の治療薬として需要が伸び、多くの企業が開発と製造に加わっています。インスリンやGLP-1の品質分析でも、凝集と微量不純物の管理は欠かせません。6月には Thermo Fisher も、オリゴ核酸やmRNA向けに試料の通り道を不活性(インナート)にしたUHPLCと専用カラムを発表しました。バイオ医薬の分析で「試料をくっつけない」ことが、各社の競争軸になっている様子がうかがえます。
カラムを替える前に見ておきたいこと
吸着が起きているかは、手元のデータでも見当がつきます。同じ試料を続けて注入したとき最初の数回だけピーク面積が小さい、酸性の成分のピークだけが尾を引く、といった傾向は吸着を疑う手がかりです。
試験法がすでに決まっている製品でカラムの銘柄を替えるなら、社内の変更管理を通します。承認書に記載された試験法であれば、当局への届出や申請が要るかどうかも確かめます。シリカ系のC18からポリマー系のPLRP-Sに替えるように、充填剤の種類そのものが変わる場合は特にそうです。そのうえで旧カラムと同じ試料を並べて流し、結果が揃うか、システム適合性の基準を満たすかを自社の試料で見ます。
「最大2倍」は、メーカーが選んだ条件での値です。分子や移動相が変われば、差の出方も変わります。評価を始める前に、その比較がどの分子と移動相で取られたものかをメーカーに聞いておくと、自社の条件との違いが見えてきます。
※ 本ページは2026年7月8日の発表をもとにした紹介です。性能値はメーカーの公表値です。