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TFFシステム(限外ろ過・濃縮/バッファ交換)

TFF(タンジェンシャルフローろ過/クロスフロー)システムは、膜面に対して平行に液を循環させながら、限外ろ過(UF)で目的タンパク質を濃縮し、ダイアフィルトレーション(DF)でバッファを交換する装置です。膜に対して平行な流れがゲル分極層の蓄積を抑え、目詰まりを避けながら水・塩・低分子だけを透過液側へ抜きます。下流精製の中間体調整や原薬の最終濃縮・処方バッファ置換で広く使われます。

UF濃縮DFバッファ交換下流精製原薬最終調整

用途・特徴

TFFシステムは、MWCO(公称分画分子量)を選んだ膜を介して、目的タンパク質を保持しつつ水・塩・低分子を透過させます。UFモードでは保持液(リテンテート)を循環させて体積を減らし濃縮し、DFモードでは置換バッファを補給しながら同体積で運転して塩や添加剤を入れ替えます。DFの進み具合はダイアボリューム(DV=処理した置換バッファ量/保持液量)で管理し、低分子の除去率を見積もります。

性能を決めるのはTMP(膜間差圧)とクロスフロー流速(フィードフラックス)のバランスです。TMPを上げるほど透過フラックスは増えますが、ある点を超えると膜面にゲル分極(濃度分極)層が形成され、フラックスがTMPに依存しなくなる圧力非依存領域に入ります。実運用ではフラックス対TMP曲線を取り、ゲル分極で頭打ちになる手前のTMPで運転して目詰まりと製品ロスを抑えます。

膜形態はカセット(平膜・スクリーンチャンネル)と中空糸(ホローファイバー)に大別され、近年は前洗浄・保管液処理を省けるシングルユース(プレサニタイズ済み)TFFも普及しています。再使用型カセットではCIP(NaOH洗浄)と完全性試験(エアリーク/拡散流)で性能を確認しながら複数回使用します。

Point
  • 膜面に平行な流れでゲル分極を抑える限外ろ過・バッファ交換装置
  • UFで濃縮、DFでバッファ交換(処方バッファ置換・脱塩)を行う
  • MWCOは目的物分子量のおおむね1/3〜1/6を目安に選定する
  • TMPとクロスフロー流速のバランスでフラックスと製品ロスが決まる
  • DFの進行はダイアボリューム(DV)で管理する
  • カセット(平膜)・中空糸・シングルユースから形態を選ぶ
  • 膜面積はバッチ量・許容運転時間・フラックスから設計する
  • 再使用ではCIP(NaOH)と完全性試験で性能を維持・確認する

使用方法

基本的には、清澄化済みまたは精製中間体のプール液をフィードタンクに入れ、ポンプで膜モジュールへ循環させながらUF濃縮とDFバッファ交換を行います。

1目的物分子量からMWCOと膜素材を選ぶ
2バッチ量・運転時間から膜面積を決める
3膜・配管をフラッシュし保管液を除く
4完全性試験(エアリーク)で膜を確認する
5平衡化バッファでシステムを立ち上げる
6フィード液を投入しクロスフローを設定する
7TMPを設定しUFモードで濃縮する
8目標体積で停止しDF(バッファ交換)へ移行する
9規定ダイアボリュームまでDFを継続する
10製品回収・リンス後、CIPと完全性試験を行う
実際の運転条件は、目的物の濃度・粘度・せん断感受性、フィードの不純物量、目標濃度とバッファ条件、膜形態、スケール、GMP要件によって変わります。フラックスやTMPの上限、最大濃度(粘度・浸透圧上昇)は予備試験で確認します。

TFF(クロスフロー)と デッドエンドろ過の違いは?

TFF(クロスフロー)とデッドエンドろ過は、どちらも膜で固液や分子を分けますが、液の流れ方と目詰まりの挙動が大きく異なります。

結論

濁質や粒子を取り除くのはデッドエンドろ過(清澄化・無菌ろ過)の役割で、溶けているタンパク質を濃縮したりバッファを入れ替えたりするのがTFFの役割です。濃縮・脱塩・処方バッファ置換が必要ならTFFを使い、その前段の清澄化や仕上げの無菌ろ過はデッドエンドろ過で行う、と工程内で役割分担するのが基本構成です。

流れ方

膜に対して垂直に全量を押し通す

膜面に平行に循環させ一部を透過させる

膜面の挙動

捕捉物が膜上に堆積し続ける

平行流が堆積を掃き、ゲル分極を抑える

主な目的

清澄化・無菌ろ過・粒子除去

濃縮(UF)とバッファ交換(DF)

対象

粒子・微生物・濁質

溶存タンパク質と低分子の分離

運転時間

詰まるまでの単回処理が中心

長時間の循環運転(数時間規模)

再使用

使い捨てが基本

CIPで再使用、またはシングルユース

代表部材

カプセル・メンブレンフィルター

UFカセット・中空糸モジュール

管理指標

差圧・処理量(L/m²)

TMP・クロスフロー流速・フラックス・DV

UF(限外ろ過)とDF(ダイアフィルトレーション)の違い

項目UF(限外ろ過)DF(ダイアフィルトレーション)
目的目的物を濃縮し体積を減らすバッファ・塩・低分子を入れ替える
運転透過液を抜き保持液を減らす置換バッファを補給し同体積で運転
管理指標濃縮係数(VCF)、目標体積ダイアボリューム(DV)、除去率
透過するもの水・塩・低分子(目的物は保持)塩・添加剤・低分子(目的物は保持)
典型場面中間体の容積削減、原薬の最終濃縮処方バッファ置換、脱塩、緩衝液交換
注意点高濃度での粘度・浸透圧・ゲル分極DV不足による交換不足、希釈ロス
順序DFの前に一次濃縮する場合が多いUF後にDF、必要なら最終UFで仕上げ

主なTFF構成(カセット/中空糸/シングルユース)

構成内容向く用途・特徴
平膜カセット(スクリーン)膜と流路スクリーンを積層した形式。物質移動が高く面積効率がよいタンパク質UF/DF全般、高フラックスを狙う用途
平膜カセット(オープンチャンネル)スクリーンを持たず流路が開いた形式。詰まりにくい高粘度液、粒子を含む液、せん断に配慮する場合
中空糸(ホローファイバー)細い管状膜を束ねた形式。低せん断・スケール幅が広い細胞・ウイルス含む液、せん断感受性製品、灌流
シングルユースTFFプレサニタイズ済みで前処理・保管液除去を省けるGMP、洗浄バリデーション削減、交差汚染回避
再使用型カセットCIP(NaOH)と完全性試験で複数回使用するコスト重視、確立した大規模UF/DF工程
シングルパスTFF(SPTFF)循環せず一回通過で濃縮するインライン形式連続生産、せん断・滞留低減、工程内容積削減

TFFの主な運転パラメータ

パラメータ内容効果・注意点
MWCO(公称分画分子量)膜が保持する分子量の目安目的物の1/3〜1/6が目安。緩いと製品ロス、きついとフラックス低下
TMP(膜間差圧)膜の供給側と透過側の平均差圧上げるとフラックス増。過大はゲル分極・目詰まりを招く
クロスフロー流速膜面に沿う循環流速(LMHや流量で管理)高いほど分極を抑制。せん断・発熱・ポンプ負荷とのバランス
透過フラックス(LMH)単位膜面積あたりの透過速度運転時間・面積設計の基礎。ゲル分極で頭打ちになる
濃縮係数(VCF)初期体積/最終体積高濃度ほど粘度・浸透圧・分極が増す。上限を予備試験で確認
ダイアボリューム(DV)処理した置換バッファ量/保持液量DV増で除去率向上。一般に5〜7 DVで大半の低分子を除去
膜面積バッチ量・運転時間・フラックスから算出面積過小は長時間運転・分極悪化、過大はホールドアップ増
ホールドアップ容積システムに残る最小循環量高濃縮・低容量バッチで回収率に影響する

選定ポイント

目的UF濃縮か、DFバッファ交換か、両方か、最終処方か
目的物分子量MWCO選定の基準(保持率と透過のバランス)
膜素材再生セルロース系(低吸着)かPES系か。製品吸着・耐薬品性を確認
膜形態平膜カセット、中空糸、シングルユース、SPTFFのいずれか
バッチ量・濃度初期体積、目標濃度、最終粘度・浸透圧の見込み
膜面積許容運転時間とフラックスから必要面積を算出する
TMP・流速範囲システムとモジュールの耐圧・流量・せん断条件
せん断感受性凝集・断片化リスク。低せん断ポンプや中空糸の要否
DF条件置換バッファ、目標DV、除去対象(塩・界面活性剤等)
回収率ホールドアップ容積、リンス回収、製品吸着ロス
洗浄・再使用CIP(NaOHレジメン)、完全性試験、再使用回数
シングルユース対応バッグ・チューブ・無菌コネクター・センサーとの接続
スケール展開スケールダウン/アップの線形性、流路長・チャンネル一致
GMP・供給21 CFR Part 11対応、CoA、E&L、リードタイム、セカンドソース

使用される工程

TFFは、下流精製の各所と原薬の最終調整で、濃縮・脱塩・バッファ交換が必要な工程に組み込まれます。

Protein A前の前濃縮

清澄化液を濃縮しロード時間や設備負荷を下げる。

主な用途
  • UF濃縮

クロマト工程間のバッファ調整

溶出プールの塩濃度・pHを次工程の負荷条件に合わせる。

主な用途
  • DFバッファ交換

ポリッシュ後の脱塩

AEX/CEX/HIC後のプールから塩や添加剤を除去する。

主な用途
  • 脱塩

ウイルスろ過前の容積削減

ウイルスフィルター処理量を下げるため事前に濃縮する。

主な用途
  • 前濃縮

原薬の最終濃縮(UF1)

目標タンパク質濃度まで濃縮する。

主な用途
  • 最終UF濃縮

処方バッファ置換(DF)

原薬・製剤のバッファへ置換し、必要に応じ最終UFで微調整する。

主な用途
  • 処方バッファ置換

ワクチン・ウイルス液の濃縮

中空糸で抗原やウイルス粒子を濃縮・精製する。

主な用途
  • 抗原・粒子濃縮

AAV/LVの濃縮・バッファ交換

せん断に配慮し中空糸でベクターを濃縮・脱塩する。

主な用途
  • ベクター濃縮

mRNA/LNPの精製

in vitro転写後やLNP工程で濃縮・バッファ交換する。

主な用途
  • 核酸・LNP精製

連続生産のインライン濃縮(SPTFF)

工程間で循環せず一回通過の濃縮を組み込む。

主な用途
  • インライン濃縮

灌流・ATF連携

中空糸を用いた細胞保持・培養液濃縮と組み合わせる。

主な用途
  • 細胞保持・灌流

使用されるモダリティー

TFFは、濃縮とバッファ交換が必要な多くのモダリティーで、下流精製と原薬調整の中核に使われます。

抗体医薬
関連度
平膜カセットUF/DF原薬最終濃縮・処方
Protein A前濃縮、工程間バッファ交換、原薬の最終UF/DFで標準的に使われる。
Fc融合・組換えタンパク質
関連度
UF濃縮脱塩・バッファ交換
クロマト前後の濃縮・脱塩や最終処方バッファ置換に使われる。
二重特異性抗体
関連度中〜高
中間体濃縮DFバッファ交換
抗体医薬と同様に下流の濃縮・バッファ調整に使われる。
ADC
関連度中〜高
抗体中間体UF/DFコンジュゲ前後調整
抗体部分の濃縮・バッファ交換や反応前後の調整に使われる。
AAV
関連度
中空糸濃縮バッファ交換
せん断に配慮した中空糸でベクターを濃縮・脱塩する用途で使われる。
mRNA-LNP
関連度
mRNA濃縮LNPバッファ交換
in vitro転写後の濃縮やLNP工程の濃縮・バッファ交換に使われる。
ワクチン
関連度中〜高
抗原濃縮ウイルス液濃縮
抗原やウイルス粒子の濃縮・精製・バッファ交換に使われる。
微生物発酵
関連度
組換えタンパク質UF/DF脱塩
封入体由来や分泌タンパク質の濃縮・脱塩・バッファ交換に使われる。

メーカー製品

TFFシステム本体(ラボ〜プロセス)8
CytivaÄKTA flux濃縮・ダイアフィルトレーション、細胞ハーベスト・清澄化に対応する半自動クロスフロー(TFF)システム。研究・スクリーニング向けのfluxsとプロセス開発・スケールアップ向けのflux6がある。公式URL CytivaUniFlux清澄化・濃縮・ダイアフィルトレーションをパイロット〜製造スケールで行う全自動TFFシステム。UNICORNで運転・データ取得し、21 CFR Part 11対応の規制環境で使われる。公式URL CytivaÄKTA readyfluxシングルユース流路に対応した自動TFFシステム。洗浄バリデーションを抑えつつ濃縮・バッファ交換を行う用途で使われる。公式URL SartoriusSartoflow Smartスケールアップ/スケールダウン検討やプロセス開発向けの小型ベンチトップTFFシステム。自動リテンテートバルブとDFポンプで保持圧・TMPを安定制御する。公式URL SartoriusSartoflow Advanced / TFF Systemsプロセス開発から製造まで対応するTFFシステム群。Sartoconカセットと組み合わせてUF/DFを自動運転する。公式URL Merck / MilliporeSigmaCogent µScale TFF SystemPellicon 3カセットを最大3枚(264cm²)使うマイクロスケールの半自動ベンチTFFシステム。低ホールドアップでスケーリング検討と少量UF/DFに使われる。公式URL Merck / MilliporeSigmaCogent / Multi-use Ultrafiltration SystemsPellicon系カセットを用いたマルチユースのUF/DFシステム群。パイロット〜製造スケールの濃縮・バッファ交換に使われる。公式URL RepligenKrosFlo TFF Systems中空糸・平膜カセット両対応のターンキーTFFシステム。ラボ(5mL〜)からパイロット、cGMP製造までUF/DFをスケール展開できる。公式URL

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