高濃度のUF/DF:TFFカセット・中空糸の選定とシングルパスTFF(SPTFF)
抗体医薬プロセス解説

高濃度のUF/DF:TFFカセット・中空糸の選定とシングルパスTFF(SPTFF)

皮下投与(SC=皮下注射)向けの抗体原薬を、150〜250 mg/mLという高濃度まで濃くする——言葉にすると「ただ水を抜くだけ」の操作です。ところが現場でやってみると、最後の数十mg/mLでフラックス(膜を透過していく流れの量)が粘り、運転時間が膨らみ、終点のpHや添加剤の濃度までいつの間にかずれてくる。なぜ、ただ濃縮するだけの工程が、これほど手強くなるのでしょうか。

なぜ最後の数十mg/mLでこんなに時間を食うのか

まず素朴な疑問から入りましょう。濃縮は抜いた水の量に比例して素直に進む——そう思うのに、なぜ180→230 mg/mLの「あと一押し」だけが、序盤と不釣り合いなほど長くなるのでしょうか。

カギは膜の表面で起きていることです。タンジェンシャルフロー(膜に沿って液を流すろ過方式)では、溶媒が膜を抜けるとき、保持された抗体は膜の壁際へと運ばれます。液本体へ拡散で戻る速さより、壁へ押し寄せる速さの方が速いと、膜のすぐ手前に抗体が濃く積もった層ができる。これが 濃度分極 です。膜の手前に、抗体でできた“壁”がじわじわとせり上がっていくイメージで掴んでください。

この壁が、フラックスの主役です。バルク(液本体)の濃度が壁の限界濃度に近づくほど、押し戻す力と押し寄せる力が拮抗し、フラックスは急降下していく。最後はもう、膜にかける圧力(膜の両側の圧力差。現場ではTMPと呼びます)をいくら上げても流れがほとんど増えない、“壁律速”の領域に張りつきます。

しかも厄介なことに、この壁を掃き流す力(物質移動のしやすさ)は、抗体が液中をどれだけ速く動けるか=拡散のしやすさに比例します。高濃度では溶液が混み合って粘るので、抗体は動きにくくなる。だから壁の層は厚くなり、クロスフロー(膜に沿った流れ)で掃いても剥がれにくくなる。Binabajiらの実験・モデル研究(PMID 26918655)は、まさにこの「フラックスの落ち込み」と「ある形式・条件で到達できる上限の濃度」を定量的に扱った中核の文献です。

ということは——スループットが最も欲しい局面(目標の直前)こそ、物理が最も激しく抵抗してくる局面なのです。そして到達できる上限の濃度(以下「到達上限濃度」と呼びます)は、運転を頑張れば自由に伸ばせる数字ではなく、選んだモジュールの形状で頭打ちになります。だから「どの膜・どの形式を選ぶか」が、そもそも届く濃度そのものを左右する。これが、選定の話に入る前の出発点です。

粘度が引き起こす“見えない逆流”——背面ろ過

ここが、高濃度UF/DFで一番直感に反するところかもしれません。ろ過は「供給側から透過側へ」一方通行で進む——普通はそう思いますよね。ところが高濃度では、膜の出口付近で透過した液が保持側へ 逆流する ことがある。これを背面ろ過(バックフィルトレーション)といいます。なぜ、そんな逆走が起きるのでしょうか。

発端は粘度です。抗体の粘度は、濃度が上がるとほぼ指数的に跳ね上がります。分子どうしが静電的な力や疎水的なパッチで触り合いはじめるためで、150 mg/mLを超えると10〜50 cP(粘度の単位。水が約1 cP)、250 mg/mL近傍では100 cPを超えることもある(PMID 26918655)。水あめのような液です。これを狭い流路に押し込むと、流路の入口から出口に向かって圧力がどんどん削られていく。流れる量が同じでも、粘度が10倍になれば、流路に沿って失われる圧力も桁違いに大きくなる、という関係です。

ここで膜にかける圧力(膜の両側の圧力差)の意味を思い出してください。これは「その場所の供給側の圧力 − 透過側の圧力」で決まります。流路に沿って供給側の圧力が大きく落ちていくと、この圧力差は場所によってバラバラになる。入口では強く正、出口付近ではゼロ近く、ときには符号が逆転する。逆転した場所では、透過側に出たはずの液が保持側へ戻る——これが背面ろ過の正体です。

つまり何が起きるか。せっかくの膜面積の一部が、正味のろ過に寄与しないどころか、足を引っ張る。Binabaji/Zydneyの仕事(PMID 26918655)が「大きな粘性の圧力損失による背面ろ過」を明示的にモデルへ織り込んでいるのは、これが到達上限濃度を決める一次要因だからです。

しかも逃げ場がありません。壁(分極)を抑えたければクロスフローを上げたい。でもポンプを速めれば、流路に沿って失われる圧力も、膜にかかる圧力差も増し、ファウリング(目詰まり)・圧力上限・せん断へと近づいていく。粘度という一本の効き目が、流路の圧力損失・圧力差の均一性・クロスフロー・せん断のすべてを同時に縛っている。一つを良くすると別が悪くなる——濃度が上がるほど、心地よい運転窓は狭まっていきます。だからこそ「流路の幾何」と「形式」の選定が、ここで効いてくるわけです。

POINT

高濃度UF/DFの難しさは、突き詰めれば「膜際の壁(濃度分極)」と「粘度由来の圧力の偏り(背面ろ過)」の二つに集約されます。どちらも濃度が上がるほど非線形に悪化し、到達できる上限濃度はモジュール形状で頭打ちになります(PMID 26918655)。だから運転の上手さより、膜・装置の選定が効きます。

形式の分かれ道:中空糸 vs スクリーン入りカセット

では、具体的に形式を選びましょう。平らな膜を重ねたカセットと、細い管を束ねた中空糸(ホローファイバー)。この二つは、いま見た「圧力損失と背面ろ過」の出方が根本的に違います。

スクリーン入りカセットは、供給流路にメッシュ(スクリーン)を挟みます。スクリーンは流れをわざと乱して膜面のせん断を高め、壁(分極)を崩すのに効く。掃き流す力を稼げるので、同じクロスフローでもフラックスが出やすい。半面、スクリーンは流れの抵抗そのものでもあるので、高粘度では流路に沿って失われる圧力がかさみやすい。つまり背面ろ過の影響を受けやすい側です。

中空糸は管の内側が素通し(オープンルーメン)で、スクリーンがない分だけ流路に沿った圧力損失が素直で、せん断も穏やか。せん断に弱い分子には優しい。一方で、壁を乱流で崩す“仕掛け”がないため、同じ条件でのフラックスはスクリーン入りに劣りがちです。

ここでBinabaji/Zydney(PMID 26918655)の知見が効いてきます。両形式を比べると、到達できる上限濃度も、背面ろ過の出方も、形式とバッファ条件で変わる。「中空糸ならいつも勝つ」「カセットならいつも勝つ」という単純な話ではなく、目標濃度・粘度・せん断の許容度の組み合わせで、最適な形式が入れ替わる。だからモデルで当たりをつけてから実液で確認する——これがこの論文の実務的な含意です。

スクリーンの開き具合も選定軸です。粘度や目標濃度が高いほど、流れの抵抗が低い“開いた”スクリーンが有利になりやすい。たとえばSartoriusは、Sartocon/Sartocubeのスクリーン体系のうち、より開いたE-screenカセット(流れを乱す仕掛けが少ない、抵抗の低い流路)を「20%超のタンパク質濃度・3 cP超の粘度条件まで」用いると説明しています(メーカー主張)。狙いは高粘度での圧力損失を抑えることです。逆に、低い供給流量でも掃き流す力を稼げるQ-Screen(乱流を促すスクリーン入り流路)のように、抗体(mAb=モノクローナル抗体)の濃縮に最適化したスクリーンも展開されています(メーカー主張)。

スクリーン入りカセット中空糸(管内素通し)
流路スクリーンで乱流を促す管の内側が素通し(穏やかな流れ)
掃き流す力・フラックス高くなりやすいやや低くなりやすい
流路に沿う圧力損失(高粘度)かさみやすい比較的素直
背面ろ過の影響受けやすい受けにくい側
せん断大きめ穏やか
選定の勘所高フラックス重視・粘度は中庸せん断に弱い分子・高粘度で圧力損失を抑えたい

膜材質とMWCO:回収率は“吸着”で決まる

形式の次は、膜そのもの。材質と分画分子量(ふるい分けの境目になる分子サイズ=MWCO)です。ここは派手さこそないものの、回収率=お金に直結します。

材質の主役は二つ。PES(ポリエーテルサルフォン=膜の素材の一種)系と、再生セルロース/安定化セルロース系(Hydrosartなど)です。違いの本質はタンパク質の 吸着。高価な原薬が膜に吸われると、そのまま収率のロスになります。安定化セルロース膜のHydrosartについて、Sartoriusは「タンパク質の吸着が極めて低く、ほぼ目詰まりせず、洗浄性に優れ、苛性ソーダ(NaOH)への耐性も高いため、高い収率と長い製品寿命を与える」と説明しています(メーカー主張)。低吸着・高洗浄性・苛性耐性がセットで効く、というのが安定化セルロース系を選ぶ理由づけです。

ふるい分けの境目(MWCO)は、約150 kDaの抗体なら一般に30 kDaが定番です。目的の抗体は確実に膜の手前に留めつつ、小分子は素通りさせる——その落としどころです。高濃度向けに最適化したカセットも出ていて、たとえばSartoriusのSartocon Q Hydrosart 30 kDa mAbカセットは「より高い最終濃度と、30%高いフラックスを両立して抗体処理を加速する」と謳っています(メーカー主張)。30 kDaという定番の境目に、抗体濃縮向けのQ-Screenを組み合わせた構成です。

回収率の話をもう一歩。高濃度では扱う液量が小さいので、配管・ポンプ・カセットに残る“取り残し”(ホールドアップ容量)の相対比率が効いてきます。だから低ホールドアップ設計が選定軸に入る。SartoriusはSartoflow Advancedを「約200 mLという極めて小さいループ容量で、小バッチを過度なロスなく濃縮できる」と説明します(メーカー主張)。膜の低吸着と、装置の低ホールドアップ——この二つが揃って、はじめて高濃度の回収率が守れます。

膜面のせん断・界面には、もう一つ落とし穴があります。気液の界面や膜の表面でのストレスは、凝集の起点になり得る。Whitakerら(PMID 35940242)は、界面の物性を測って、大スケールUF/DFでの抗体凝集を事前に予測する「開発可能性(developability)評価」を提案しています。どの分子が高濃度UF/DFで凝集しやすいかを、上流で見抜くという発想です。膜・形式の選定とあわせて押さえておきたい視点で、凝集評価そのものの方法論は別記事に譲ります。

シングルユースか、反復使用か

膜は使い切るのか、洗って繰り返すのか。これは衛生とコストだけの話に見えて、実は高濃度の物理ともつながっています。

反復使用なら、運転のたびにCIP(定置洗浄=装置を分解せず洗う操作)と完全性試験が要ります。低吸着の膜でも、運転後には濃い抗体が残るので、NaOHなどでの洗浄と、透水量がちゃんと戻るかの確認が運用の柱になる。一方シングルユース(使い捨て)は、洗浄バリデーションと交差汚染の管理負荷を下げ、段取り時間を縮められます。

実例として、RepligenのTangenX SC TFF Deviceは「ホルダー不要・トルク締め不要の自己完結型・シングルユースTFFデバイス」で、ガンマ線滅菌済み・0.2 M NaOHでプレサニタイズ済みの状態で届き、「段取り時間を80%削減する」プラグアンドプレイだと説明しています(メーカー主張)。面積あたりの取り残し容量は0.33 L(0.5 m²)〜4.41 L(10 m²)(メーカー主張)。同社の使い捨て平膜カセットTangenX SIUSは「TFF向けに初めて専用設計されたシングルユースカセット」と位置づけられ、10 Lの5 mg/mL IgGを10倍に濃縮して50 mg/mLにした実証が示されています(メーカー主張)。

選定の勘所はこうです。多品種・短サイクルで交差汚染を嫌う臨床用途では、シングルユースが効く。大量・反復生産で膜寿命を償却できるなら、反復使用にコスト優位が出る。そして高濃度では、膜が高吸着だと運転後の洗浄が重くなるので、反復使用ほど低吸着・高洗浄性の材質(前節の安定化セルロース系の主張)が効いてくる——材質の選定と、使用回数の選定は、別々ではなく連動しています。

SPTFF:濃縮を“1パス”で終わらせる

ここまでは「タンクに戻して何度も循環させる」従来のTFF(リサイクルモード)を前提にしてきました。発想を変えてみましょう。もし循環をやめて、膜を一回通すだけで目標濃度に届けられたら?——それがシングルパスTFF(SPTFF)、いわゆるインライン濃縮です。

普通のTFFは、保持液をタンクへ戻して何周もさせます。だから大きな循環ループと、そこに溜まる取り残しが要る。SPTFFは膜を直列・並列に段組みして、フィードが 一度通過するだけ で狙いの濃度に達するように設計します。循環ループが消えるので、システムの取り残しも縮む。高力価や、工程をつなぐ連続生産との相性が良いのは、この「ループがない」性質ゆえです。

どう実装するか。Merck(Millipore)のPellicon Single-Pass TFFは、既存のPelliconホルダーに標準のPellicon 2/Pellicon 3カセットを入れ、専用のダイバータープレート(流れを直列につなぎ替える板)で直列の流路をつくる方式です。「1パスで目標濃度に到達し、循環ループをなくしてシステムの取り残しを下げる」とされ、スケールアップ用に大型のダイバータープレートも用意されます。さらに「高粘度(高濃度)のフィードに対応する特別な内部チャンネル設計をもつカセットもある」と説明しています(いずれもメーカー主張)。前節までの「高粘度=圧力損失が膨らむ」問題に、流路設計で正面から対処している点に注目してください。

ホルダーレスで一体化したモジュール型もあります。Pall(現Cytiva)のCadence Inline Concentrator(ILC)は、あらかじめ組み立てられたSPTFFモジュールで「ホルダー不要・運転後の流量制御の計装も不要」。保持側のマニフォールドに固定の抵抗器(流れを絞るレストリクター)を内蔵し、加圧したフィードをつなげば動く設計です(メーカー主張)。1モジュールあたりの濃縮倍率(入口に対し何倍に濃くなるか=VCF)は2〜4倍以上、Cadence SPTFFとしては2〜20倍以上で、「特許の流通濃縮で160 g/L超のタンパク質・抗体濃度を実現する」と謳います(メーカー主張)。

SPTFFは高濃度の万能薬ではありません。1パスで濃くするほど、モジュールの末端が最も高粘度・最も圧力損失の大きい場所になる。だから段組みと流路設計が肝になります。だからこそ「高粘度対応の内部設計」や「内蔵レストリクター」といった工夫が、製品ごとの差として表に出てくるわけです。Repligenの場合、TangenX SC自体がシングルパス対応で、インライン濃縮はKrosFlo TFFシステム上でProConnexの使い捨て流路を使って走らせる構成だと説明しています(メーカー主張)。

形態循環ループ取り残し主な狙い高粘度対応の工夫(メーカー主張)
従来TFF(リサイクル)あり大きい任意倍率の濃縮・バッファ交換スクリーン/ふるい分けの境目の選定で対応
SPTFF カセット型(Pellicon SPTFF)なし小さい1パスのインライン濃縮高粘度向けの内部チャンネル設計
SPTFF モジュール型(Cadence ILC)なし小さいホルダーレスの工程内濃縮内蔵レストリクター・段組み

DFの罠:Donnanと体積排除で“ちゃんと作ったバッファ”がずれる

最後に、選定とは別軸だけれど、高濃度では必ず効いてくる落とし穴を一つ。DF(ダイアフィルトレーション=バッファ交換)の終点が、なぜか狙いどおりにならない問題です。

普通、DFは「目標のバッファをたくさん流せば、保持液もその組成に収束する」と考えますよね。ところが高濃度では、そうならない。理由は二つあります。

一つは 体積排除。150〜250 mg/mLでは、タンパク質自身が大きな体積を占めます。すると小分子(添加剤や緩衝成分)が実際に使える“水の体積”は、見かけの保持液量よりずっと小さい。添加剤は縮んだ水の相に押し込められて、実効的に濃くなる。「透過液の組成=液本体の組成」を前提にした標準のバッファ交換の計算が、目標を外してしまうのです。

もう一つが Donnan効果(ギブス・ドナン効果)。pHに応じて正味の電荷をもった抗体は、膜越しに電気的な中性を保とうとして、対になるイオンを保持側と透過側で違う比率に振り分けます。膜を挟んだ綱引きのようなもので、その結果、緩衝成分や水素イオンの濃度が両側でずれ、最終プールのpHや塩濃度が、流したDFバッファと食い違ってしまう。どちらの効果も、タンパク質の濃度と電荷の密度が高いほど大きくなる——つまり SCの目標濃度でこそ最大化する のが厄介なところです。

対処は「DFバッファのpHと添加剤の濃度を、あらかじめ意図的にずらしておく」こと。ただし、そのずらし量は分子ごと・濃度ごとに違い、事前に読むのが難しい。Abelら(PMID 29339134)は、小スケールでタンパク質の電荷を測り、Donnanと体積排除の関係に当てはめて、本スケールでのpH・添加剤のずれを予測する方法を示しました。過濃縮や、添加剤・pHの行き過ぎ(オーバーシュート)に直接効く実務的なアプローチです。さらに近年は、Holsteinら(PMID 32687221)がSC向け高濃度原薬製造のレビューの中でこのDonnan挙動を整理し、Chenら(PMID 39385541)は、分子の特徴量から機械学習(勾配ブースティング木)でDonnan・体積排除の効果を予測する、説明可能なモデルを報告しています。

要は——最終プールの組成は、流したDFバッファだけで決まるのではなく、膜越しの熱力学的な分配(Donnan)と、動く排除体積 で決まる。だから素朴なバッファ交換の設計はpH・添加剤の規格を外し、必要なずらし量は分子ごと・濃度ごとにモデル化するか、実液で校正するしかありません。膜・形式の選定で“濃くできる”ようにしたら、次はその濃度域で“狙いの組成に着地させる”——この二段が揃って、はじめて高濃度UF/DFは完成します。

高濃度UF/DF 選定の早見表

選定軸主な選択肢効いてくる物理選定の勘所
膜材質PES系/安定化セルロース系(Hydrosart等)吸着・回収率・洗浄性低吸着・高洗浄性・苛性耐性を重視(メーカー主張)
ふるい分けの境目(MWCO)約150 kDa抗体なら30 kDaが定番保持と透過の境界目的抗体を確実に留め、小分子は素通し
形式スクリーン入りカセット/中空糸圧力損失・背面ろ過・せん断高フラックスならカセット、せん断や高粘度の圧力損失なら中空糸
スクリーン幾何開いた流路/乱流促進スクリーン物質移動と圧力損失の綱引き粘度・目標濃度が高いほど開いた流路が有利
使用回数シングルユース/反復使用洗浄負荷・交差汚染・コスト多品種短サイクルは使い捨て、大量反復は反復使用+低吸着膜
濃縮方式従来TFF/SPTFF取り残し・末端の高粘度連続化・高力価ならSPTFF、ただし段組みと流路設計が肝
バッファ交換(DF)標準設計/オフセット設計Donnan・体積排除高濃度ほどpH・添加剤を意図的にずらす(PMID 29339134, 39385541)

まとめ

高濃度UF/DFの難しさは、すべて「濃度が上がると物理が非線形に効いてくる」一点に根があります。膜際の壁(濃度分極)で最後の数十mg/mLがフラックスを失い、粘度の指数的な上昇が圧力損失・背面ろ過・せん断を同時に悪化させ、到達できる上限濃度はモジュールの形状で頭打ちになる(PMID 26918655)。だからこそ選定が効きます。中空糸かスクリーン入りカセットか(圧力損失と背面ろ過の出方)、PESか安定化セルロースか(吸着・回収率)、ふるい分けの境目は30 kDaが定番、スクリーン幾何は粘度で選び、シングルユースか反復使用かは材質と連動。さらにSPTFFは循環ループを消して高力価・連続化に効く一方で、末端の高粘度に効く流路設計が製品の差になります(メーカー主張)。最後にバッファ交換では、Donnanと体積排除がpH・添加剤を狙いからずらすので、ずらし量をモデル化するか実液で校正する(PMID 32687221, 29339134, 39385541)。凝集しやすい分子を上流で見抜く視点(PMID 35940242)も含め、膜・装置の選定とバッファ交換の設計を一体で組むことが、SCの目標濃度に安定して着地するための条件です。製品仕様の詳細は、各メーカーの公式情報で確認してください。

参考文献

目次・関連閉じる
編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。
Newsletter

バイオプロセスの最新を、メールで。

新着の解説記事と製品ニュースを、月数回お届けします。実務に役立つ一次情報を、日本語で。いつでも解除できます。

登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。