培養(灌流)装置

灌流用細胞保持装置(ATF/TFF)

灌流用細胞保持装置は、パーフュージョン培養で細胞をバイオリアクター内に保持しながら、使用済み培地と代謝産物を連続的に抜き出し新鮮培地を供給する装置です。多くは中空糸モジュールを用い、ATF(交互タンジェンシャルフロー)やTFF循環、あるいは音響式・遠心式で細胞と培地を分離します。高密度培養・連続生産・プロセス強化(インテンシフィケーション)の核心装置で、孔径・せん断・スケールが選定の主軸になります。

灌流培養細胞保持ATFプロセス強化連続生産
分類
培養(灌流)装置
主な用途
灌流培養 / 細胞保持 / ATF / プロセス強化 / 連続生産
関連モダリティ
抗体医薬 / Fc融合・組換えタンパク質 / 二重特異性抗体 / AAV / ワクチン
代表メーカー
Repligen・Sartorius・Cytiva・Thermo Fisher Scientific ほか計6社
関連キーワード
灌流培養 / パーフュージョン / ATF / 中空糸 / N-1パーフュージョン / 連続生産

用途・特徴

灌流用細胞保持装置は、バイオリアクターと組み合わせ、培養液から細胞を分離・保持して透過液(ハーベスト)だけを連続的に抜き出します。中空糸式では孔径(マイクロろ過 0.2〜0.65μm/限外ろ過 数十〜数百kDa)で目的物の透過か保持かが決まり、抗体などをハーベストへ通すマイクロろ過か、製品も細胞側に留めて高密度化に徹する限外ろ過かを選びます。代表方式のATF(交互タンジェンシャルフロー)はダイアフラムポンプで培養液を往復させ、中空糸内を双方向に流して膜面のケーキ層を掃き、目詰まり(ファウリング)を抑えながら長期運転します。

選定の主軸は孔径・せん断・スケールです。せん断感受性の高い細胞では、ぜん動ポンプで一方向に循環させるTFF式よりも、低せん断で逆洗効果のあるATF式が長期培養で有利とされます。一方で音響式(音響波で細胞を凝集沈降)や遠心式(連続遠心)は膜を使わないため目詰まりや製品保持の懸念が少なく、それぞれ適用範囲が異なります。膜面積はビオリアクター容量と目標細胞密度、灌流速度(VVD:1日あたりリアクター容積の何倍を交換するか)から設計します。

工程設計では、定常的な高細胞密度の維持、ブリード(細胞密度を一定に保つための抜き取り)制御、ハーベストの連続回収を前提にラインを組みます。シングルユースの中空糸モジュールと無菌コネクター、灌流ポンプ、キャパシタンス(生細胞)センサーによる密度制御を組み合わせ、N-1パーフュージョン(種培養の高密度化)や連続生産での安定運転を実現します。長期無菌運転になるため、膜の完全性・無菌性維持と、製品の膜透過率(シーブ係数)の安定が重要管理点です。

Point
  • バイオリアクター内に細胞を保持し培地を連続交換する灌流の中核装置
  • 中空糸の孔径(MF/UF)で製品を透過させるか細胞側に保持するかを選ぶ
  • ATF式はダイアフラムの往復流で膜面を逆洗し低せん断・低ファウリング
  • TFF式はぜん動ポンプの一方向循環でシンプルだがせん断が高くなりやすい
  • 音響式・遠心式は膜レスで目詰まり・製品保持の懸念が小さい
  • 灌流速度はVVD(容積/日)で管理し膜面積をスケールに合わせて設計
  • キャパシタンスセンサーで生細胞密度を測りブリードで定常維持する
  • N-1パーフュージョンや連続生産でプロセス強化・高生産性を実現する

使用方法

基本的には、バイオリアクターに細胞保持装置(多くは中空糸モジュール)を接続し、培養液を循環または往復させてハーベストを連続的に抜き出しつつ、同量の新鮮培地を供給します。

1保持方式(ATF/TFF/音響/遠心)と孔径を選ぶ
2リアクター容量・目標密度から膜面積を設計する
3無菌接続でモジュール・配管を組み立てる
4灌流速度(VVD)と培地供給を設定する
5ハーベスト連続回収と細胞保持を運転する
6生細胞密度を測りブリードで定常維持する
実際の運転条件は、細胞種とせん断感受性、目的物の分子量と膜透過率(シーブ係数)、目標細胞密度・培養期間、灌流速度、膜形態とスケール、シングルユース/GMP要件によって変わります。膜の目詰まりや製品保持率の変動、長期無菌維持は予備試験と運転中モニタリングで確認します。

掲載情報の確認日:2026年7月(メーカー公開情報をもとに編集部が確認。最新・正確な仕様は各社公式をご確認ください)