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シングルユースバイオリアクター

シングルユースバイオリアクターは、使い捨ての培養バッグやライナーを用いて、細胞培養や微生物培養を行う培養装置です。従来のステンレス培養槽では、培養ごとに洗浄、滅菌、SIP/CIP、バリデーション、配管準備が必要になります。一方、シングルユースバイオリアクターでは、あらかじめ滅菌されたバッグやシングルユース流路を装着して使用するため、洗浄・滅菌作業を減らし、切り替えを早くしやすい点が特徴です。

本培養フェッドバッチ灌流培養GMP製造

用途・特徴

シングルユースバイオリアクターは、細胞を制御された条件で培養し、目的タンパク質やウイルスベクターなどを生産するために使われます。主に、温度、pH、DO、撹拌、通気、CO2、O2、N2、フィード添加、サンプリングなどを制御します。

ガラス製ベンチトップバイオリアクターやシェイクフラスコよりも制御性が高く、商用スケールのステンレス培養槽よりも導入・切り替えが柔軟です。

Point
  • 使い捨てバッグを用いる培養装置
  • 洗浄・滅菌作業を減らし、切り替えを早くしやすい
  • pH、DO、温度、撹拌、ガス、フィードを制御できる
  • 抗体医薬の本培養で重要な装置
  • CHO細胞、HEK293細胞、Sf9細胞、Producer Cellなどで使われる
  • フェッドバッチ、灌流、強化培養に対応する構成がある
  • バッグ、センサー、フィルム、接続部材、制御システムまで含めて選定する

使用方法

基本的には、滅菌済みのシングルユースバッグを装置にセットし、培地を充填してから細胞を接種し、培養条件を制御します。

1シングルユースバッグを準備する
2装置へバッグを装着する
3pH/DOセンサー、チューブ、フィルター、ガスラインを接続する
4培地を充填する
5温度、pH、DO、撹拌、ガス条件を設定する
6シードトレインで増やした細胞を接種する
7培養中に細胞数、生存率、代謝物、pH、DOを確認する
8必要に応じてフィードを添加する
9培養終了条件を判断する
10ハーベスト・清澄化工程へ送液する
11バッグや流路を廃棄する
実際の運用は、細胞種、培養スケール、バッグ仕様、センサー構成、培地・フィード、制御システム、サンプリング方式、GMP要件によって変わります。

ステンレス培養槽との違いは?

シングルユースバイオリアクターとステンレス培養槽は、どちらも本培養に使われますが、運用思想が異なります。

結論

多品目製造や開発〜中規模製造ではシングルユースが有利になることが多く、大量生産や非常に大きなスケールではステンレス培養槽が選ばれることがあります。

培養容器

固定式ステンレス槽

使い捨てバッグ

洗浄・滅菌

CIP/SIPが必要

基本的に不要、バッグ交換

立ち上げ

設備準備が重い

比較的早い

交差汚染リスク

洗浄バリデーションが重要

バッグ交換で低減しやすい

スケール

数百L〜数万L以上

数L〜数千L

柔軟性

大量生産・長期運用に強い

多品目・小〜中規模に向く

廃棄物

洗浄水・蒸気・薬液が必要

プラスチック廃棄物が出る

注意点

洗浄、滅菌、設備投資、切替時間

バッグ供給、フィルム、E&L、スケール上限

ガラス製ベンチトップバイオリアクターとの違いは?

項目ガラス製ベンチトップバイオリアクターシングルユースバイオリアクター
主な用途条件検討、スケールダウン、研究開発プロセス開発、本培養、GMP製造
容器ガラス槽シングルユースバッグ
洗浄・滅菌洗浄、オートクレーブが必要滅菌済みバッグを使用
スケール数百mL〜数十L程度数L〜数千L
再現性条件制御に強い製造スケールに展開しやすい
柔軟性実験条件変更に強い多品目・製造切替に強い
注意点洗浄・組立の手間バッグ仕様、センサー、供給安定性

ロッキング型との違いは?

項目撹拌槽型シングルユースバイオリアクターロッキング型バイオリアクター
混合方式インペラー撹拌バッグを揺らして混合
主な用途本培養、プロセス開発、製造シードトレイン、小〜中規模培養、細胞治療
制御性高い中〜高
スケール数L〜数千L小〜中容量が中心
酸素移動撹拌・通気で制御しやすい波動混合と表面曝気が中心
せん断条件によって管理が必要比較的低せん断で扱いやすい
向く細胞CHO、HEK293、Sf9などせん断に弱い細胞、種培養、細胞治療
注意点インペラー、スパージ、バッグ形状ロッキング速度、角度、液量

フェッドバッチと灌流での使い方

培養方式内容シングルユースバイオリアクターでのポイント
バッチ培養最初に培地を入れ、基本的に追加栄養を入れないシンプルだが高密度・高力価には限界がある
フェッドバッチ培養培養途中でフィードを追加する抗体医薬でよく使われる。フィード、浸透圧、代謝管理が重要
灌流培養新鮮培地を連続供給し、老廃物を排出する高密度培養や連続生産で使われる。細胞保持装置が必要
強化シード培養高密度の種培養を作る本培養接種の効率化や設備利用率向上に関係する
Intensified process高密度・高生産性を狙う強化工程ATF、TFF、オンライン分析、制御システムと組み合わせる

主なタイプ

タイプ内容向く用途
撹拌槽型SUBインペラー付きバッグで撹拌するタイプ抗体医薬、組換えタンパク質、本培養
ロッキング型SUBバッグを揺らして培養するタイプシードトレイン、細胞治療、小〜中規模培養
ベンチトップSUB小型のシングルユース培養槽プロセス開発、条件検討
製造用SUB500 L、1000 L、2000 L以上のスケールGMP本培養、商用製造
高密度・灌流対応SUBATF/TFFなどと組み合わせるタイプ灌流、intensified process
微生物対応SUB高撹拌・高酸素移動に対応するタイプ微生物発酵、一部組換えタンパク質
細胞治療向けSUB低せん断、閉鎖系、小〜中容量T細胞、NK細胞、MSCなど
ウイルスベクター向けSUBHEK293、Sf9、Producer Cellに対応AAV、レンチ、ワクチン

選定ポイント

培養スケール5 L、10 L、50 L、200 L、500 L、1000 L、2000 L以上に対応するか
細胞種CHO、HEK293、Sf9、Vero、T細胞、MSCなどに適しているか
培養方式バッチ、フェッドバッチ、灌流、強化培養に対応するか
混合性能撹拌効率、混合時間、デッドゾーン、スケールアップ性
酸素移動kLa、スパージ、ヘッドスペース通気、マイクロスパージの有無
せん断細胞へのダメージ、気泡、消泡、インペラー形状
バッグ仕様フィルム、ポート、チューブ、センサー、サンプリング、カスタム対応
センサーpH、DO、温度、圧力、ロードセル、シングルユースセンサー対応
制御システムpH/DO制御、ガスMFC、撹拌、フィード、SCADA連携
自動化連携自動サンプリング、PAT、LIMS、MES、データ出力に対応するか
E&LExtractables/Leachables情報、フィルム実績、規制文書の有無
GMP対応IQ/OQ、CSV、21 CFR Part 11、監査証跡、変更管理
設置性フットプリント、天井高、バッグ装着、ホイスト、ユーティリティ
供給安定性バッグリードタイム、セカンドソース、カスタムバッグ、在庫
保守国内保守、校正、スペアパーツ、サービス体制

使用される工程

シングルユースバイオリアクターは、上流の培養工程を中心に幅広く使われます。

シードトレイン

本培養へ接種する細胞を増やすため、小型SUBやロッキング型が使われる。

主な用途
  • 種培養

小型培養装置

プロセス開発や条件検討で小型SUBを使う。

主な用途
  • 条件検討

本培養

CHO細胞などを培養し、抗体やタンパク質を産生させる主工程。

主な用途
  • 本培養

フェッドバッチ培養

培養途中でフィードを添加し、細胞密度と産生を維持する。

主な用途
  • フィード

灌流培養

細胞保持装置と組み合わせて高密度・連続培養を行う。

主な用途
  • 高密度

ウイルスベクター製造

HEK293、Sf9、Producer Cellを培養し、AAVやレンチウイルスを生産する。

主な用途
  • ベクター

ワクチン製造

Vero、MDCK、昆虫細胞などの培養に使われる。

主な用途
  • ワクチン

細胞治療製造

低せん断・閉鎖系培養装置として使われる場合がある。

主な用途
  • 閉鎖系

プロセス開発

培地、フィード、pH、DO、温度、接種密度、撹拌条件を検討する。

主な用途
  • 条件検討

スケールアップ

ベンチトップ、50 L、200 L、500 L、2000 Lへ条件を展開する。

主な用途
  • スケールアップ

GMP製造

商用または治験薬製造の本培養装置として使われる。

主な用途
  • GMP

ハーベスト前工程

培養終了後、ハーベスト・清澄化へ培養液を送る。

主な用途
  • 送液

使用されるモダリティー

シングルユースバイオリアクターは、培養を伴う多くのモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
CHO細胞本培養フェッドバッチ灌流
抗体産生の中心装置として使われる。
ADC
関連度
抗体原薬用CHO細胞
ADCの抗体部分を製造する本培養で使われる。
二重特異性抗体
関連度
CHO細胞複数鎖発現本培養
複雑な抗体分子の産生で使われる。
Fc融合タンパク質・組換えタンパク質
関連度
CHOHEK293本培養
組換えタンパク質の生産に使われる。
AAV
関連度
HEK293Sf9Producer Cell
ウイルスベクター製造細胞の培養に使われる。
レンチウイルス
関連度
HEK293TPackaging CellProducer Cell
ベクター製造用細胞の培養で使われる。
ワクチン
関連度
VeroMDCK昆虫細胞ウイルス増殖
細胞基材やウイルス増殖工程で使われる。
細胞治療
関連度中〜高
T細胞NK細胞MSC
バッグ型や低せん断の細胞拡大装置として使われる場合がある。
iPS細胞・幹細胞由来製品
関連度中〜高
iPS由来細胞MSC分化細胞
3D培養、マイクロキャリア、低せん断培養で関係する。
遺伝子編集
関連度
編集細胞Producer Cell回復・拡大培養
編集後細胞やベクター産生細胞の拡大で使われる。
mRNA-LNP
関連度低〜中
評価細胞原料酵素製造関連細胞培養
mRNA合成本体よりも関連細胞培養で関係する。
プラスミドDNA
関連度低〜中
微生物培養は通常別装置
微生物対応SUBや発酵槽が使われる場合がある。
微生物発酵
関連度
大腸菌酵母一部SUB
微生物対応シングルユース発酵槽で関係する。
低分子医薬品
関連度低〜中
細胞アッセイ評価細胞
製造工程よりも評価系で限定的に関係する。

メーカー製品

撹拌槽型シングルユースバイオリアクター10
CytivaXcellerex XDR Single-Use Bioreactorインペラー内蔵型のシングルユースバイオリアクター。10 Lから2000 Lまでのラインアップがあり、培養条件のモニタリングとフィードバック制御に対応する。公式URL SartoriusBiostat STR Generation 3撹拌槽型シングルユースバイオリアクター。12.5 Lから2000 Lの作業容量に対応し、Biobrain automation platformやXCell ATF統合構成にも対応する。公式URL Thermo Fisher ScientificDynaDrive Single-Use Bioreactor5 Lから5000 Lレンジのシングルユースバイオリアクター。スケールアップ性と生産性向上を意識したシステム。公式URL Thermo Fisher ScientificHyPerforma Single-Use Bioreactor50 Lから2000 Lレンジのシングルユースバイオリアクター。プロセス開発から製造までの細胞培養に使われる。公式URL Merck / MilliporeSigmaMobius Single-use Bioreactors撹拌槽型シングルユースバイオリアクターのポートフォリオ。ソフトウェア、ハードウェア、シングルユースアセンブリを構成し、浮遊・接着細胞培養に使われる。公式URL Pall / CytivaAllegro STR Single-Use BioreactorPall由来の撹拌槽型シングルユースバイオリアクター。現在はCytiva/Pallポートフォリオとして扱われる。公式URL ABECCSR Single-Use Bioreactor大容量シングルユースバイオリアクターを展開。商用製造や大規模バイオプロセス向けに使われる。公式URL PBS BiotechPBS Bioreactor Systems垂直ホイール混合技術を用いたシングルユースバイオリアクター。細胞治療、幹細胞、AAV、組換えタンパク質などで使われる。公式URL CellexusCellMaker Single-Use Bioreactorsエアリフト型のシングルユースバイオリアクター。細胞培養や微生物培養の研究・開発用途で使われる。公式URL Solaris Biotech / DonaldsonSingle-Use Bioreactors研究・開発・製造向けのシングルユースバイオリアクター製品群。細胞培養や発酵で使われる。公式URL

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