Product Guide

CO2インキュベーター

CO2インキュベーターは、細胞を一定の温度、CO2濃度、湿度で培養するための装置です。哺乳類細胞の培養では、一般的に37℃、5% CO2、高湿度環境が使われます。CO2は培地中の重炭酸バッファー系と関係しており、培地pHを安定させるために重要です。温度やCO2濃度が不安定になると、細胞増殖、細胞生存率、タンパク質発現、分化状態、代謝状態に影響します。

細胞培養回復培養シードトレイン低酸素培養

用途・特徴

CO2インキュベーターは、細胞を培養するための安定した環境を作る装置です。主に、哺乳類細胞、CHO細胞、HEK293細胞、T細胞、NK細胞、iPS細胞、MSC、初代細胞、がん細胞、ハイブリドーマなどの培養に使われます。抗体医薬では、細胞株開発、セルバンク融解後の回復培養、シードトレイン、分析用細胞の維持に関係します。

細胞培養では、温度、CO2、湿度、清浄性が崩れると、細胞状態が変わります。特にシードトレインでは、本培養へ渡す細胞状態を安定させる必要があるため、CO2インキュベーターの安定性は重要です。

Point
  • 細胞を一定温度・CO2濃度・高湿度で培養する装置
  • WCB融解後の回復培養、継代培養、プレート培養に使われる
  • CHO細胞、HEK293細胞、iPS細胞、T細胞、MSCなどで広く使われる
  • 温度、CO2、湿度、庫内清浄性が細胞状態に影響する
  • ドア開閉後の温度・CO2復帰速度が重要
  • 水盤、湿度管理、除染、HEPA、UV、銅チャンバーなどの設計差がある
  • 低酸素培養ではO2制御付きマルチガスインキュベーターを使う場合がある

使用方法

基本的には、CO2インキュベーターを設定温度とCO2濃度に安定させ、培養容器を庫内に入れて細胞を培養します。

1装置を設置する
2温度、CO2濃度、必要に応じてO2濃度を設定する
3加湿水を準備する
4庫内が安定するまで待つ
5フラスコ、プレート、ディッシュ、バッグなどを入れる
6培養中はドア開閉を最小限にする
7定期的に細胞状態を確認する
8必要に応じて継代、スケールアップ、サンプリングを行う
9清掃、除染、校正、記録を行う
実際の条件は、細胞種、培地、培養容器、培養スケール、CO2設定、低酸素条件、除染要件、GMP対応、施設ルールによって変わります。

ウォーターバスとの違いは?

ウォーターバスとCO2インキュベーターは、どちらも温度管理に関係しますが、役割は大きく異なります。

結論

ウォーターバスは「サンプルを温める装置」、CO2インキュベーターは「細胞を培養する装置」です。

主な対象

チューブ、バイアル、試薬、サンプル

細胞培養容器

主な目的

短時間の加温・融解

細胞を一定環境で培養する

温度伝達

水を介して速い

空気を介して穏やか

CO2制御

なし

あり

湿度制御

なし

あり

主な用途

凍結細胞融解、試薬予温、酵素反応

回復培養、継代培養、シードトレイン

注意点

水質・清掃・汚染対策

CO2濃度、湿度、庫内清浄性

CO2シェーカーとの違いは?

項目CO2インキュベーターCO2シェーカー
培養方式静置培養振とう培養
主な容器フラスコ、プレート、ディッシュシェイクフラスコ、バッグ、一部チューブ
主な細胞接着細胞、静置培養細胞、プレート培養浮遊細胞、CHO、HEK293など
用途回復培養、継代、単一細胞培養、細胞治療シードトレイン、拡大培養、浮遊細胞培養
撹拌なしあり
スケールアップ静置系中心フラスコからリアクターへ接続しやすい
注意点庫内環境とコンタミ管理振とう条件、酸素移動、せん断、フラスコ容量

マルチガスインキュベーターとの違いは?

項目CO2インキュベーターマルチガスインキュベーター
制御項目温度、CO2、湿度温度、CO2、O2、湿度
主な用途一般的な細胞培養低酸素培養、幹細胞、がん、初代細胞
O2制御なしあり
ガスCO2CO2、N2、場合によりO2
向く細胞CHO、HEK293、一般細胞iPS、MSC、初代細胞、がん細胞、低酸素モデル
注意点CO2校正、湿度管理O2センサー、N2消費量、低酸素条件の再現性

主なタイプ

タイプ内容向く用途
標準CO2インキュベーター温度・CO2・湿度を制御する基本タイプ一般的な細胞培養
コンパクトCO2インキュベーター小容量・省スペース型少量サンプル、個別培養、専用用途
大容量CO2インキュベーター多数のフラスコやプレートを収容できる多検体、細胞株開発、QC
スタック対応型2段積みなどに対応するラボスペース節約
高温除染対応型180℃などの高温除染に対応するコンタミ対策、GMP寄り運用
UV除染対応型UV照射機能を備える庫内清浄性の維持
銅チャンバー型銅の抗菌性を活かした庫内構造コンタミリスク低減
HEPAフィルター搭載型庫内空気を清浄化する清浄性重視の培養
マルチガス型CO2に加えO2も制御する低酸素培養、幹細胞、細胞治療
GMP対応・記録強化型アラーム、ログ、通信、校正、記録性を重視製造、品質管理、細胞治療

選定ポイント

容量フラスコ、プレート、ディッシュ、バッグをどれだけ入れるか
温度制御37℃の安定性、庫内均一性、復帰速度
CO2制御IRセンサー、TCセンサー、校正頻度、復帰速度
湿度管理水盤方式、蒸発量、結露、乾燥対策
O2制御低酸素培養が必要か
除染方式180℃高温除染、UV、過酸化水素、拭き取り清掃
庫内材質ステンレス、銅、抗菌仕様、角丸構造
コンタミ対策HEPA、UV、銅、気流設計、清掃性
ドア構造一枚扉、分割内扉、ガラス扉、サンプルアクセス性
設置性スタック対応、フットプリント、CO2ボンベ位置
記録性アラーム、通信、データログ、遠隔監視
GMP対応IQ/OQ、校正、点検、SOP、清掃記録に対応できるか
ランニングコストCO2消費量、HEPA交換、加湿水、保守費用
サポート国内保守、部品供給、点検、校正対応

使用される工程

CO2インキュベーターは、細胞培養が関係する多くの工程で使われます。

細胞株開発・クローン選抜

トランスフェクション後培養、単一細胞播種、クローン増殖確認に使われる。

主な用途
  • クローン培養

遺伝子導入・安定発現株作製

遺伝子導入後の細胞培養や選択培養に使われる。

主な用途
  • 選択培養

単一細胞化・ウェル播種

単一細胞分注後のプレート培養に使われる。

主な用途
  • プレート培養

クローン性確認・増殖観察

ウェル内の細胞増殖を安定環境で維持する。

主な用途
  • 増殖観察

セルバンク

MCB/WCB評価用細胞の回復培養、確認培養に使われる。

主な用途
  • 確認培養

シードトレイン

WCB融解後の回復培養、初期段階の培養に使われる。

主な用途
  • 初期培養

融解・回復培養

解凍後の細胞を回復させる工程で使われる。

主な用途
  • 回復培養

段階的な拡大培養

Tフラスコ、培養プレート、静置系容器での拡大に使われる。

主な用途
  • 拡大培養

細胞治療製造

原料細胞、中間細胞、分化細胞の培養に使われる。

主な用途
  • 細胞加工

iPS細胞・幹細胞培養

iPS細胞、MSC、分化細胞の培養に使われる。

主な用途
  • 分化培養

品質評価・分析

細胞ベースアッセイ、バイオアッセイ、毒性評価で使われる。

主な用途
  • アッセイ

研究開発

一般的な細胞培養、細胞維持、試験培養に使われる。

主な用途
  • 細胞維持

使用されるモダリティー

CO2インキュベーターは、細胞培養が関係する多くのモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
CHO細胞細胞株開発WCB融解
産生細胞の維持、回復培養、クローン培養に使われる。
ADC
関連度
抗体原薬用CHO細胞細胞株開発
抗体部分の製造細胞培養で関係する。
二重特異性抗体
関連度
CHO細胞クローン選抜シードトレイン
複数鎖発現細胞の培養で使われる。
Fc融合タンパク質・組換えタンパク質
関連度
CHOHEK293細胞株開発
組換えタンパク質産生細胞の培養で使われる。
AAV
関連度
HEK293Sf9Producer Cell
ベクター製造用細胞の培養に使われる。
レンチウイルス
関連度
HEK293TPackaging CellProducer Cell
ウイルスベクター製造用細胞の培養で使われる。
プラスミドDNA
関連度低〜中
細胞評価発現確認
プラスミド製造本体よりも評価細胞や発現確認で使われる。
mRNA-LNP
関連度
評価細胞トランスフェクション試験バイオアッセイ
mRNAやLNPの細胞評価で使われる。
細胞治療
関連度
T細胞NK細胞MSC、原料細胞
細胞加工、増殖、回復培養に使われる。
iPS細胞・幹細胞由来製品
関連度
iPS細胞分化細胞MSC
維持培養、分化、低酸素培養で使われる。
遺伝子編集
関連度
CRISPR編集細胞クローン化回復培養
編集後細胞の培養とクローン化に使われる。
ワクチン
関連度
細胞基材ウイルス増殖細胞培養
細胞培養ベースのワクチン開発・製造で使われる。
微生物発酵
関連度低〜中
哺乳類細胞評価がある場合
微生物培養本体では通常使われない。
低分子医薬品
関連度
細胞アッセイ毒性評価薬効評価
製造工程よりも評価系で使われる。

メーカー製品

標準CO2インキュベーター12
Thermo Fisher ScientificThermo Scientific Heracell VIOS 160i CO2 Incubator165 LクラスのCO2インキュベーター。IR CO2センサー、オプションO2制御、ステンレスまたは銅チャンバー構成に対応する。公式URL Thermo Fisher ScientificThermo Scientific Heracell VIOS 250i CO2 Incubator大容量タイプのCO2インキュベーター。多検体・大容量培養容器を扱う用途に使われる。公式URL Thermo Fisher ScientificThermo Scientific Heracell 150i / 240i CO2 Incubators銅製チャンバー構成などに対応するCO2インキュベーター。一般的な細胞培養や研究開発用途に使われる。公式URL EppendorfCellXpert C170i180℃除染、ファンレス設計、省スペース性、ガス消費低減を特徴とするCO2インキュベーター。細胞培養、研究開発、細胞株開発で使われる。公式URL EppendorfCellXpert C170研究用細胞培養向けのCO2インキュベーター。日常的な細胞培養やラボ用途で使われる。公式URL PHCbiMCO-170AIC CO2 Incubator170 LクラスのIncuSafe CO2インキュベーター。温度・CO2制御と棚位置全体での安定培養環境を特徴とする。公式URL PHCbiMCO-170AC Series汎用性の高いCO2インキュベーターシリーズ。細胞培養、研究開発、品質試験で使われる。公式URL PHCbiMCO-230AIC / MCO-230 Series大容量タイプのCO2インキュベーター。多検体・大容量培養で使われる。公式URL BINDERCB Series CO2 Incubators細胞培養向けCO2インキュベーター。温度・CO2制御、庫内清浄性、除染機能を重視したモデルを展開。公式URL MemmertICO CO2 IncubatorCO2制御、温度管理、庫内環境制御に対応するインキュベーター。研究・細胞培養用途で使われる。公式URL NuAireIn-VitroCell CO2 Incubators細胞培養向けCO2インキュベーター。研究、臨床、バイオプロセス用途で使われる。公式URL Panasonic / PHCbiMCOシリーズ旧Panasonic系のCO2インキュベーターを含むPHCbiブランド製品群。現在はPHCbiとして展開される。公式URL
関連装置・周辺製品10
BioLife SolutionsThawSTAR CFT2凍結細胞をウォーターフリーで融解する装置。CO2インキュベーターでの回復培養前に使われる。公式URL CytivaVIA Thawクライオバッグ向けのドライ式自動解凍装置。細胞治療や凍結細胞製品の解凍後、培養工程へつなぐ。公式URL CorningCell Culture Flasks / PlatesCO2インキュベーター内で使う細胞培養フラスコ、ディッシュ、プレートを展開。公式URL Thermo Fisher Scientific / NuncCell Culture Flasks / Dishes / Plates細胞培養用フラスコ、ディッシュ、プレート、マルチウェルプレートを展開。公式URL EppendorfCell Culture Consumables細胞培養用プレート、ディッシュ、チューブなどの消耗品を展開。公式URL Beckman Coulter Life SciencesVi-CELL BLU / Vi-CELL XRCO2インキュベーターで培養した細胞の細胞数・生存率確認に使われる自動セルカウンター。公式URL Logos BiosystemsLUNA-FX7 / LUNAシリーズ培養細胞の細胞数・生存率確認に使われる自動セルカウンター。公式URL VaisalaviewLinc Monitoring SystemCO2インキュベーターを含む温湿度・環境モニタリングに使われるシステム。公式URL ELPROEnvironmental Monitoring SolutionsGMP施設やラボの温度・湿度・CO2監視に使われるモニタリングシステム。公式URL T&Dおんどとり / WebStorage Service温度・湿度などのモニタリングに使われるロガー・クラウドサービス。公式URL

関連製品

関連記事

セルバンクとは?抗体医薬の製造に使う細胞を保存・管理する工程基礎知識・培養セルバンクとは?抗体医薬の製造に使う細胞を保存・管理する工程シードトレインとは?セルバンクから本培養へつなぐ段階的な培養工程基礎知識・培養シードトレインとは?セルバンクから本培養へつなぐ段階的な培養工程細胞株開発とは?抗体医薬に使う産生細胞株をどう構築・評価するか基礎知識・培養細胞株開発とは?抗体医薬に使う産生細胞株をどう構築・評価するかなぜモノクローナル抗体はCHO細胞で作るのか?高発現だけでは説明できない理由基礎知識・培養なぜモノクローナル抗体はCHO細胞で作るのか?高発現だけでは説明できない理由本培養とは?抗体医薬の産生量と品質を決める培養工程基礎知識・培養本培養とは?抗体医薬の産生量と品質を決める培養工程