培地の除菌ろ過
調製後の培地を除菌ろ過してから培養に供する。
- 培地除菌
滅菌フィルター(sterilizing-grade filter)は、孔径0.2/0.22µmの膜で液中の微生物を除去し、無菌の液を得るためのフィルターです。除去性能はB. diminutaチャレンジ(1×10⁷ CFU/cm²以上の負荷で完全捕捉)で検証され、実工程ではバブルポイントや拡散流などの完全性試験で膜の健全性を確認します。バイオ医薬では培地・バッファー・中間体・最終原薬の除菌ろ過や無菌充填前の工程で使われます。
滅菌フィルターは、培地やバッファーの調製後の除菌ろ過、バイオリアクター供給ラインのバイオバーデン低減、中間体プールの除菌ろ過、原薬・製剤の最終ろ過(最終除菌ろ過)、無菌充填直前のろ過などで使われます。0.2/0.22µmが標準的な除菌ろ過グレードで、より高い負荷や詰まりやすい液では0.45µmや0.65µmのプレフィルターと組み合わせて多段化します。
sterilizing-gradeとして扱うには、ASTM/PDA TR26に基づくB. diminuta(ATCC 19146)チャレンジでの完全捕捉が検証されている必要があります。実工程では破過や取り付け不良を排除するため、使用前後で完全性試験(pre-/post-use integrity test)を行い、最終ろ過では信頼性を高めるためredundant filtration(直列二重ろ過)やPUPSIT(滅菌前の使用前完全性試験)を採用する構成もあります。
基本的には、ろ過対象液をプレフィルターを介して0.2µm滅菌フィルターへ通し、無菌の液を得ます。使用前後の完全性試験で膜の健全性を確認します。
除菌ろ過とその前段の清澄ろ過・プレフィルターは、いずれもろ過工程ですが、目的(無菌化か負荷軽減か)と検証の考え方が異なります。
粒子や濁質が多い液をいきなり0.2µm膜に通すと急速に目詰まりするため、清澄ろ過やプレフィルターで負荷を下げてから除菌ろ過する多段構成が基本です。無菌性を保証するのは0.2µm滅菌フィルターであり、ここでは完全性試験とバリデーションが欠かせません。
濁質・粒子の除去、後段フィルターの負荷軽減
微生物除去による無菌化
0.45/0.65/1.2µmなど比較的大きい
0.2/0.22µm(sterilizing-grade)
粒子捕捉や処理量が主。微生物保証はしない
B. diminutaチャレンジで完全捕捉を検証
必須でない場合が多い
使用前後の完全性試験が重要
除菌ろ過の前段(プレフィルター)
最終ろ過、無菌充填前、培地・バッファー除菌
ガラス繊維、PP、PESプレフィルター層
PES、PVDFなどのsterilizing-grade膜
粒子を受け止め後段を守る
プレフィルターで保護し面積で処理量を確保
バイオバーデン低減の一手段
無菌性に直結し、バリデーションが必須
| 試験 | 原理 | 向く膜・条件 |
|---|---|---|
| バブルポイント試験 | 湿潤膜から気泡が連続的に抜け始める圧力で最大孔径を評価する | 小面積、孔径確認、簡便な確認に向く |
| 拡散流試験(フォワードフロー) | 規定圧力で膜を透過する気体の拡散流量を測定し基準と比較する | 大面積カートリッジ・カプセルの標準的試験 |
| 圧力保持試験(プレッシャーホールド) | 加圧後の圧力低下を測定し膜の健全性を間接評価する | 拡散流の代替・補完として用いる |
| 水侵入試験(WIT) | 疎水性膜に水が侵入し始める圧力で健全性を評価する | エア/ベント用などの疎水性PTFE膜 |
| 使用前完全性試験(pre-use) | ろ過前に膜の健全性を確認する | 破過品の使用を避ける目的 |
| PUPSIT | 滅菌後・使用前に下流無菌性を保ったまま完全性を確認する | 最終ろ過の信頼性を高める構成で採用 |
| 使用後完全性試験(post-use) | ろ過後に膜が健全だったかを確認する | バッチの無菌性判定に用いる必須試験 |
| 膜材質 | 特徴 | 主な用途・注意点 |
|---|---|---|
| PES(ポリエーテルスルホン) | 高流量、低タンパク吸着、広いpH適合性 | 培地・バッファー・タンパク質液の除菌ろ過の主流 |
| PVDF | 低タンパク吸着、低抽出物、親水化処理品 | タンパク質・製剤の最終ろ過、低吸着が必要な液 |
| PVDF(疎水性) | 撥水性で気体は通し水は通さない | タンク/バイオリアクターのエア・ベントろ過 |
| PTFE(疎水性) | 高い化学耐性、疎水性 | ベント、ガスろ過、溶剤系の液 |
| セルロース系(CA/MCE) | 低吸着グレードもあるが用途が限定的 | 一部の水系・分析用途。本工程では適合確認が必要 |
| ナイロン | 正電荷品はエンドトキシン低減に寄与 | 特定用途。タンパク吸着に注意 |
| プレフィルター層(PP/ガラス繊維) | 粒子・コロイドを捕捉し後段を保護 | 0.2µm膜の前段として多段化に使う |
| 形式 | 内容 | 向く場面 |
|---|---|---|
| プリーツカートリッジ | ステンレスハウジングに装填する標準形式 | SIP/オートクレーブ運用、大量処理 |
| シングルユースカプセル | ハウジング一体型の使い捨て。ガンマ滅菌品もある | シングルユース工程、洗浄バリデーション不要化 |
| ディスク/小型カプセル | 47mmディスクや小型カプセルのスケールダウン品 | ろ過性能・処理量の評価、Vmax試験 |
| 二段(プレ+ファイナル) | プレフィルター層とsterilizing膜を組み合わせる | 詰まりやすい液の処理量確保 |
| redundant filtration | 0.2µm滅菌フィルターを直列に二重設置する | 最終ろ過の無菌性信頼性向上 |
| エア・ベント用疎水性フィルター | 疎水性膜でタンク/リアクターの呼吸をろ過する | 陽圧/陰圧調整、水侵入試験で健全性確認 |
| アセンブリ(流路一体型) | フィルター・バッグ・チューブ・コネクター一体 | 無菌移送ライン、無菌充填前ライン |
滅菌フィルターは、無菌化やバイオバーデン低減が必要な多くの工程で使われます。
調製後の培地を除菌ろ過してから培養に供する。
精製・調製用バッファーをバイオバーデン低減・除菌する。
供給液やフィードのバイオバーデンを下げて投入する。
工程間プール液をバイオバーデン低減・除菌する。
ロード液や溶出プールの除菌ろ過に使う。
ウイルスフィルター前後のバイオバーデン管理に使う。
原薬(DS)プールを最終除菌ろ過する。
充填直前にろ過し、無菌性を確保する。
タンク/リアクターの呼吸を疎水性膜でろ過する。
注射用水や工程用水の使用時点ろ過に使う。
界面活性剤や添加物溶液の除菌ろ過に使う。
滅菌フィルターは、無菌化が必要なほぼすべてのモダリティーで使われます。