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フィルター完全性試験(インテグリティテスター)

フィルター完全性試験機(インテグリティテスター)は、除菌ろ過フィルターやウイルス除去フィルターなどが破過や取り付け不良なく健全であることを、ろ過工程の使用前後に自動で確認する装置です。湿潤させた膜に規定圧力をかけ、拡散流(forward flow)・バブルポイント・圧力保持・水侵入(WIT)といった物理量を測定し、メーカーが規定する基準値と照合して合否を判定します。ASTM/PDA TR26やAnnex 1が要求する無菌性の保証とデータ完全性を、客観的な数値と記録で担保するための装置です。

完全性試験拡散流(フォワードフロー)PUPSIT監査証跡

用途・特徴

完全性試験は、膜の最大孔径や破過の有無を間接的に評価し、sterilizing-gradeフィルターの微生物保持性能と物理的健全性を結びつける試験です。膜を規定の液で完全に湿潤させると毛細管現象で孔が液で満たされ、加圧しても気体は拡散としてしか透過しません。この拡散流量や、液が押し出される圧力(バブルポイント)を測定し、基準値以内であれば膜が健全でメーカーの保持性能データが適用できると判断します。インテグリティテスターは、この測定を圧力・流量センサーで自動化し、手測定のばらつきと判定者依存を排除します。

実工程では、ろ過前に破過品の使用を避ける使用前試験(pre-use)、ろ過後にバッチの無菌性を判定する使用後試験(post-use)を行います。最終除菌ろ過では、Annex 1が原則として求めるPUPSIT(滅菌後・使用前の完全性試験)を、下流の無菌性を保ったまま実施する構成が採られます。判定結果はバッチ記録の一部となるため、21 CFR Part 11やALCOA+に対応した監査証跡、電子署名、機器側パラメータとフィルター品番・湿潤液・基準値の整合管理が重要になります。

Point
  • 湿潤膜の拡散流・バブルポイント・圧力保持・水侵入を測定して健全性を判定
  • 判定はメーカー規定の基準値(湿潤液・膜面積・膜種ごと)と照合して行う
  • 使用前(pre-use)・使用後(post-use)試験でバッチの無菌性を裏づける
  • 最終除菌ろ過ではPUPSIT(滅菌後・使用前試験)構成に対応する
  • 親水性膜は拡散流/バブルポイント、疎水性膜は水侵入(WIT)で評価する
  • 21 CFR Part 11対応の監査証跡・電子署名・データ完全性を備える
  • 試験プログラム(品番・湿潤液・基準値)の登録で入力誤りを抑える
  • 結果はバッチ記録に紐づき、SCADA/MES/LIMSへ連携できる機種もある

使用方法

基本的には、対象フィルターを規定の液で湿潤させ、登録済みの試験プログラムに従って装置が自動で加圧・測定・判定し、結果を記録します。

1対象フィルター品番・膜種・湿潤液・基準値を確認する
2装置に該当する試験プログラム(recipe)を選択・登録する
3フィルターを取り付け規定の液で膜を完全に湿潤させる
4上流に試験エアを供給し配管・接続のリークを排除する
5規定圧力まで安定化させ温度・圧力の平衡を待つ
6拡散流/バブルポイント/圧力保持/水侵入を自動測定する
7測定値を基準値と照合し合否を自動判定する
8結果・パラメータ・操作者を監査証跡付きで記録する
9印刷・PDF・CSV出力やSCADA/MES/LIMSへ連携する
10合格を確認しろ過工程またはバッチ判定へ進める
実際の運用は、対象が親水性(除菌ろ過)か疎水性(ベント)か、シングルユースかステンレスハウジングか、PUPSITやredundant filtrationの有無、装置とフィルターメーカーの組み合わせ、要求されるデータ完全性レベルによって変わります。基準値は必ずフィルターメーカーが品番ごとに規定した値を用い、装置側の校正状態と湿潤液・温度条件を整合させます。

バブルポイント試験 と 拡散流(フォワードフロー)試験の違いは?

いずれも湿潤膜に加圧して健全性を評価する破壊しない試験ですが、測定する物理量と適する膜面積が異なります。実工程の大面積カートリッジでは拡散流が標準で、バブルポイントは孔径確認や小面積の確認に向きます。

結論

プロセスの大面積フィルターでは、面積に応じた上限値で安定して判定できる拡散流(フォワードフロー)試験が標準です。バブルポイントは最大孔径を直接的に示すため孔径確認や小面積の確認に有用で、両者は相補的に使われます。どちらも基準値はフィルターメーカーが品番ごとに規定した値を用い、装置側の校正と湿潤条件を整合させることが前提です。

測定する量

液が押し出され気泡が連続的に抜け始める圧力

規定圧力(バブルポイント以下)での気体の拡散流量

評価する対象

膜の最大孔径(最大欠陥孔の指標)

膜全体の拡散挙動と破過・取り付け不良の有無

適する膜面積

小面積(ディスク、小型カプセル)に向く

大面積カートリッジ・カプセルの標準試験

判定基準

規定バブルポイント圧力以上であること

規定圧力での拡散流量が上限値以下であること

大面積での感度

面積が大きいと立ち上がりが不明瞭になりやすい

面積に応じた基準値で安定して判定できる

試験時間・ガス量

比較的短いが手測定だとばらつく

安定化に時間を要するが自動測定で再現性が高い

主な用途

孔径確認、簡便なスポット確認

使用前後試験、PUPSIT、最終除菌ろ過の標準判定

規格・指針

ASTM F316、メーカー規定値に準拠

PDA TR26、メーカー規定の拡散流基準に準拠

完全性試験の試験方式と原理

試験方式原理適する膜・場面
拡散流(フォワードフロー)試験規定圧力で湿潤膜を透過する気体の拡散流量を測定し上限値と比較する大面積の親水性カートリッジ・カプセルの標準試験
バブルポイント試験湿潤膜から気泡が連続的に抜け始める圧力で最大孔径を評価する小面積、孔径確認、簡便なスポット確認
圧力保持試験(プレッシャーホールド)加圧後の圧力低下量を測定し拡散流を間接評価する拡散流の代替・補完、配管系の保持確認
水侵入試験(WIT)疎水性膜に水が侵入し始める圧力・流量で健全性を評価するタンク/リアクターのエア・ベント用疎水性膜
多点拡散流(マルチポイント)試験複数圧力で拡散流を測定しK0値などから健全性を判断する感度を高めたい場面、傾向把握
使用前完全性試験(pre-use)ろ過前に膜の健全性を確認し破過品の使用を避けるろ過開始前の全工程
PUPSIT(滅菌後・使用前試験)滅菌後に下流無菌性を保ったまま使用前試験を行う最終除菌ろ過の信頼性向上構成(Annex 1)
使用後完全性試験(post-use)ろ過後に膜が健全だったかを確認しバッチ判定に用いる全バッチの無菌性判定に必須

親水性膜と疎水性膜での試験の使い分け

膜・用途主な試験方式確認のポイント
親水性膜(液の除菌ろ過)拡散流(フォワードフロー)/バブルポイント規定の湿潤液で完全湿潤させてから測定する
親水性大面積カートリッジ拡散流(マルチラウンドハウジング)面積に応じた上限値とハウジング容積を考慮する
疎水性膜(エア・ベント)水侵入試験(WIT)アルコール不要のWITは溶剤洗浄が省ける
疎水性膜(溶剤・ガス系)アルコール湿潤バブルポイント/拡散流湿潤液の種類で基準値が変わる点に注意
ウイルス除去フィルターメーカー規定の拡散流/結合金性試験膜種ごとの専用プログラムと基準値を用いる
シングルユースカプセル拡散流/圧力保持ガンマ滅菌品の湿潤性と配管リークに留意する
シングルユースシステム全体圧力減衰によるリーク試験バッグ・流路の漏れ確認は完全性試験とは別目的

データ管理・GMP適合の確認項目

項目確認内容
監査証跡操作・パラメータ変更・判定の改変不能な記録が残るか
電子署名・権限21 CFR Part 11対応の署名・ユーザー権限管理があるか
データ完全性ALCOA+原則、内部バックアップ、停電時の保護があるか
試験プログラム管理品番・湿潤液・基準値の登録と入力誤り防止機能があるか
出力・連携印刷、PDF、CSV出力やSCADA/MES/LIMS連携の可否
校正・適格性評価校正サービス、IQ/OQ/PQ支援、トレーサビリティの有無
基準値の根拠フィルターメーカー規定値との整合と検証文書

選定項目

対象フィルター除菌ろ過、ベント、ウイルス除去など対象膜種の範囲
膜の種類親水性(液)か疎水性(ベント)か、湿潤液の種類
試験方式拡散流/バブルポイント/圧力保持/WIT/多点の対応範囲
PUPSIT対応滅菌後・使用前試験の流路構成に組み込めるか
測定レンジ拡散流量・圧力・対象容積の測定範囲と分解能
基準値の整合フィルターメーカー規定値を品番ごとに登録できるか
データ完全性監査証跡、電子署名、21 CFR Part 11、ALCOA+対応
上位連携SCADA/MES/LIMS連携、印刷・PDF・CSV出力
設置形態ポータブル/据置、防水防塵、防爆/VHP適合の要否
校正・適格性校正サービス、IQ/OQ/PQ、トレーサビリティ
スループット多本同時試験や試験時間短縮アルゴリズムの有無
フィルター適合自社で使うフィルターメーカーの推奨・検証範囲か
保守・供給保守契約、消耗品、リードタイム、サポート体制
バリデーション文書ベンダー文書、規制対応資料、変更通知の提供

使用される工程

完全性試験機は、無菌性やウイルス安全性に直結するろ過工程の前後で使われます。

最終除菌ろ過

原薬・製剤の最終ろ過で使用前後の完全性を確認する。

主な用途
  • pre/post試験
  • PUPSIT

無菌充填前ろ過

充填直前の除菌ろ過フィルターの健全性を保証する。

主な用途
  • 充填前判定

PUPSIT

滅菌後・使用前に下流無菌性を保ったまま試験する。

主な用途
  • 滅菌後試験

ウイルスろ過

ウイルス除去フィルターの完全性をメーカー法で確認する。

主な用途
  • ウイルス安全性

培地・バッファー除菌

調製後の除菌ろ過フィルターの健全性を確認する。

主な用途
  • 上流除菌

エア・ベントろ過

タンク/リアクターの疎水性ベントをWITで確認する。

主な用途
  • 水侵入試験

中間体プールろ過

工程間プールの除菌ろ過の健全性を確認する。

主な用途
  • 中間体除菌

WFI・用水系

用水系のベントフィルターをin situで試験する。

主な用途
  • 用水系ベント

凍結乾燥機

凍結乾燥機の滅菌用ガスフィルターをWITで確認する。

主な用途
  • ガスフィルター

シングルユース流路

ろ過アセンブリの組み込みフィルターを試験する。

主な用途
  • 流路一体

バッチ記録・出荷判定

結果を監査証跡付き記録として無菌性判定に用いる。

主な用途
  • 記録・判定

使用されるモダリティー

完全性試験は、無菌性やウイルス安全性の保証が必要なほぼすべてのモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
除菌ろ過試験ウイルスろ過試験
上流〜下流の各除菌ろ過とウイルス除去フィルターで広く使われる。
Fc融合・組換えタンパク質
関連度
最終ろ過試験PUPSIT
最終除菌ろ過の使用前後試験で標準的に使われる。
ワクチン
関連度
除菌ろ過試験ベントWIT
培地・最終製剤の除菌ろ過とベントフィルターの試験で使われる。
二重特異性抗体
関連度
除菌ろ過試験最終ろ過試験
抗体医薬と同様に各ろ過工程の完全性確認で使われる。
ADC
関連度中〜高
抗体側ろ過試験製剤化前試験
抗体原薬の除菌ろ過と製剤化前ろ過の試験で使われる。
細胞・遺伝子治療
関連度中〜高
培地・工程液ろ過試験ベクター工程
培地・工程液・ベクター関連液の除菌ろ過の試験で関係する。
mRNA-LNP
関連度中〜高
バッファー除菌試験製剤後ろ過試験
バッファーや製剤後ろ過のフィルター健全性確認で使われる。

メーカー製品

自動フィルター完全性試験機(インテグリティテスター)6
SartoriusSartocheck 5 Plusバブルポイント・拡散流・圧力保持・水侵入に対応する自動完全性試験機。QRM支援、監査証跡、データ完全性保護を備え、防爆/VHP適合モデルもある。使用前後試験やPUPSIT構成で使われる。公式URL SartoriusSartocheck 4 plus Filter Testerバブルポイント・拡散流・多点拡散流・圧力保持・水侵入・水流に対応する自動試験機。シリンジフィルターから大型ハウジングまで幅広く対応し、PUPSITにも用いられる。公式URL Merck / MilliporeSigmaIntegritest 5ポータブルで全自動の完全性試験機。バブルポイント、拡散流、エンハンスドバブルポイント、HydroCorr(水ベース疎水膜試験)に対応し、OPC UA連携と21 CFR Part 11対応ソフトを備える。公式URL Merck / MilliporeSigmaIntegritest 4NMillipore Expressなどの除菌ろ過・ウイルス除去フィルターの完全性試験に用いる自動試験機。使用前後試験やPUPSIT構成に使われ、Emprove文書で支援される。公式URL PallPalltronic Flowstar V直接流量測定方式の自動完全性試験機。拡散流・バブルポイント・水侵入に対応し、21 CFR Part 11/ALCOA+準拠のデータ完全性とレシピ管理を備える。現在はCytivaが供給する。公式URL CytivaPalltronic Flowstar V(プラグ&プレイ)Palltronic Flowstar Vを中核とする完全性試験機。直接流量測定による高精度・高速試験と、タッチスクリーンによるレシピ管理・データ完全性対応を特徴とする。公式URL

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