Asimov が、Sidewinder Therapeutics と細胞株構築で提携した。2026年9月14日に発表した。固形がんを狙う4本鎖の二重特異性抗体が対象で、Asimov の CHO Edge システムで作った細胞株が、プラットフォームのフェドバッチ培養で10 g/L を超えるクローン力価に達したとしている。
数字の意味から先に書きます。ふつうのモノクローナル抗体でも、フェドバッチで 5〜8 g/L あたりが実用域の目安として語られます。4本鎖の二重特異性抗体で10 g/L 超というのは、その一段上に届いたという主張です。
4本鎖が難しい理由
二重特異性抗体は、違う2か所に同時に結合します。そのために重鎖を2種類、軽鎖を2種類、同じ細胞に作らせます。
すると組み合わせが増えます。重鎖どうしが同じもの同士でくっつく、軽鎖が相手を間違える。狙った1通り以外の分子が、同じ培養液の中にできてしまう。正しい組み合わせの割合を上げようとすると、たいてい発現量が落ちます。逆に量を稼ごうとすると、電荷異性体や誤対合の分離が精製の負担になります。
だから二重特異性抗体の細胞株構築は、「量」と「正しさ」を同時に押さえる作業になります。Sidewinder 共同創業者兼CEO の Eric Murphy 氏は「first-in-class の二重特異性ADCのパイプラインを持つ以上、高い発現量と安定した製品品質を同時に出せる細胞株構築のパートナーが必要だった」と述べました。
CHO Edge は何を組み合わせているか
Asimov が挙げている構成要素は4つです。GSノックアウトのCHO宿主、高活性のトランスポザーゼ、遺伝子パーツのライブラリ、そして Kernel という同社のAI遺伝子設計ソフトウェアです。
トランスポザーゼは、遺伝子をゲノムに放り込む酵素です。活性が高いほど組み込みの回数が増え、高発現のクローンが出る確率が上がります。GSノックアウト宿主はグルタミン合成酵素を欠いた細胞で、導入した遺伝子を持つ細胞だけが生き残る仕組みを作ります。どちらも新しい発想ではありません。新しいのは、遺伝子パーツの選び方を経験ではなくソフトウェアで決めているという部分です。
細胞株構築は、伝統的に数を打って当たりを探す工程でした。プロモーター、シグナル配列、鎖の比率。組み合わせは膨大で、試せる数には限りがあります。設計側を計算で絞れるなら、当たりに行き着くまでの回数が変わります。
Asimov 共同創業者兼CEO の Alec Nielsen 氏は「固形がんを狙う強力なアプローチである、彼らの新規二重特異性抗体を前に進められることをうれしく思う」とコメントしています。Sidewinder は2026年に 1億3,700万ドルのシリーズB を実施しており、二重特異性ADCの臨床入りを目指しています。
なお、この10 g/L がどの培養規模での値なのか、正しい組み合わせの割合がどれくらいか、契約金額とマイルストンの条件は、発表からは分かりません。プラットフォームの実力は、自分の分子で確かめるまで分からないという点は、この種の発表に共通します。
※ 本ページは公開情報(Asimov の発表、GlobeNewswire 配信)をもとにしたProglenth編集部による整理です。発言は発表資料の英文を編集部が訳したものです。仕様・性能の詳細は一次情報および各社の公式発表をご確認ください。