空間フィルタリングを使い、標識なしのラマンイメージングで40nmの分解能を得たとするプレプリントが bioRxiv に公開された。抄録によれば、蛍光の超解像顕微鏡は光の回折限界を越えて生物学の理解を進めてきましたが、それは蛍光標識があってこその能力です。一方、標識のいらないラマンイメージングは、分子そのものの化学的な情報が得られ、生体分子の同定から細胞の代謝マッピング、組織の病理評価まで使えるとされています。
「染めない」ことの価値
染色や標識には手間がかかるだけでなく、副作用があります。
- 標識した分子は、標識のせいで挙動が変わることがあります
- 染めた細胞は、その後の工程で製品として使えません
- 標識できるのは、あらかじめ狙いを決めたものだけです
3つ目が効きます。標識イメージングは「探すもの」を先に決める必要がありますが、ラマンはその場にある分子の種類を、決め打ちせずに読むことができます。脂質、タンパク質、核酸で異なるスペクトルが出るためです。
細胞治療の工程で非破壊の評価が求められるのも同じ理由です。測った細胞が製品として残るなら、限られた出発材料を減らさずに済みます。
分解能が上がると何が見えるか
ラマンの弱点は、信号が非常に弱く、空間分解能も光の波長に縛られることでした。40nmまで上がるなら、細胞小器官の内部や、粒子の一つひとつが対象に入ってきます。
製造側で思い当たる用途としては、次のようなものがあります。ただし、以下は当該研究で示された用途ではなく、無標識のラマンが一般にどこで使われうるかの整理です。
工程内で使うラマンのインライン測定は、組成の平均を追う用途です。分解能を上げた顕微ラマンは、それとは役割が違い、原因究明に向く測定になります。
なお、これはプレプリントで査読を経ていません。測定条件や適用範囲は抄録からは分かりません。
※ 本ページは公開情報(bioRxiv のプレプリント)をもとにしたProglenth編集部による整理です。プレプリントは査読を経ていません。手法・結果の詳細は一次情報をご確認ください。