CDMOの Lonza と、ナノポアシーケンシングの Oxford Nanopore Technologies が、GMP グレードの mRNA 品質管理(QC)を対象にした新しい試験のやり方を発表しました。業界メディア(Technology Networks ほか)の報道によると2026年5月に公表されたもので、ダイレクトRNAシーケンシングを QC に持ち込む取り組みです。
以下、性能・優位性は各社の公表値(第三者検証ではない自己申告)です。
mRNAのQCは「項目ごとにバラバラ」だった
mRNA医薬の品質は、一つの数字では語れません。狙った配列かどうか(同一性)、途中で切れていないか(完全性)、鎖の長さの分布、ポリA尾の長さ、そしてキャップがどれだけ付いているか(キャッピング効率)——こうした重要品質特性(CQA)を、それぞれ別の分析法で測るのが従来のやり方でした。手法が増えれば、必要な試料も時間も積み上がります。
今回のアプローチは、この「バラバラに測る」を一本化しにいったものです。ナノポアで RNA を1分子ずつ読み、そこに専用の機械学習ベースの解析を組み合わせることで、複数の CQA を 単一のワークフローで評価できるとしています。
ダイレクトRNAシーケンシングという選択
ここで使われているのが、ダイレクトRNAシーケンシングです。多くの配列解析は RNA をいったん相補的な DNA に変換してから読みますが、この手法はネイティブの RNA 分子をそのまま読み取ります。両社の説明では、変換を挟まないぶん、N1-メチルシュードウリジンのような化学修飾ヌクレオチド(mRNA医薬で広く使われる)の検出にも向くとされています。
報道によれば、Oxford Nanopore の GridION プラットフォームをベースに、規制対応の製造環境で使えるマルチアトリビュートな mRNA QC 法として市販されるのは今回が初めてだと位置づけられています。従来は数週間かかっていた「試料から結果まで」を、1日未満に縮めうるというのが訴求点です。
位置づけと留意点
キャッピングやポリA尾の評価は、それぞれキャッピング効率の測定やポリA尾の解析といった個別の観点で語られてきた領域で、核酸医薬の品質管理全体は核酸医薬のQCの側から見ると全体像がつかみやすくなります。今回のソリューションは、それらを1つの読み取りに束ねようとする点が新しく、既存の各分析を完全に置き換えるというより、QC の組み立て方に選択肢を増やすものと捉えるのが実態に近いはずです。
「1日未満」「初の市販」といった表現は各社の公表・報道に基づくもので、実際の適用範囲や分解能は対象 mRNA の性質や運用条件に左右されます。規制当局への受け入れ実績を含め、導入時には自社の要件に照らした確認が前提になります。