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pHメーター(pH計・pH電極)

pHメーターは、培地・フィード、培養液、精製工程のバッファーや中間体、製剤液などのpHを測定・記録する機器です。pHは細胞の増殖・生存率・代謝・産生性や、クロマトの結合・溶出、ウイルス不活化、製剤の安定性に直接影響するため、培養から精製・製剤まで一貫して管理されます。一般的にはガラス電極と参照電極を組み合わせた電位差測定で、温度の影響を温度補償で補正します。

pH測定校正・温度補償インライン/ラボデータ記録

用途・特徴

pHメーターは、測定部であるpH電極(センサー)と、電位を読み取って表示・記録する本体(トランスミッターまたはメーター)で構成されます。最も広く使われるのはガラス電極で、測定電極のガラス膜に生じる電位を参照電極との差として読み取ります。pHは温度依存性があるため、温度センサーを内蔵し温度補償をかけて測定するのが基本です。

用途によって機器の形態が分かれます。ラボでサンプルを採取して測るベンチトップ/ポータブル機、バイオリアクターや配管に挿し込んで連続測定するインライン(プロセス)電極、ディスポーザブル容器に組み込むシングルユースpH、そして電解液や参照液を持たない光学式pH(蛍光式)やISFET(半導体式)などがあります。形態が違っても、正しい校正・温度補償・メンテナンスがあって初めて測定値が信頼できる点は共通します。

Point
  • ガラス電極+参照電極による電位差測定が基本(温度補償が前提)
  • ラボ用ベンチトップ/ポータブルと、工程用インライン電極で形態が分かれる
  • バイオリアクターはSIP/CIP・オートクレーブに耐える電極が必要
  • シングルユースpH、光学式pH(蛍光式)、ISFETなどガラスレス選択肢もある
  • Memosens/Arcなどデジタル接続で、校正情報や履歴をセンサー側に保持できる
  • 2点/3点校正と定期メンテナンスが測定精度を左右する
  • GMP工程ではデータ完全性・監査証跡・21 CFR Part 11対応が問われる
  • オフラインpH(ラボ測定)でインラインの値を定期的に照合・補正する運用が一般的

使用方法

ラボ測定の基本的な流れです。インライン電極は、装着・滅菌後にコントローラーへ接続し、オフライン測定値と照合しながら運用します。

1校正用標準液(pH 4/7/10など)を準備する
2電極の保管状態・参照液・ガラス膜を点検する
3標準液で2点または3点校正を行う
4スロープ(感度)とオフセットを確認する
5測定サンプルを採取する
6サンプル温度を確認し温度補償を効かせる
7電極を浸して値が安定するまで待つ
8pH値と温度を読み取り記録する
9電極を洗浄し保管液に戻す
10結果を工程条件・規格と照合する
実際の運用は、サンプル種、測定形態(ラボ/インライン/シングルユース/光学式)、校正頻度、温度範囲、滅菌方法、データ連携、GMP対応によって変わります。インラインpHはドリフトが生じるため、オフラインpHでの定期照合と必要に応じた再校正・オフセット調整が重要です。

ベンチトップpHメーター と インライン(プロセス)pH電極の違いは?

どちらもpHを測りますが、ラボでサンプルを測るのか、工程に挿して連続で測るのかで設計・運用が大きく異なります。

結論

ベンチトップは「正確に測って照合する」ための機器、インラインは「工程pHを連続で見て制御する」ための機器です。多くの現場では両者を併用し、インラインの値をラボ測定で定期的に裏取りします。

測定形態

採取サンプルをバッチで測定

リアクター・配管に挿して連続測定

主な設置場所

ラボ、QC、アットライン

バイオリアクター、精製スキッド、配管

滅菌・耐性

通常は不要

SIP/CIP・オートクレーブ耐性が必要なことが多い

接続

本体に直結(BNCなど)

Memosens/Arcなどデジタル接続やアナログ伝送

校正

標準液で都度2点/3点校正しやすい

装着前に校正し、オフライン値で照合・補正

主な役割

精密測定、ロット確認、照合

工程pHの自動制御・連続記録

メンテ

電極洗浄・保管・定期交換

ドリフト管理、参照液・センサー寿命管理

注意点

サンプル温度・気泡・汚れ

ドリフト、被毒、滅菌劣化、設置位置

主な測定方式・電極タイプ

方式・タイプ内容特徴・適用
ガラス電極ガラス膜の電位を参照電極との差で測定最も標準的。培養・精製・製剤・QCで広く使われる
コンビネーション電極測定電極と参照電極を一体化ラボ用ベンチトップで一般的、取り回しがよい
プロセス用ガラス電極SIP/CIP・加圧に耐える工程用ガラス電極バイオリアクター、精製配管のインライン測定
シングルユースpHディスポーザブル容器に組み込むpHセンサーシングルユースバイオリアクター、洗浄不要
光学式pH(蛍光式)蛍光色素の応答からpHを算出ガラスレス、少量・シングルユース、参照液不要
ISFET(半導体式)電界効果トランジスタでpH応答を測定非ガラスで割れに強い、低導電率・有機物に強い構成あり

校正・温度補償・メンテナンスの要点

項目内容実務上のポイント
2点校正pH 7と4(または7と10)で校正測定範囲を挟む2点を選ぶのが基本
3点校正pH 4・7・10で校正広範囲を測る場合や精度要求が高い場合に有効
スロープ確認理論値に対する感度(%)を確認感度低下は電極劣化のサイン
オフセットゼロ点(pH7付近)のずれ参照電極の汚染・消耗で変化しやすい
温度補償温度によるpH応答の補正ATC(自動温度補償)で測定温度を反映
電極保管専用保管液で湿潤保管乾燥・純水保管はガラス膜・参照を劣化させる
洗浄・再生汚れ・被毒に応じた洗浄処理タンパク・油分などは応答遅延・ドリフトの原因
ドリフト管理経時的なずれの監視インラインはオフライン値で定期照合・再校正

データ連携・GMP対応

項目内容確認点
デジタルセンサーMemosens・Arcなどデジタル接続校正情報・履歴・診断をセンサー側に保持
コントローラー連携DCS/SCADA・培養制御系への接続アナログ伝送かデジタル通信か
データ出力USB/RS232、CSV、LIMS連携測定値・温度・校正記録の取り回し
監査証跡操作・校正・測定の記録誰が・いつ・何を、の追跡可能性
電子記録21 CFR Part 11/EU Annex 11電子署名、アクセス権、データ完全性
IQ/OQ・校正証明据付・稼働時適格性、校正証明GMP工程での導入・維持要件

選定ポイント

測定形態ラボ(ベンチトップ/ポータブル)か、インラインか、シングルユースか
電極方式ガラス電極、光学式pH、ISFETのどれが用途に合うか
滅菌・耐性SIP/CIP、オートクレーブ、加圧・温度範囲に耐えるか
測定範囲・精度対象pH範囲をカバーし、必要な精度・分解能を満たすか
温度補償ATC対応か、測定温度範囲が運用に合うか
校正運用2点/3点校正、標準液、校正頻度が運用しやすいか
接続・通信Memosens/Arc、アナログ伝送、DCS/SCADA連携の可否
データ管理CSV出力、LIMS連携、監査証跡、21 CFR Part 11対応の有無
メンテ性電極寿命、参照液、洗浄・再生、交換のしやすさ
消耗品供給電極、標準液、保管液、Oリング等の供給性
シングルユース適合使用するシングルユース容器・バッグと互換があるか
保守体制国内保守、校正サービス、部品供給、バリデーション支援

使用される工程

pHメーター・pH電極は、培養から精製・製剤・品質管理まで、pHが品質や工程成立に関わるほぼすべての工程で使われます。

培地・フィード調製

培地・フィード・バッファーの調製時にpHを目標値へ調整する。

主な用途
  • 調製時pH調整
  • ロット確認

本培養(バイオリアクター)

インライン電極で培養pHを連続測定し、酸・塩基やCO2で制御する。

主な用途
  • pH連続制御
  • オフライン照合

シードトレイン・拡大培養

フラスコ・バッグ・小型培養でpH状態を確認する。

主な用途
  • 拡大時のpH確認

灌流培養

供給培地・培養液・排出液のpHを管理する。

主な用途
  • 供給・排出液確認

ハーベスト・清澄化

回収液・清澄化後の中間体のpHを確認する。

主な用途
  • 中間体pH確認

クロマトグラフィー精製

結合・洗浄・溶出バッファーのpHを管理し、結合/溶出条件を成立させる。

主な用途
  • バッファーpH管理
  • 溶出条件

ウイルス不活化・低pH処理

低pH保持工程で目標pHと保持時間を厳密に管理・記録する。

主な用途
  • 低pH保持
  • 記録

UF/DF・濃縮

限外ろ過・透析ろ過でバッファー置換後のpHを確認する。

主な用途
  • バッファー置換確認

製剤化・原薬

製剤処方液・原薬・最終製剤のpHを管理し、安定性・規格に適合させる。

主な用途
  • 処方pH
  • 規格適合

品質管理・分析

工程液・製剤液のpHをQCで測定し、規格判定・記録に使う。

主な用途
  • 規格判定
  • QC測定

GMP製造・工程内管理

工程内管理、ロット間比較、逸脱調査、トレンド管理に使われる。

主な用途
  • 工程内管理
  • トレンド管理

使用されるモダリティー

pHは、培養・精製・製剤の成立に直結する基本パラメータのため、ほぼすべてのモダリティーで管理されます。

抗体医薬
関連度
CHO細胞本培養Protein A精製低pHウイルス不活化製剤化
培養pH制御、各バッファーのpH管理、低pH不活化、製剤pHまで一貫して使われる。
Fc融合・組換えタンパク質
関連度
CHOHEK293クロマト精製製剤化
培養・精製バッファー・製剤液のpH管理に使われる。
細胞治療
関連度中〜高
T細胞CAR-T洗浄・濃縮製剤液
培地・洗浄液・最終細胞懸濁液のpH確認に関係する。
遺伝子治療
関連度中〜高
HEK293AAV精製バッファー製剤化
ベクター製造細胞の培養、精製バッファー、製剤液のpH管理に使われる。
微生物発酵
関連度
大腸菌酵母発酵槽回収液
発酵pHのインライン制御と工程液確認に使われる。
mRNA-LNP
関連度
反応バッファーLNP製剤工程液
酵素反応・LNP形成・製剤液のpH管理で関係する。
低分子
関連度
反応液製剤液QC溶液
合成・製剤・分析工程のpH測定で関係する。

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