GLPとは?GMP・GCPとの違いをまとめて解説
GLP・GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →・GCPは、いずれも「Good ○○ Practice」という似た形の略語ですが、守備範囲はまったく異なります。ひとことで言えば、GLP非臨床試験の信頼性を担保するための基準。申請用のhERG試験などで求められる。は非臨床の安全性試験、GMPは製造、GCPは臨床試験の信頼性を担保する基準です。医薬品開発は段階ごとに目的が変わるため、それぞれに別の「信頼性の物差し」が用意されているわけです。

この3つを混同すると、「研究用の試薬でGMPが要るのか」「探索段階の毒性試験はGLPでやるべきか」といった問いに正しく答えられません。本稿ではGLPを軸に、GMP・GCPとの違いを開発の流れに沿って整理します。
GLPとは
GLP(Good Laboratory Practice、優良試験所基準)は、医薬品などの承認申請に用いる非臨床の安全性試験について、その実施・記録・報告の信頼性を担保するための基準です。対象になるのは主に毒性試験や安全性薬理心血管・中枢神経・呼吸への急な影響を、臓器毒性とは別枠で見る評価(コア・バッテリー)。試験といった、ヒトに投与する前の安全性を評価する試験です。
GLPが求めるのは、「試験が計画どおりに行われ、得られたデータが記録どおりに再構築できること」です。そのために、次のような体制・記録が要求されます。
- 試験責任者(Study Director):試験全体を統括し責任を負う
- 信頼性保証部門(QAU):試験の実施が計画・手順に沿っているかを独立に点検する
- 標準操作手順作業の手順を定めた文書。品質システムの要素を具体化し、査察でも運用が確認される。(SOP作業の手順を定めた文書。品質システムの要素を具体化し、査察でも運用が確認される。):試験操作を文書で定める
- 生データと最終報告書の保存(アーカイブ):後から検証できるように原本を保管する
日本では医薬品GLP省令、国際的にはOECDのGLP原則、米国では21 CFR Part 58が枠組みを与えます。
GLPは「試験結果が科学的に正しいこと」そのものを保証する制度ではありません。試験が計画どおり行われ、データが記録から再構築できるという“信頼性”を担保する枠組みです。この発想はGMPのデータインテグリティと共通します。
GMP・GCPとの守備範囲の違い
3つの基準は、医薬品開発のどの局面の信頼性を守るかで分かれます。
- GLP:非臨床の安全性試験データの信頼性(承認申請用の毒性・安全性薬理など)
- GMP:医薬品の製造品質。決めたとおりに、毎回同じ品質で作られることを保証する(→GMPとは?、GMP製造の管理項目)
- GCP:臨床試験(治験)の実施。被験者の人権・安全の保護と、臨床データの信頼性を担保する
| 基準 | 対象 | 主な目的 | 代表的な適用局面 |
|---|---|---|---|
| GLP | 非臨床の安全性試験 | 安全性データの信頼性 | 毒性試験・安全性薬理 |
| GMP | 製造 | 製品品質の一貫性 | 治験薬臨床試験(治験)において被験者に投与するために製造された、未承認または既承認の医薬品のこと。・商用製品の製造 |
| GCP | 臨床試験 | 被験者保護とデータ信頼性 | 第I〜III相治験 |
GCPの国際的な枠組みはICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。 E6が与えます。臨床試験では、科学的なデータの質だけでなく、インフォームド・コンセントや倫理審査といった被験者保護が基準の中核に置かれる点が、GLP・GMPと大きく異なります。
なぜ開発段階ごとに基準が分かれるのか
医薬品開発は、探索研究 → 非臨床試験 → 治験薬の製造 → 臨床試験 → 商用製造、という流れで進みます。それぞれの段階で「守りたいもの」が違うため、基準も分かれています。
- 非臨床の安全性試験で「ヒトに進んでよいか」を判断する材料の信頼性を守るのが GLP
- 治験薬や商用製品が意図した品質で作られていることを守るのが GMP
- 治験に参加する被験者を守り、臨床データの信頼性を守るのが GCP
同じ開発でも、目的が変われば物差しが変わる――これが3基準の関係を理解する軸になります。なお、探索段階のスクリーニングや作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。研究のような研究は、GLPの対象(規制申請用の安全性試験)には通常含まれません。GLPはあくまで、申請に用いる安全性データの信頼性を担保するための制度です。
GLP・GMP・GCPは「非臨床の安全性 → 製造 → 臨床」という開発の局面に対応します。どれか一つが上位というわけではなく、守る対象が違う並列の基準だと捉えるのが正確です。
よくある誤解
3基準をめぐっては、実務でも取り違えが起こりがちです。
第一に、「GLP=GMP」という混同です。GLPは試験(データ)の信頼性、GMPは製造(品質)の保証であり、対象が別です。GLP試験施設だからといってGMP製造ができるわけではありません。
第二に、「研究用試薬にもGMPが要る」という思い込みです。探索研究の試薬にGMPは求められませんが、ヒトに投与する治験薬の製造にはGMPが必要です。どの段階の“もの”かで要求が変わります。
第三に、「GLPグレード」という表現の扱いです。市販品に付される「GLP対応」などの表示医薬品の容器・包装に付ける識別情報や使用上の注意等の表示のことで、治験薬では被験者番号や割り付け情報を含む特別な規制が適用される。は、その製品がGLP試験で使える品質管理下にあることを示す売り手側の説明であって、GLPという制度そのものの適合を保証するものではありません。試験の適合性は、あくまで試験施設側の体制で担保されます。
まとめ
GLPは非臨床の安全性試験、GMPは製造、GCPは臨床試験の信頼性を担保する基準で、医薬品開発の各局面に対応して並立しています。共通するのは、「決めたとおりに行い、記録から再構築できるようにする」という信頼性の思想です。
製造側の具体はGMPとは?とGMP製造の管理項目で、非臨床安全性試験そのものの中身は本サイトの研究・非臨床の記事群で扱っています。基準の“守備範囲”を押さえておくと、開発のどの段階で何が求められるかを取り違えずに済みます。
参考文献
- OECD, Principles of Good Laboratory Practice (GLP)
- PMDA(医薬品医療機器総合機構), GLP・GCP等の基準関連情報
- FDA, 21 CFR Part 58 — Good Laboratory Practice for Nonclinical Laboratory Studies
- ICH E6, Good Clinical Practice (GCP)
- ICH Q7原薬(API)製造へのGMP適用を国際調和したICHの指針。出発物質の定義や工程管理、バリデーションなどを示す。/Q10, Quality Guidelines