イタリアの国立研究機関ENEAのAmbricoらは、ゆっくり回る穿孔ドラム(穴の開いたかご)を備えたバイオリアクターでCHO細胞の流加培養を行い、モノクローナル抗体の力価1.3 ± 0.09 g/Lを得たと、Cytotechnology 2026年78巻で報告した。
同じ研究で比べた従来型の撹拌槽(stirred-tank)のほぼ2倍にあたり、GEN(Genetic Engineering & Biotechnology News)が8月上旬に取り上げた。
液面の取り方で、低速回転でも気液間のガス交換
装置は、横置きの槽に、ゆっくり回転する穿孔ドラムと、直交する2枚のパドルを組み合わせた構造だ。もとは排水処理で細菌を増やすために作られた試作機で、それを抗体生産に転用した。液がヘッドスペース(液面上の気相)に触れる面積を増やし、回転が遅くても気液間のガス交換を成り立たせる狙いだ。
撹拌槽では、酸素を増やそうとして回転や通気を強めるほど、CHO細胞に害を及ぼすせん断応力が高まる(溶存酸素とkLa、せん断と細胞損傷)。
kLaは撹拌槽より高く、先端速度ははるかに低い値
酸素移動容量係数kLaは0.1087 min⁻¹で撹拌槽より高く、先端速度(tip speed)ははるかに低い値だった。溶存酸素は10日間の培養を通じて約40%で安定した。最大生細胞密度は2.55×10⁷ cells/mL、10日目の生存率は約91.7%だ。
実務の確認ポイント比較条件とスケールアップにおける留意点
比較した撹拌槽の力価は、1.3 g/Lのほぼ半分だ。報じられたのは試作機1台のラボ規模の結果で、比べた撹拌槽が回転数、通気、培地の条件をどこまで詰めたものかを確かめることになる。糖鎖や凝集体といった品質特性、ドラムを大型化したときの挙動、シングルユースの槽に載せられるかも確認が要る。
※ 本ページは公開情報(GENの報道、Cytotechnology 2026年78巻の論文情報)をもとにしたProglenth編集部による整理です。論文は要旨の範囲で確認しており、比較した撹拌槽の運転条件や装置の規模は一次情報でご確認ください。