コールドチェーン機器の Single Use Support(オーストリア・クーフシュタイン)が、次世代のブラスト凍結・解凍プラットフォーム RoSS.BLST を発表しました。BioPharma APAC や Contract Pharma の報道によると2026年6月中旬に公表されたもので、高価値なバイオ医薬品のバルク原薬(ドラッグサブスタンス)を凍結・解凍するための制御速度型ブラストフリーザーです。
以下、性能値はメーカーの公表値(第三者検証ではない自己申告)です。
なぜバルク原薬を「凍らせる」のか
意外に見えるかもしれませんが、抗体などのバイオ医薬では、精製し終えた原薬(DS)をいったん凍結して保管・輸送し、後で解凍してから製剤(DP)にする、という流れがよく取られます。凍らせてしまえば分解反応がほぼ止まるため、原薬(DS)と製剤(DP)の製造拠点やスケジュールを切り離して動かせるからです。原薬工場と充填工場が別、というケースでは特に重宝します。
ただ、凍結・解凍はタンパク質にとって過酷な工程でもあります。氷ができていく過程で、まだ凍っていない液の中に溶質が濃縮される「凍結濃縮」が起き、局所的な高濃度やpHの偏りが凝集を招くことがあります。氷と液の界面もタンパク質を傷めうる要因です。だからこそ、どれだけ均一に・狙った速度で凍らせ、また解かすかが品質を左右します。凍結解凍のリスクの詳細は原薬の凍結・解凍の側から整理できます。
RoSS.BLSTが狙うのは「速さ」と「均一さ」
RoSS.BLST は、この「制御された凍結・解凍」を規模を保ったまま行うことを狙った装置です。公表される主な特徴は次のとおりです。
- レシピ駆動:-80℃までの凍結プロトコルをレシピとして設定・再現でき、21 CFR Part 11(電子記録・電子署名)に準拠する。
- 温度の均一化:気流管理により2.5秒ごとに庫内の空気を一巡させ、庫内の温度分布を均一に近づける。
- 処理量:1バッチあたり最大192本の2Lボトルに対応。同じ設置面積の比較対象に対し、有効庫内容量を+30%とする。
- 降温:Siemens 制御システムと直接冷却方式で、目標温度までの降温を高速化するとしている。
- 設計:ステンレス/衛生設計で、自然冷媒を採用。
温度が均一で降温が速いほど、凍結濃縮の局所ムラやバッチ間のばらつきを抑えやすくなる、というのが訴求の骨子です。
位置づけと留意点
原薬を凍らせて運ぶ工程は、原薬と製剤の間をつなぐ縁の下の力持ちで、細胞・製品のコールドチェーンとも地続きです。RoSS.BLST は同社のエンドツーエンドのコールドチェーン群(保管用の超低温フリーザー RoSS.ULTF など)と連携できるとされ、凍結から保管・輸送・解凍までを一つの系でそろえる構想の一部と位置づけられています。
「+30%」「2.5秒ごとの循環」といった数値はメーカーの公表値であり、実際の温度均一性や凍結濃縮の抑制効果は、対象の製剤・容器・充填量や運用条件で変わります。導入時には自社のバルク原薬での凍結解凍データに照らした確認が前提になります。