Drug Discovery & Development の報道によれば、米ベイエリアの Verseon は、物理法則に基づく計算によって低分子医薬の設計を行う立場をとっている。同社が計算プラットフォームでの分子設計を始めたのは2002年で、現在「AI創薬企業」と呼ばれる Recursion や Exscientia などの多くが登場するより前、大規模言語モデルの登場からは20年以上前にあたる。
「学習データの外」という論点
機械学習による分子設計は、既知の化合物と活性のデータから規則を学ぶ。既存の化学空間の内側を効率よく探すことには強い。一方で、学習データに存在しない骨格に対しては外挿になる。
物理ベースの計算は、この前提が違う。分子と標的タンパク質の相互作用を、力場や自由エネルギーの計算として扱う。既知データの有無に依存しないという理屈になる。
ただし、こちらにも制約がある。
- 計算コスト:厳密な自由エネルギー計算は重く、扱える化合物数が限られる
- 力場の精度:計算の前提となるパラメータ自体が近似であり、そこに誤差が入る
- 標的構造への依存:タンパク質の立体構造と、その柔軟性の扱いが結果を左右する
実務では、この2つは対立というより役割分担として使われることが多い。機械学習で候補を絞り、物理計算で有望なものを詰める、といった組み合わせである。
製造の視点から
どの手法で設計されたかにかかわらず、設計の段階で製造性が織り込まれているかは後工程に効く。低分子であれば合成経路の段数と原料の入手性、結晶多形の出やすさ、溶解性。これらは臨床が進んでから直そうとすると高くつく。
計算による設計を掲げる企業を評価する際、活性の予測精度と同じくらい、作れる分子を出してくるかを見る意味がある。
※ 本ページは公開情報(Drug Discovery & Development の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。手法の詳細・実績は一次情報をご確認ください。