Labiotech のポッドキャストで、Therorna のCEOが環状RNA(circular RNA)の科学について語った。あわせて、中国で築かれつつあるものに欧米の製薬企業が十分な注意を払ってこなかった理由にも触れている。
なお本記事の出典はポッドキャスト(対話形式のコンテンツ)である。発言は同社の立場に基づくものとして読む必要がある。ここでは技術的な文脈の整理にとどめる。
環状RNAが狙う性質
一般的なmRNAは直線状で、5'末端にキャップ、3'末端にポリA鎖を持つ。この両端は翻訳に必要である一方、分解の入口にもなる。細胞内のエキソヌクレアーゼは末端から削っていくため、末端を持つことが寿命の制約につながる。
環状RNAは、末端を持たない。閉じた環になっているため、末端依存の分解経路の影響を受けにくい。同じ量を投与したときに、より長く発現が続くことが期待される、という理屈になる。
一方で、末端が無いということは通常のキャップ依存的な翻訳開始が使えないことを意味する。IRES(内部リボソーム進入部位)などの配列を組み込んで翻訳を開始させる設計が必要になる。ここが設計上の要点であり、翻訳効率をどこまで出せるかが実用性を分ける。
製造の側から見た論点
環状RNAの製造では、環化をどう成立させ、どう確かめるかが固有の課題になる。
- 環化の効率:環化しきれなかった直線状RNAが残る
- 副生成物:意図しない連結(コンカテマー)や、内部で切れた断片
- 分析:環状と直線状を分けて定量する必要がある。通常の電気泳動では移動度が構造に依存するため、解釈に注意が要る
原料側の設計も関わってくる。線状DNAや閉端直鎖状DNAといった鋳型の形態が、転写産物の性状と不純物のプロファイルに影響する。核酸医薬では、鋳型の質がそのまま製品の質に伝播するという構図が繰り返し現れる。
地域差という論点
技術の優劣とは別に、どこで開発が進んでいるかは実務的な意味を持つ。原材料の調達先、受託製造の選択肢、そして規制対応の経路が、開発拠点によって変わるためである。
環状RNAに限らず、核酸医薬の製造基盤がどの地域に厚く積み上がっているかは、委託先を選ぶ段階で確認する価値がある。
※ 本ページは公開情報(Labiotech のポッドキャスト)をもとにしたProglenth編集部による整理です。同社の技術・開発段階の詳細は一次情報をご確認ください。