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スピナーフラスコ

スピナーフラスコは、内部の撹拌子やインペラーを回転させながら、細胞やマイクロキャリアを懸濁状態で培養するための小型培養容器です。浮遊細胞の培養、マイクロキャリアを使った接着細胞の拡大培養、3D細胞凝集体や幹細胞、ワクチン用細胞基材の検討などで使われます。

小型撹拌培養マイクロキャリア浮遊細胞3D培養

用途・特徴

スピナーフラスコは、少量スケールで撹拌培養を行うために使われます。内部のパドルや撹拌子を磁気スターラーで回転させ、培地中の細胞、マイクロキャリア、細胞凝集体を均一に懸濁します。これにより、Tフラスコのような静置培養よりも混合性が高く、マイクロキャリア上の接着細胞を拡大しやすくなります。

一方で、撹拌によるせん断、気泡、マイクロキャリア同士の衝突、細胞凝集、沈降、サンプリングばらつきには注意が必要です。

Point
  • 小スケールで撹拌培養を行うための培養容器
  • 浮遊細胞、マイクロキャリア培養、3D培養、幹細胞培養で使われる
  • Tフラスコより混合性が高い
  • シェイクフラスコより撹拌条件を意識しやすい
  • マイクロキャリア上の接着細胞拡大に使われることがある
  • 撹拌速度、液量、マイクロキャリア濃度、せん断に注意が必要
  • ベンチトップバイオリアクターへ移る前の小型検討に使いやすい

使用方法

基本的には、スピナーフラスコに培地、細胞、必要に応じてマイクロキャリアを入れ、磁気スターラーや専用撹拌台で撹拌しながら培養します。

1スピナーフラスコを準備する
2培地を入れる
3必要に応じてマイクロキャリアを水和・滅菌・平衡化する
4細胞懸濁液を添加する
5撹拌速度を設定する
6CO2インキュベーター内または温調環境下で培養する
7定期的にサンプリングする
8細胞数、生存率、接着状態、凝集、代謝を確認する
9必要に応じて培地交換、フィード、継代、スケールアップを行う
10シェイクフラスコ、小型バイオリアクター、または本培養条件へ展開する
実際の条件は、細胞種、接着/浮遊、マイクロキャリア有無、撹拌速度、培地量、容器容量、CO2環境、温度、せん断耐性、スケールアップ先によって変わります。

Tフラスコとの違いは?

Tフラスコとスピナーフラスコは、どちらも小スケール培養に使われますが、培養方式が異なります。

結論

Tフラスコは「静置で細胞を育てる容器」、スピナーフラスコは「撹拌しながら細胞やマイクロキャリアを育てる容器」と考えると整理しやすくなります。

培養方式

静置培養

撹拌培養

主な対象

接着細胞、初期回復、継代培養

浮遊細胞、マイクロキャリア培養

混合

ほぼなし

内部撹拌で混合する

酸素供給

培地表面からの拡散

撹拌による混合で改善しやすい

スケールアップ

面積拡大が中心

撹拌培養への橋渡しになる

主な用途

回復培養、クローン培養、接着培養

小型撹拌培養、マイクロキャリア検討

注意点

培養面積、コンフルエンス

撹拌速度、せん断、沈降、泡

シェイクフラスコとの違いは?

項目シェイクフラスコスピナーフラスコ
混合方式フラスコ全体を振とう内部の撹拌子・インペラーで撹拌
必要装置CO2シェーカー、振とう機磁気スターラー、撹拌台、CO2環境
主な対象浮遊CHO、HEK293、微生物マイクロキャリア、接着細胞、浮遊細胞
酸素移動振とう条件と液量に依存撹拌条件とヘッドスペースに依存
せん断振とう速度で変化インペラー条件で変化
操作性シードトレインで標準的条件検討・マイクロキャリアで使いやすい
スケールアップシェーカー→SUB/リアクター撹拌槽型リアクターへ接続しやすい
注意点振とう径、液量、キャップ通気撹拌速度、インペラー形状、沈降

ベンチトップバイオリアクターとの違いは?

項目スピナーフラスコベンチトップバイオリアクター
制御性低〜中高い
pH制御基本なしあり
DO制御基本なしあり
温度制御インキュベーターや外部環境依存ジャケットやヒーターで制御
撹拌簡易撹拌インペラー、撹拌制御
ガス供給ヘッドスペース中心スパージ、ヘッドスペース、MFCなど
データ取得限定的pH、DO、温度、撹拌、ガスなど記録可能
向く用途初期検討、マイクロキャリア試験条件開発、スケールアップ、工程検討
注意点再現性・制御性に限界装置準備・コスト・操作が重い

マイクロキャリア培養との関係

項目内容
マイクロキャリア接着細胞が付着する小さな担体
スピナーフラスコの役割マイクロキャリアを均一に懸濁しながら培養する
向く細胞Vero細胞、MSC、iPS由来細胞、接着HEK293など
注意点撹拌速度、接着効率、担体濃度、せん断、凝集
スケールアップ先撹拌槽型バイオリアクター、SUB、マイクロキャリア培養槽

主なタイプ

タイプ内容向く用途
ガラス製スピナーフラスコオートクレーブして再利用できるガラス容器研究、条件検討、繰り返し使用
ディスポーザブルスピナーフラスコ滅菌済み・使い捨てのプラスチック容器コンタミ低減、準備時間短縮
サイドアーム付きスピナーフラスコサンプリングや添加がしやすい構造長期培養、マイクロキャリア培養
パドル型インペラー幅広い撹拌に使われる細胞懸濁、マイクロキャリア培養
磁気撹拌型磁気スターラーで撹拌する小型・簡易培養
小容量タイプ125〜250 mL程度初期条件検討
中容量タイプ500 mL〜1 L程度小型スケールアップ
大容量タイプ2〜5 L程度研究・開発スケールの拡大培養
マイクロキャリア対応型底形状やインペラーで沈降を抑える接着細胞の撹拌培養

選定ポイント

細胞タイプ浮遊細胞か、接着細胞か、幹細胞か
マイクロキャリア使用するか、種類・濃度・沈降性はどうか
容量125 mL、250 mL、500 mL、1 L、3 Lなど
作業容量容器容量に対して実際に入れる培地量
材質ガラス製か、ディスポーザブルプラスチックか
滅菌方法オートクレーブ、滅菌済み使い捨て、組立作業の有無
撹拌方式パドル、磁気撹拌子、専用スターラーに対応するか
撹拌速度細胞沈降を防ぎつつ、せん断を抑えられるか
サンプリングサイドアーム、ポート、無菌サンプリングのしやすさ
ガス交換キャップ構造、ヘッドスペース、CO2環境への適合
コンタミ対策開放操作が多くないか、ディスポーザブル化できるか
スケールアップベンチトップバイオリアクターやSUBへ条件を展開できるか
供給安定性消耗品、スペアパーツ、国内入手性、ロット安定性

使用される工程

スピナーフラスコは、小型の撹拌培養が必要な工程で広く使われます。

細胞株開発・クローン選抜

候補クローンの小型拡大、浮遊培養適応確認に使われる。

主な用途
  • クローン拡大

セルバンク

評価用細胞や保存細胞の再立ち上げ後の小型拡大に使われる場合がある。

主な用途
  • 再立ち上げ

シードトレイン

Tフラスコやプレートから撹拌培養へ移る段階で使われる。

主な用途
  • 撹拌移行

融解・回復培養

融解後の細胞を回復させた後、撹拌培養へ移行する場合に関係する。

主な用途
  • 回復後拡大

段階的な拡大培養

125 mL、250 mL、500 mLなどで段階的に培養量を増やす。

主な用途
  • スケールアップ

小型培養装置への接続

ベンチトップバイオリアクターやSUBへ移る前の条件確認に使われる。

主な用途
  • 条件確認

マイクロキャリア培養

接着細胞をマイクロキャリア上で増やす小型検討に使われる。

主な用途
  • マイクロキャリア

細胞治療・再生医療

MSC、iPS由来細胞、オルガノイド、3D培養の検討で使われる。

主な用途
  • 3D培養

ワクチン・ウイルスベクター

Vero、HEK293、Sf9などの接着/浮遊培養検討に使われる。

主な用途
  • 細胞基材

プロセス開発

撹拌速度、細胞密度、培地、マイクロキャリア条件の検討に使われる。

主な用途
  • 条件検討

使用されるモダリティー

スピナーフラスコは、接着細胞やマイクロキャリア培養が関係する多くのモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
CHO細胞初期拡大撹拌培養検討
現在はシェイクフラスコ中心だが、小型撹拌検討で使われる場合がある。
ADC
関連度
抗体原薬用CHO細胞
抗体部分の産生細胞培養で抗体医薬と同様に関係する。
二重特異性抗体
関連度
CHO細胞候補クローン拡大
候補クローンの小型拡大で使われる場合がある。
Fc融合タンパク質・組換えタンパク質
関連度
CHOHEK293浮遊/接着培養
小型撹拌培養や条件検討で関係する。
AAV
関連度中〜高
HEK293Sf9Producer Cell
接着HEK293やマイクロキャリア培養の検討で使われる。
レンチウイルス
関連度
HEK293TProducer Cell
接着細胞培養や小型撹拌条件検討で関係する。
ワクチン
関連度
Vero細胞MDCK細胞細胞基材
マイクロキャリア培養や接着細胞スケールアップで使われる。
細胞治療
関連度中〜高
MSCT細胞・NK細胞幹細胞
MSCや3D培養、マイクロキャリア拡大の検討で使われる。
iPS細胞・幹細胞由来製品
関連度中〜高
iPS由来細胞オルガノイド分化細胞
3D凝集体、マイクロキャリア、撹拌培養検討で使われる。
遺伝子編集
関連度
編集細胞の小型拡大
編集後細胞や候補クローンの拡大検討で関係する。
mRNA-LNP
関連度低〜中
評価細胞原料細胞
製造工程本体よりも評価細胞培養で関係する。
微生物発酵
関連度低〜中
通常はシェイクフラスコや発酵槽
微生物ではスピナーフラスコは主流ではない。
低分子医薬品
関連度低〜中
細胞アッセイ3D培養モデル
製造工程よりも評価系で使われる。

メーカー製品

スピナーフラスコ8
CorningCorning Disposable Spinner Flasks滅菌済みディスポーザブルスピナーフラスコ。パドルと一体型磁石を備え、組立・洗浄・再組立の手間を減らせる。公式URL CorningCorning Glass Spinner Flasks再利用可能なガラス製スピナーフラスコ。オートクレーブ可能で、小型撹拌培養やマイクロキャリア検討に使われる。公式URL DWK Life Sciences / WHEATONWHEATON CELSTIR Double Sidearm Spinner Flaskホウケイ酸ガラス製のスピナーフラスコ。調整可能なパドルブレードインペラーを備え、磁気スターラー上で浮遊細胞培養に使われる。公式URL DWK Life Sciences / WHEATONWHEATON MAGNA FLEX Spinner Flasks主にマイクロキャリア培養向けに設計されたガラス製スピナーフラスコ。接着細胞の撹拌培養検討で使われる。公式URL Bellco GlassSpinner Flasksガラス製スピナーフラスコを展開。小型細胞培養、マイクロキャリア培養、研究用途で使われる。公式URL Chemglass Life SciencesSpinner Flasksガラス製スピナーフラスコや培養関連ガラス器具を展開。研究・細胞培養用途で使われる。公式URL Techne / Bibby ScientificSpinner Flask Systems小型培養や撹拌培養用途のスピナーフラスコ関連製品。製品流通状況は代理店確認が必要。公式URL ABLE Corporation & BiottSpinner Flask / Small Culture Vessels小型培養・撹拌培養関連製品を扱う国内系メーカー。細胞培養条件検討や小型培養用途で比較候補になる。公式URL

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