分離・回収装置

超遠心分離機(密度勾配)

密度勾配超遠心は、塩化セシウムやイオジキサノールで形成した密度勾配中に試料を沈降させ、粒子をその浮遊密度ごとに分離する分取用装置です。AAVベクターの空カプシド・実カプシド分離や各種ウイルス精製に使われ、サイズが近くても密度差があれば分けられるのが特長です。スイングバケット・固定角・連続フロー型があり、回転数・処理容量・GMP対応が主な選定軸になります。

密度勾配AAV空殻実殻CsCl/イオジキサノール分取超遠心ウイルス精製
分類
分離・回収装置
主な用途
密度勾配 / AAV空殻実殻 / CsCl/イオジキサノール / 分取超遠心 / ウイルス精製
関連モダリティ
AAV(遺伝子治療) / ウイルスベクター(レンチ・アデノ) / ワクチン(ウイルス粒子) / エクソソーム・細胞外小胞 / 核酸(プラスミド等)
代表メーカー
Beckman Coulter Life Sciences・Thermo Fisher Scientific・Eppendorf Himac Technologies・Alfa Wassermann Separation Technologies ほか計5社
関連キーワード
密度勾配超遠心 / AAV 空殻 実殻 分離 / 塩化セシウム CsCl 勾配 / イオジキサノール OptiPrep / スイングローター 固定角 / 連続フロー超遠心

用途・特徴

密度勾配超遠心は、塩化セシウム(CsCl)やイオジキサノール(OptiPrep等)で形成した密度勾配の中に試料をかけ、各粒子を自身の浮遊密度に等しい位置(等密度点)まで沈降させて分離する装置です。AAVベクターでは、ゲノムを内包する実カプシド(フル)と内包しない空カプシド(エンプティ)で粒子密度が異なるため、勾配中で帯状に分かれます。サイズではなく密度で分けるため、サイズが近い空殻・実殻の分取に向き、分取(preparative)スケールで純度の高い実カプシド画分を回収できます。

選定軸は、最高回転数(および対応する相対遠心力RCF/k-factor)、ローター方式、処理容量、そしてGMP対応です。ローターはスイングバケット(界面が水平になり等密度バンドのフラクション回収が容易)、固定角(沈降は速いが壁効果が出る)、そして大容量を連続供給で処理する連続フロー型に大別されます。AAVの分取では分解能と回収性からスイングローター+ステップ/連続勾配が定番で、大量処理やワクチン精製では連続フロー型が用いられます。

工程設計では、勾配媒体の選択(CsClは高分解能だが浸透圧・除去工程が必要、イオジキサノールは等浸透圧で粒子に穏やかだが分解能・分取性で運用差)、勾配の作り方(ステップ/連続)、ラン時間・温度、バンドの可視化と分画回収、回収後の脱塩・バッファー交換(透析/限外ろ過)までを一連で考えます。スループットや無菌性が要る本生産では連続クロマト等への置き換え・併用も検討されますが、空・実分離の分解能では密度勾配超遠心が基準法として残っています。

Point
  • 密度勾配(CsCl/イオジキサノール)でAAVの空殻・実殻を密度差で分離・分取する
  • 等密度点まで沈降させる平衡法で、サイズが近い粒子も密度差で分けられる
  • スイングバケットは水平バンドで分画回収しやすく、分取AAVの定番
  • 固定角ローターは沈降が速いが壁効果があり、用途で使い分ける
  • 連続フロー型は大容量・連続供給でワクチンや大規模ウイルス精製に対応
  • 回転数・RCF(k-factor)・処理容量・温度制御が分解能とラン時間を左右する
  • CsClは高分解能だが浸透圧負荷と除去工程、イオジキサノールは等浸透圧で穏やか
  • 回収後は透析・限外ろ過(TFF)で勾配媒体除去とバッファー交換が必要

使用方法

ここではAAVベクターの空殻/実殻分離を想定したイオジキサノール(またはCsCl)密度勾配超遠心の基本的な流れを示します。実際の勾配組成・回転数・時間は装置・ローター・試料により異なります。

1目的(空実分離/ウイルス精製)と勾配媒体・ローター方式を選定する
2密度の異なる勾配液(ステップ/連続)を遠心管に重層調製する
3清澄化・濃縮済みの試料を勾配上に重層しチューブを封入する
4ローターへ装填し、規定回転数で平衡(等密度)まで超遠心する
5形成された実殻バンドを確認し、分画回収する
6回収画分を透析・限外ろ過(TFF)で脱塩・バッファー交換する
勾配媒体(CsClかイオジキサノール)、勾配の形(ステップ/連続)、回転数・RCF、温度、ラン時間、ローター容量、回収後の媒体除去工程によって分解能・回収率・処理量は変わります。GMP生産では密閉性・洗浄滅菌・記録の要件も加わります。

掲載情報の確認日:2026年7月(メーカー公開情報をもとに編集部が確認。最新・正確な仕様は各社公式をご確認ください)