低分子基礎知識・品質管理

原薬由来ニトロソアミン(NDSRI)とは? (Q)SAR予測と許容摂取量の考え方

医薬品のニトロソアミン問題は、2018年に降圧薬バルサルタン(サルタン系)の原薬から強い発がん性を持つN-ニトロソジメチルアミン代表的なニトロソアミンの一種で発がん性が知られる。バルサルタン原薬から検出されニトロソアミン問題の発端となった。(NDMA)が検出されたことで表面化しました。当初の焦点は、合成試薬や汚染溶媒に由来する小分子のニトロソアミンDNA反応性が懸念される不純物の一種。試験の設計しだいで結果が大きく変わることが指摘されている。でしたが、いま論点は原薬(API)そのものの構造から生じる「NDSRI」へと移っています。ICH M7医薬品中のDNA反応性(変異原性)不純物を評価・管理し、発がんリスクを抑えるためのガイドライン。やTTC・(Q)SAR化学構造から毒性などの性質を予測する手法。構造アラートによる変異原性の評価に使う。といった管理の土台は 遺伝毒性不純物とニトロソアミン(ICH M7) にゆずり、本稿はその先――原薬由来ニトロソアミンに固有の難しさと、許容摂取量特定の不純物について、生涯摂取しても許容できるとされる1日あたりの量。発がん性データなどから設定する。の決め方に踏み込みます。

#品質管理#ニトロソアミン#NDSRI#QSAR
原薬由来ニトロソアミン(NDSRI)とは? (Q)SAR予測と許容摂取量の考え方
この記事の要点
  • NDSRIは原薬中の二級アミン等がニトロソ化されて生じる、その医薬品に固有のニトロソアミンで、標準品が乏しく構造ごとに発がん性が異なります。
  • 許容摂取量(AI)は化合物固有データからの外挿を最上位に、read-acrossやCPCA(構造から力価カテゴリーとAIを割り当てる枠組み)で保守的に決めます。
  • ICH M7が求める相補的な(Q)SARの2手法(統計ベースとルールベース)と高感度LC-MS/MSが、予測と実測の両輪になります。

NDSRI(原薬由来ニトロソアミン)とは

NDSRI(Nitrosamine Drug Substance培養・精製を経て得られる抗体そのもの。製剤にする前の有効成分で、製剤と区別して管理される。-Related Impurity)とは、原薬分子が持つ二級アミン等の部位が、製造・保存の過程で亜硝酸化剤(ニトロソ化剤)と反応してニトロソ化され、その医薬品に固有の構造として生じるニトロソアミンです。NDMAやN-ニトロソジエチルアミンニトロソアミンの一種で、強い発がん性が知られる。サルタン系原薬などから検出された不純物。(NDEA)のような小分子ニトロソアミンが合成試薬や汚染溶媒に由来するのに対し、NDSRI原薬分子そのものがニトロソ化されて生じるニトロソアミン。難揮発性で、LC-MS/MSなどで定量する。原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。そのものの骨格を構造に含む点が決定的に異なります。

難しさは主に三つあります。第一に、化合物ごとに構造が違うため標準品力価の基準に定めた品。検体と同じアッセイで並べて測り、相対力価の基準にする。(リファレンス品)が入手しにくく、分析法を一から立てる必要があります。第二に、構造ごとに発がん性の強さが大きく異なるうえ、既存の発がん性データがほとんど存在しません。第三に、二級アミンを持つ原薬は数が多く、対象となる医薬品が非常に幅広いことです。⁠NDSRIは「その薬に固有」であるがゆえに、既存のNDMA代表的なニトロソアミンの一種で発がん性が知られる。バルサルタン原薬から検出されニトロソアミン問題の発端となった。向けの知見をそのまま流用できないところに本質的な難しさがあります。 不純物全体のなかでの位置づけは 不純物の種類 も参照してください。

許容摂取量(AI)の決め方 — CPCAとread-across

許容摂取量(AI, Acceptable Intake)とは、生涯にわたり毎日摂取しても発がんリスクが無視できる水準にとどまる、一日あたりの上限量です。その決め方には序列があります。最上位は、化合物固有の発がん性データ(動物試験のTD50など)を線形外挿し、10万分の1の理論リスクに対応する値を算出する方法です。

しかしNDSRIは固有データを欠くことがほとんどで、次善の手法が要ります。一つはread-across(リードアクロス)、すなわち構造が類似し発がん性データのある化合物からAIを借りる方法です。もう一つが、FDAが示したCPCA(Carcinogenic Potency Categorization Approach、発がん力価カテゴリー化アプローチNDSRIの発がん力価を分子の構造的特徴から段階的に見積もり、カテゴリーごとに推奨許容摂取量を割り当てる方法。)です。これはニトロソ基周辺のα位水素の数や電子求引基の有無といった分子の構造的特徴から力価を5段階のカテゴリーに分類し、カテゴリーごとに推奨AIを割り当てる枠組みで、FDAの推奨値はおおむね26.5 ng/日から1500 ng/日の範囲に及びます。データが乏しいほど保守的な値になる、という順序を押さえると運用の全体像が見えてきます。

(Q)SAR予測と分析・リスク評価の流れ

変異原性の一次評価では、ICH M7が相補的な2つの(Q)SAR(定量的構造活性相関)手法を求めます。統計ベース(学習データに基づく予測)とエキスパートルールベース(専門家が構築した反応規則に基づく予測)の両方を走らせ、いずれも陰性なら原則として懸念なしと扱い、結果が割れる場合はエキスパートレビューやエイムス試験で確認します。NDSRIではニトロソ基そのものが強い構造警告(structural alert変異原性が疑われることを示す、化合物中の特定の部分構造。(Q)SAR評価やクラス分類の手がかりになる。)となるため、CPCANDSRIの発がん力価を分子の構造的特徴から段階的に見積もり、カテゴリーごとに推奨許容摂取量を割り当てる方法。のような力価評価と組み合わせて判断するのが実務的です。

POINT

NDSRIの管理は「予測((Q)SAR・CPCA)」と「実測(高感度分析)」の二本立てです。難揮発性のNDSRIは気化しにくいため、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS/MS)や高分解能のLC-HRMSで、ng/日オーダーの限度値に対応するppb(十億分の一)レベルの感度を確保します。安定同位体標識した内標準による同位体希釈法が、定量の信頼性を支えます。

リスク評価工程や製品に潜在するリスクの種類・発生可能性・影響度を系統的に特定・分析し、優先的に管理すべき項目を決定する手続き。は、特定(リスクのある品目の洗い出し)、確認試験(実際の検出・定量)、管理(AI以下への低減と正当化)の三段階で進みます。NDSRIでは、根本原因である二級アミンとニトロソ化剤の共存を工程や処方の段階で断つこと、亜硝酸塩の不純物を含みうる添加剤を見直すことが、分析と並ぶ管理の要になります。

まとめ

NDSRI(原薬由来ニトロソアミン)は、原薬そのものの構造がニトロソ化されて生じる、その医薬品に固有の不純物です。標準品が乏しく、構造ごとに発がん性が異なるため、既存のNDMA向けの知見をそのまま当てはめることはできません。許容摂取量(AI)は、化合物固有データからの外挿を最上位に、read-across構造の似た代替化合物のデータを借りて、対象物質の毒性や許容摂取量を推定する手法。やFDAのCPCAで保守的に決め、変異原性は相補的な(Q)SARの2手法で予測し、高感度LC-MS/MS液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせ、断片を一つずつ読んで配列や修飾部位を特定する手法。で実測します。ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。 M7という土台の上に、NDSRI固有の力価評価と分析法設計を積み重ねる姿勢が求められます。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、低分子に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。