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X線CTで製剤の中を見る:非破壊で見えるもの、見えないもの

Proglenth 編集部公開 2026-09-04更新 2026-10-18約4分で読めます
X線CTで製剤の中を見る:非破壊で見えるもの、見えないもの

X線CTは、角度を変えながらX線の透過像を撮り、計算で断層像を組み立てて、試料の内部を三次元で見る方法です。容器に入れたまま、あるいは切らずに撮れるため、錠剤や凍結乾燥製剤から水分を抜いて乾燥させ、長期安定性を高めた剤形。使用時に溶かして戻す。詳しく →ケーキ凍結乾燥後に残る固形物のこと。崩れると外観や再溶解性が悪くなるため、形状の確保が重要になる。詳しく →、組み立てたデバイスの内部を調べられます。

ただし、写るのはX線の通りにくさの差だけで、空隙や割れ、層の境目は写る一方、成分の違いや、画像の細かさより細い隙間は写りません。

この記事では、切って見る方法の限界、何が見えて何が見えないか、使う場面、撮る前に決めること、依頼のときに確かめる項目を順に説明します。

この記事の要点

  1. 非破壊なら、この3つが同時に外れます。同じ個体を、容器に入れたまま撮り直して、時間を追えます。1. 切って見る方法の限界 ― 見たいものほど壊れやすい ↓
  2. CTが答えるのは「どこに空洞や割れがあるか」までで、写っていないことは、無いことの証明ではありません。2. 何が見えて何が見えないか ― 写る条件はX線の通りにくさの差 ↓

1. 切って見る方法の限界 ― 見たいものほど壊れやすい

内部を見る従来の方法は、割るか切るかして、断面を顕微鏡で観察することです。確実な方法ですが、3つの制約があります。

  1. 個体が失われます⁠:同じ試料で経時変化を追えないため、安定性試験出荷時から有効期限まで品質特性が規格内にとどまることを確認する試験。詳しく →のように時間を追う評価では、時点ごとに別の個体を使うことになり、個体差と経時変化が混ざります。
  2. 見えるのは切った断面だけです⁠:欠陥が偏っていれば、切った場所しだいで見つかったり見つからなかったりします。
  3. 切る操作が構造を変えます⁠:樹脂に埋めて研磨する間に、空隙や層の境目の形が変わることがあります。

凍結乾燥ケーキでは、3つめの影響が大きく出ます。孔の大きさや空隙率を測る従来の方法(BET製品中のエンドトキシンを検出・定量するバクテリアエンドトキシン試験の総称。詳しく →比表面積や水銀圧入法)は、ケーキをバイアルから取り出して測るのがふつうで、取り出す操作で水分を吸えば、測りたい構造が変わりかねません。

凍結乾燥した製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。詳しく →は、バイアルを開けただけで空気中の水分を吸い、内部の構造が変わることがあります。

非破壊なら、この3つが同時に外れます。同じ個体を、容器に入れたまま撮り直して、時間を追えます。

2. 何が見えて何が見えないか ― 写る条件はX線の通りにくさの差

CTが見ているのは、X線の通りにくさの違いです。周りと通りにくさが違う部分だけが、画像の濃淡として現れます。

知りたいもの写るか理由と、補う方法
空隙、割れ、層の境目写る周りの固体とX線の通りにくさがはっきり違う
錠剤の中の密度の偏り写る強く圧縮された部分と弱い部分が濃淡になる
有効成分と添加剤の分布写りにくいどちらも軽い元素からなる有機物で、差が小さいことが多い。分布はラマンなどの分光法で見る
画像の細かさより細い孔や隙間写らない通常のマイクロCTは、凍結乾燥ケーキの微細な孔を解像しきれない
水分量、結晶形、化学変化写らない物質の種類を調べる方法ではない

空隙が写ることは、CTの強みです。錠剤の空隙は強度や溶出に影響しますが、開発の現場では、錠剤全体の空隙率という1つの数字で語られることが多いと、2018年の総説(Markl ら)が指摘しています。CTなら、空隙がどこに偏っているかが見えます。

読み違えやすいのは、写っていないものです。画像に空隙が見えないのは、空隙が無いからとは限らず、画像の細かさより小さいだけかもしれません。

成分の分布も、X線の通りにくさが似ていれば見分けられません。成分の分布を知りたいなら最初から分光法を選ぶほうが早く、CTは形を、分光法は成分を受け持つと分けて考えます。

CTが答えるのは「どこに空洞や割れがあるか」までで、写っていないことは、無いことの証明ではありません。

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3. どんな場面で使うか ― 開けずに、割らずに見たいとき

使いどころは、内部の構造が性能を左右するのに、切ると壊れる対象です。

使う対象は、大きく3つに分かれます。

  • 凍結乾燥ケーキ⁠:容器を開けずに、ケーキ全体の孔の均一さや空隙率、収縮や倒壊の程度を三次元で見られます。ただし先ほどの表のとおり、微細な孔は見落とします。
  • 錠剤⁠:空隙や密度の偏り、層の構造を見ます。
  • 組み立てたデバイスと容器⁠:外から見えない内部の配置を、分解せずに確かめられます。

凍結乾燥では、凍結乾燥サイクルの設計やコラプス温度を踏まえて決めた条件で、ケーキが実際にどんな構造になったかを確かめる材料として使えます。

錠剤では、打錠で割れや層状の剥離が出たとき、内部のどこから始まっているかを探る手がかりが得られます。難溶性薬物の製剤で溶出がばらつく原因を、内部の不均一さから探る場面にも向きます。

デバイスでは、オートインジェクターの組立の可動部や、プレフィルドシリンジの栓とガラスの位置関係を確かめられます。

ただし、隙間の形が写っても、漏れるかどうかは別に確かめます。微小な漏れ道は画像の細かさより細いことがあるため、容器閉鎖系完全性は専用の試験で評価します。

使い方の基本は、時間のかかる測定を毎ロットの規格試験にするのではなく、原因究明や条件出しで関係を見つけ、簡便な指標に置き換えることです。内部構造と崩壊時間や溶出との対応が取れたら、それを工程内管理で回せる打錠圧、重量、厚みなどの指標に落とします。

4. 細かく見るか、全体を見るか ― 撮る前に決めること

CTでは、細かく見るほど、見られる範囲が狭くなります。拡大するには試料を線源に近づける必要があり、そのぶん視野に入る範囲が減るからです。

そのため、錠剤1個をまるごと、しかも最も細かく見ることはできません。

  • 全体の構造を見る場合⁠:層の位置や大きな空隙、割れを見たいなら、画像の細かさを譲ります。
  • 局所の微細な構造を見る場合⁠:粒子の境界や細孔を見たいなら、一部を切り出すか、視野を絞ります。

厚くて平たい板状の試料には、斜めから撮るラミノグラフィという方式があります。

条件を決めずに依頼すると、細かさが足りず何も分からないことが起こるため、見たい構造の大きさを先に決めておきます。

数値で判定に使うなら、もう1つ決めることがあります。三次元の画像から数値を出すには、しきい値の設定と領域の切り分けが要り、そこに解析者の判断が入るため、判定に使う前にその条件を固定しておきます。

5. 明日から確かめられること

CTを依頼するときは、次の順に決めます。

  1. 見たいもの⁠:空洞、割れ、層の境目、密度の偏りのどれかを決めます。成分の分布なら、CTではなく分光法を選びます。
  2. 大きさと範囲⁠:見たい構造の大きさが画像の細かさより十分大きいかを確かめ、全体を見るか一部に絞るかを決めます。
  3. 試料の扱い⁠:試料の切り出しをどちらが行うか、凍結乾燥ケーキを容器のまま撮れるかを確かめます。
  4. 受け取るデータ⁠:生データ(投影像)を受け取るか、再構成後の画像だけでよいかを決めます。
  5. 数値を出す場合⁠:報告書に、しきい値と領域の切り分けの条件が書かれているかを確かめます。
  6. 判定基準に使う場合⁠:分析法の移管、頑健性、画像データのデータの完全性に加え、GMP上の位置づけを決めます。

規格試験として扱うなら、CQAに合わせた分析法の選び方で、ほかの試験との役割分担を先に整理します。

年に数回の原因究明のために装置を持つ負担は大きく、撮り方と再構成の条件出しにも経験が要るため、受託分析に出す形が現実的です。

参考文献

  • Markl D, et al. Characterisation of pore structures of pharmaceutical tablets: A review. Int J Pharm. 2018;538(1-2):188-214.(錠剤の空隙の評価法。X線マイクロCTの利点と限界)
  • Vijayakumar A, et al. Characterization of Pharmaceutical Tablets by X-ray Tomography. Pharmaceuticals. 2023.
  • Image-Based Characterization: Non-Invasive Quantitative Characterization of Lyophilized Drug Product Using Three-Dimensional X-ray Microscopy Analytics. Drug Development & Delivery. 2020.(容器内で凍結乾燥ケーキを評価する意義、従来法との違い)
  • Rigaku, Observation of Lyophilized Formulations by Micro X-ray CT(バイアルを開けずに凍結乾燥ケーキを観察する例。メーカーの技術資料)
  • ASTM E1441-19, Standard Guide for Computed Tomography (CT)(規格本文は有償)
  • ICH Q8医薬品開発とQbDの考え方を示すICHガイドライン。重要品質特性(CQA)を定義している。詳しく →(R2), Pharmaceutical Development
  • ICH Q2(R2)分析法バリデーションのガイドライン。分析手順が妥当性を持つことを確認する枠組みを定める。詳しく →, Validation of Analytical Procedures
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この記事の目次
  1. 1. 切って見る方法の限界 ― 見たいものほど壊れやすい→
  2. 2. 何が見えて何が見えないか ― 写る条件はX線の通りにくさの差→
  3. 3. どんな場面で使うか ― 開けずに、割らずに見たいとき→
  4. 4. 細かく見るか、全体を見るか ― 撮る前に決めること→
  5. 5. 明日から確かめられること→
  6. 参考文献→
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  1. 1. 切って見る方法の限界 ― 見たいものほど壊れやすい→
  2. 2. 何が見えて何が見えないか ― 写る条件はX線の通りにくさの差→
  3. 3. どんな場面で使うか ― 開けずに、割らずに見たいとき→
  4. 4. 細かく見るか、全体を見るか ― 撮る前に決めること→
  5. 5. 明日から確かめられること→
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/xray-ct-nondestructive-inspection

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