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低分子医薬基礎知識・製造工程シリーズ低分子医薬品の製造と製剤化6/6基本

打錠とは?重量・硬度・崩壊を両立させる条件とよくある不具合

Proglenth 編集部公開 2026-08-29更新 2026-10-18約5分で読めます
打錠とは?重量・硬度・崩壊を両立させる条件とよくある不具合

打錠(tableting)は、粉末や顆粒を臼(うす、die)に充填し、上下の杵(きね、punch)で圧縮して錠剤にする工程です。錠剤の重量は臼に入る粉体の量で、硬度錠剤やカプセルなど固形の医薬品が規格どおりかを確かめる試験で、成分が溶け出す速さ(溶出)、1錠ごとの含量のばらつき、錠剤の硬さなどを調べます。詳しく →と崩壊性は圧縮力と処方で決まります。

ただし、硬度と崩壊性は圧縮力に対して逆向きに動き、打錠速度によっても変わるため、開発機で決めた条件が量産機でそのまま再現されるとは限りません。

この記事では、回転式打錠機の仕組み、圧縮力と硬度・崩壊性の関係、打錠障害と打錠速度、打錠中の工程内管理工程の途中で中間体の力価や純度などを確認する管理。最終規格の前に品質を作り込む要素。詳しく →、量産機への移管で確かめる点を順に説明します。

1. 回転式打錠機の仕組みと重量の決まり方

量産で使う回転式打錠機では、回転する円盤(ターレット)に多数の臼と杵が並び、1回転のあいだに充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。詳しく →・圧縮・排出をくり返します。圧縮では、上下の杵が圧縮ロールの間を通過して粉体に圧力がかかり、多くの機種は本圧縮の前に軽く押す予圧(プレ圧縮)の段を持っています。

錠剤は1錠ずつ計量して作るのではなく、臼に流れ込んだ粉体の体積で重量が決まります。そのため、重量のばらつきは、粉体の流動性とかさ密度の安定性に左右されます。

  • 流動性⁠:粉体の流れが悪いと、臼への充填量が回ごとに変わり、重量がばらつきます。流動性の評価法はUSP米国で医薬品・原料・試験法の公式基準を定める公定書で、製薬用水に関する規格も収載されている。詳しく →〈1174〉にまとめられています。
  • かさ密度⁠:かさ密度(粒子間の空隙を含めた体積あたりの質量)が変動すると、同じ充填体積でも重量が変わります。
  • 偏析⁠:粒子径の分布が広いと、ホッパー内で細かい粒子と粗い粒子が分かれ(偏析)、混合が均一でも臼に届くまでに含量製品にどれだけの目的物質が含まれるか(含量)や、その生物学的な効き目の強さ(活性)を示す指標です。培養液中の産生量を指す場合もあります。詳しく →がばらつきます。

噴霧乾燥で得た粉体のように、かさ高く流れにくい粉体はそのままでは打錠しにくいため、造粒して粒子を整えるか、流動性のよい添加剤と混ぜて直接打錠します。どちらを選ぶかは造粒の使い分けで解説しています。

2. 圧縮力と硬度・崩壊性

錠剤には、含量が均一であること、輸送や取り扱いで割れない機械的強度を持つこと、服用後に決まった速さで崩壊・溶出することが求められます。このうち機械的強度と崩壊性は、圧縮力に対して逆向きに変化します。

錠剤の硬度は、錠剤を押しつぶして破壊するのに要する力(破壊強度)で表し、試験法は欧州薬局方欧州医薬品品質局(EDQM)が発行する、医薬品の品質基準を定めた公定書で、署名国・加盟国の規制に法的効力を持つ。詳しく →2.9.8などに定められています。

圧縮力を上げると、粒子どうしの接触面積が増えて結合が強まり、錠剤の硬度は上がります。同時に錠剤内部の空隙率が下がって水が浸透しにくくなるため、崩壊と溶出は遅くなります。

圧縮力を下げると崩壊は速くなりますが、硬度が下がり、輸送中の振動で欠けや割れが生じやすくなります。両方を規格内に収めるには、圧縮力の調整だけでなく、処方を見直します。

  • 崩壊剤⁠:水を吸って膨潤し、錠剤を内側から崩す添加剤です。種類と量で崩壊時間を調整します。
  • 結合剤⁠:低い圧縮力でも粒子どうしを結合させる添加剤です。圧縮力を上げずに硬度を確保するために使います。

硬度と崩壊時間がどちらも規格の端に寄っている場合は、圧縮力の調整だけでは両立が難しいため、崩壊剤・結合剤の種類と量や造粒条件を見直します。

3. 打錠障害と打錠速度

打錠障害は、処方、粉体の物性、打錠機の条件が組み合わさって起きる錠剤の欠陥です。代表的なものは次の3つです。

  • キャッピングmRNAの5'末端にキャップ構造を付ける修飾で、分解を防ぎ翻訳効率を高めます。3'末端のポリA付加とは別の修飾です。詳しく →⁠:錠剤の上部が帽子状にはがれる現象です。粉体中の空気の閉じ込めや、除圧時に錠剤が弾性回復することが原因に挙げられ、圧縮力が高すぎても起きます。
  • ラミネーション⁠:錠剤が層状に割れる現象で、キャッピングと同じ原因で起きることが多い障害です。
  • スティッキング・ピッキング⁠:粉体が杵の表面に付着する現象です。刻印の部分に付着して錠剤の表面がはがれ取られるものをピッキングと呼びます。滑沢剤(杵・臼と粉体の摩擦を下げる添加剤)の量、原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →の性質、湿度が関わります。

打錠速度を上げると、ドウェルタイム(dwell time、杵頭の平らな部分が圧縮ロールの下を通過し、最大に近い圧力がかかり続ける時間)が短くなります。圧力がかかっているあいだに粒子は変形して結合し、閉じ込められた空気も抜けるため、ドウェルタイムは錠剤の強度や打錠障害に影響します。その影響の大きさは、粉体が塑性変形しやすいか、もろく砕けやすいかといった変形特性によって異なると整理されています(Anbalagan ら、2017年)。

Sarkar ら(2015年)は、アセトアミノフェンとデンプンのモデル処方で、圧力をかける速さが錠剤の強度とキャッピングを左右する主な因子だったと報告しています。この報告で最も有効だった対策は、低い予圧を長いドウェルタイムでかけることでした。粒子が並び直して空気が抜けたあとに、本圧縮で粒子を強く結合させます。

打錠速度を上げると圧力をかける速さも上がるため、開発機の低速で問題なく打錠できた処方でも、量産の高速機ではキャッピングが出ることがあります。Tye ら(2005年)も、直接打錠用の添加剤の一部で、同じ圧縮圧でも打錠速度によって錠剤の強度が変わることを示しています。対処には、打錠速度を下げる、予圧を加える、本圧縮の圧縮力を見直す、処方を見直すといった方法があります。

POINT

開発機の低速で決めた圧縮力は、量産機の高速では同じ硬度と外観を再現するとは限りません。スケールアップや設備の変更では、速度を変えたときの硬度とキャッピングの変化を確かめ、工程バリデーションで運転範囲を決めるときは、圧縮力と打錠速度を組で扱います。

4. 打錠中の管理 ― 抜き取り試験と1錠ごとの圧縮力監視

打錠中は、重量・硬度・厚さを一定の間隔で抜き取って測り、摩損度、崩壊時間なども確かめます。摩損度は、主に素錠(コーティングしていない錠剤)をドラムに入れて100回転させ、欠けや摩耗で減った重量の割合を見る試験です。USP〈1216〉は、減量1.0%以下を多くの製品で許容できる値としています。

USP〈1216〉の摩損度試験法は、ICH Q4B Annex 9 で、欧州薬局方・日本薬局方の試験法と相互に利用できるとされています(2.1)。相互に利用するときの判定基準は、承認申請書に別の定めが無い限り、減量1.0%以下です(2.2)。崩壊試験と溶出試験は、ロットごとの出荷試験製品を患者に投与する前に安全性・品質・有効性を確認するために実施する一連の規格試験。詳しく →でも確かめます。

抜き取りの試験では、抜き取った錠剤のあいだの錠剤は測っていません。この限界を考えるうえで参考になる例に、2008年4月に米国で全規格がクラスIで回収されたジゴキシン錠 Digitek があります。

FDAの発表によると、回収の理由は、厚さが通常の2倍の錠剤が出荷された可能性があり、その錠剤は有効成分を2倍含むおそれがあったためです。訴訟の記録(2010年5月の Pretrial Order #60)によると、2007年11月に製造された約480万錠のロットから、規格外試験結果が規格の範囲を外れること。原因調査の対象になる。詳しく →の錠剤が20錠見つかっていました。このロットは、2回の検査でほかには見つからず、2008年1月28日に出荷されています。

480万錠に20錠は100万錠あたり約4錠の割合で、間隔を空けた抜き取り検査で見つけることが難しい頻度です。こうした抜き取りのあいだを補うのが、1錠ごとの圧縮力の監視です。

  • 圧縮力の監視⁠:圧縮時の力を1錠ごとに測り、設定範囲を外れた錠剤を自動で排出します。杵の間隔が一定なら、臼に入った粉体が多いほど圧縮力が大きくなるため、圧縮力から重量の外れを全数について推定できます。
  • 重量の自動制御⁠:測った圧縮力をもとに、臼への充填深さを自動で調整して重量を目標に保ちます。

近赤外分光赤外光の吸収パターンから分子の官能基や物質を同定する分光法です。ATRは試料を前処理なく手軽に測れる方式です。詳しく →法で含量を連続して測るインライン分析を組み合わせる構成もあり、工程内管理の考え方は工程内管理(IPC)で解説しています。

抜き取り試験の頻度を減らす場合は、測っていない錠剤の品質を何で保証するかを先に決めておきます。

5. 量産機への移管で確かめること

打錠機は同じ回転式でも、二層錠への対応、封じ込め仕様、ターレットの交換方式など仕様の幅が広い設備です。導入やスケールアップ小型培養で確立した条件を、より大きなバイオリアクターへ拡大する取り組みです。酸素供給の指標kLaなどを揃え、性能を再現します。詳しく →、委託先への移管では、次の点を確かめます。

  • 粉体の物性⁠:打錠する粉体の流動性、かさ密度、粒子径分布のデータがあるかを確かめます。
  • 速度とドウェルタイム⁠:開発機と量産機で、回転速度とドウェルタイムがどれだけ違うかを確かめ、速度を上げたときの硬度とキャッピングを試験で確認します。
  • 予圧と本圧縮⁠:予圧の段があるか、本圧縮の圧縮力との組み合わせを試したかを確かめます。
  • 工程内管理⁠:1錠ごとの圧縮力の監視と自動排出の機能があるか、硬度と崩壊時間がどちらも規格の端に寄っていないかを確かめます。
  • 封じ込めと切り替え⁠:高薬理活性の原薬なら封じ込め仕様か、品目切り替えでの分解・洗浄のしやすさはどうかを確かめます。

各社の打錠機とカプセル充填機は打錠・充填設備で比べられます。封じ込めの考え方は高薬理活性原薬の封じ込め、品目切り替えでの交叉汚染別の製品どうしが混ざり込む汚染。多品種製造で洗浄や使い捨てにより防ぐ対象。詳しく →の防ぎ方は切替と交叉汚染で解説しています。

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  • 5. 量産機への移管で確かめること

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参考文献

  • ICH Q8医薬品開発とQbDの考え方を示すICHガイドライン。重要品質特性(CQA)を定義している。詳しく →(R2), Pharmaceutical Development
  • USP General Chapter 〈1216〉 Tablet Friability(本文は有償の USP–NF に収載)
  • ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → Q4B Annex 9(R1), Tablet Friability General Chapter(2.1 欧州薬局方国または地域の公的機関が定める医薬品の規格・試験法・品質基準を収載した公定書。詳しく → 2.9.7・日本薬局方 参考情報・USP〈1216〉の相互利用、2.2 減量1.0%以下の判定基準)
  • USP General Chapter 〈1174〉 Powder Flow(本文は有償の USP–NF に収載)
  • Ph. Eur. 2.9.8 Resistance to crushing of tablets(本文は有償の欧州薬局方に収載)
  • Anbalagan P, Liew CV, Heng PWS. Role of dwell on compact deformation during tableting: an overview. J Pharm Investig. 2017;47(3):173-181. doi:10.1007/s40005-017-0306-z
  • Sarkar S, Ooi SM, Liew CV, Heng PWS. Influence of rate of force application during compression on tablet capping. J Pharm Sci. 2015;104(4):1319-27. doi:10.1002/jps.24328
  • Tye CK, Sun CC, Amidon GE. Evaluation of the effects of tableting speed on the relationships between compaction pressure, tablet tensile strength, and tablet solid fraction. J Pharm Sci. 2005;94(3):465-72. doi:10.1002/jps.20262
  • Actavis Totowa, Digitek (digoxin tablets, USP) recall notice, 2008年4月(Drugs.com 掲載の FDA 発表の転載)
  • United States District Court for the Southern District of West Virginia, In re Digitek Products Liability Litigation, MDL No. 2:08-md-01968, Pretrial Order #60(2010年5月25日)(2007年11月製造ロットの規格外錠剤20錠、2回の検査、2008年1月28日の出荷、回収の範囲)
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この記事の目次
  1. 1. 回転式打錠機の仕組みと重量の決まり方→
  2. 2. 圧縮力と硬度・崩壊性→
  3. 3. 打錠障害と打錠速度→
  4. 4. 打錠中の管理 ― 抜き取り試験と1錠ごとの圧縮力監視→
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  1. 1. 回転式打錠機の仕組みと重量の決まり方→
  2. 2. 圧縮力と硬度・崩壊性→
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/tableting-compression-basics

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