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研究・DMPKシリーズDMPKの基本13/16基本

AUC・Cmax・Tmaxとは?同じ量を飲んでも、なぜ数字が変わるのか

Proglenth 編集部公開 2026-07-27更新 2026-10-23約4分で読めます
AUC・Cmax・Tmaxとは?同じ量を飲んでも、なぜ数字が変わるのか

AUC・Cmax・Tmaxとは、薬を飲んだあとの血中濃度の動きを表す3つの数字で、新薬の用量を決めるときや、ジェネリックが先発品と同じかを判定するときに使います。AUC(濃度-時間曲線下面積)は曝露の総量、Cmax(最高血中濃度)投与後に達する最も高い血中濃度。薬がどれくらいの速さで届くかの指標。詳しく →は濃度の山の高さ、Tmax(最高血中濃度到達時間投与後にCmaxに達するまでの時間で、薬物の吸収速度の指標として用いられる。詳しく →)は山頂までの時間を表します。

とはいえ、⁠同じ錠剤を同じ量だけ飲んでも、これらの数字は同じになるとは限りません。 食事や体質で、全身に届く量と体から取り除かれる速さが変わるからです。

この記事では、3つの数字が何を表すのか、同じ量でも数字が変わる理由、2つの製剤が同じと言える基準、自分の試験データで何から確かめるかを順に説明します。

この記事の要点
  • AUC・Cmax・Tmaxとは⁠:血中濃度の山の下の面積、山の高さ、山頂までの時間で、AUC が同じでも Cmax と Tmax が違えば効き方は変わります。
  • 同じ量なら同じ数字か⁠:食事や薬を分解する酵素の個人差で、AUC が何倍も変わる薬があります。
  • 何で同じと言えるか⁠:平均の比ではなく、その比の90%信頼区間が80〜125%に収まるかで判定します。

この記事の前提

初めての方は、先にこちらを読むと、この記事に出てくる言葉の意味が分かります。

  • 生物学的同等性とバイオウェーバーとは?人の試験を溶出試験で代えられるのはいつか生物学的同等性・90%信頼区間・80〜125%・バイオウェーバー約6分
この記事は、「非臨床・臨床へ進めたい」ときの確認項目「薬物動態を見積もる」の1つです。この項目で確かめること(6項目)の一覧へ

1. AUC・Cmax・Tmaxとは、血中濃度の何を表すのか

3つの数字は、血中濃度の同じ山を、面積・高さ・時間という別の角度から測ったものです。 薬を飲むと血中濃度は上がり、山を越えてゆっくり下がります。この山を時間に沿って描いたものが、血中濃度-時間曲線です。

  • AUC⁠:山の下の面積です。濃度がどれだけ高く、どれだけ長く続いたかをまとめた数字で、曝露(体が薬にさらされること)の総量を表します。
  • Cmax⁠:山のいちばん高い点です。濃度が一時的に高いときに出やすい副作用を見積もるときに使います。
  • Tmax⁠:山頂に着くまでの時間です。効き始めの速さと、吸収の速さの目安です。
血中濃度の山から読むAUC・Cmax・Tmaxの模式図。横軸は飲んでからの時間、縦軸は血中濃度。左は1本の曲線で、山のいちばん高い点の高さがCmax、山頂に着くまでの時間がTmax、山の下の面積がAUC(体が薬にさらされた総量)。右は吸収が速い曲線とゆっくりな曲線を重ねたもので、速いほうは山が高く山頂に早く着き、ゆっくりなほうは山が低くなだらかで、Tmaxが遅い。全身に届く量と取り除かれる速さが同じなら、2本の山の下の面積(AUC)は同じ。徐放錠は、低くなだらかな山をねらって作られる
血中濃度の山から読むAUC・Cmax・Tmax(模式図)
図をダウンロード(会員・無料)

同じ量の薬でも、吸収が速ければ山は高く、山頂に早く着きます。1日1回の徐放錠(ゆっくり溶けるように設計した錠剤)は、山を低くなだらかにして、濃度を長く保つように作られています。

AUC が同じでも Cmax と Tmax が違えば効き方は変わるため、3つの数字は並べて読みます。 では、同じ錠剤を同じ量だけ飲めば、山の形は同じになるのでしょうか。

2. なぜ、同じ量を飲んでも数字が変わるのか

曝露の大きさは、全身に届く量と、体から取り除かれる速さの釣り合いで決まり、そのどちらも人と条件で変わるからです。 飲んだ量のうち全身に届く割合をバイオアベイラビリティ投与した薬のうち、未変化のまま全身循環に到達する割合。静脈内投与を100%として比較する。詳しく →、肝臓や腎臓が薬を取り除く力をクリアランスと呼びます。

変える要因の代表は、次の2つです。

  1. 食事⁠:前立腺がんの治療薬アビラテロン酢酸エステルは、米国の添付文書によれば、脂肪の多い食事と一緒に飲むとアビラテロンの AUC が空腹時のおよそ10倍でした。そのため、空腹時に飲むよう決められています。
  2. 体質⁠:薬を分解する酵素の働きには、生まれつきの個人差があります。たとえば CYP2C19(肝臓で薬を分解する酵素の1つ)の働きが弱い人は、欧米より日本人を含む東アジアの人に多いことが知られています。

主にこの酵素で分解される胃酸を抑えるオメプラゾールは、働きが弱い人では AUC が大きく出ます。反対に、血を固まりにくくするクロピドグレルはこの酵素で効く形に変わる薬なので、働きが弱い人では効く成分の曝露がかえって下がります。

服用のタイミングが細かく指定されている薬なら、その根拠になった食事の影響のデータが、添付文書の薬物動態投与した薬が体内で吸収・分布・代謝・排泄されていく挙動。ADCではDARが大きく影響する。詳しく →の欄に載っていることがあります。

つまり、別の試験や他社のデータと数字を比べるときは、食事の条件と対象者がそろっているかを先に確かめる必要があります。数字が人と条件で動くなら、2つの製剤が「同じ」とは何で言えばよいのでしょうか。

3. では、2つの製剤が同じと言えるのは何で決めるのか

後発品と先発品の AUC と Cmax の比について、統計で見積もった幅(90%信頼区間)が80〜125%に収まるかで決めます。 これを確かめるのが生物学的同等性二つの製剤が同程度に全身へ届くことを示すこと。後発品の評価などで用いる。詳しく →(BE)試験で、通常は健康な成人に先発品と後発品を期間を空けて両方飲んでもらいます。

よくある誤解は、「ジェネリックは先発品と2割まで違ってよい」という読み方です。80〜125%に収める必要があるのは平均の比ではなく、原則として見積もった幅の端から端までです。

たとえば平均が先発品の8割ちょうどなら、幅の下端は必ず80%を割るので、その製剤は通りません。平均の比が範囲の端に近いほど、幅の一部がはみ出しやすくなります。

生物学的同等性の判定で、80〜125%の範囲に何を収めるかを示す模式図。横軸は後発品÷先発品の比で、80%、100%、125%に線があり、80〜125%の範囲に色を付けている。各行に、平均の比を点、90%信頼区間を横棒で描いた。1行目は平均が先発品に近く、幅の端から端までが範囲に収まるので同等。2行目は平均は範囲の中だが端に近く、幅の下端が80%を割るので通らない。3行目は平均が先発品の8割ちょうどで、幅の下端は必ず80%を割るので通らない。「平均が2割以内なら同等」と読むと3行とも同等に見えるが、原則の判定では1行目だけが同等。横軸は比の対数の目盛りで描き、80%と125%は100%から同じ倍率だけ離れている
「80〜125%」に収めるのは平均ではなく幅(模式図)
図をダウンロード(会員・無料)

実際の差は、もっと小さく出ています。FDA が1996年から2007年に承認した経口の後発品の約2,070件をまとめた報告では、平均の差は AUC で約3.6%、Cmax で約4.4%でした。

日本のガイドラインでは、Tmax は合否を決める数字ではなく、参考として報告します。⁠判定で読むのは平均の比ではなく、その比をどれだけ確かに見積もれたかを示す幅です。

4. 自分の試験データでは、何から確かめるのか

最初に、数字より先に試験の条件を読みます。 添付文書の「薬物動態」の欄や試験報告書には、AUC や Cmax と一緒に、空腹時か食後か、1回か繰り返しか、健康な成人か患者かが書かれています。そのうえで、次の3つを確かめます。

  1. 試験条件の一致⁠:比べる相手の試験と、食事の条件、投与の回数、対象者がそろっているかを確かめます。
  2. 採血の時点⁠:最高血中濃度(Cmax)と到達時間(Tmax)は、実際に採血した時点の中から拾った値です。1時間後と3時間後しか採血していなければ、2時間後の本当の山頂は残りません。山頂の前後に採血の時点が十分にあるか、濃度が下がりきるまで追って曲線下面積(AUC)の裾を取りこぼしていないかを見ます。
  3. 同等性の判定⁠:生物学的同等性(BE)試験の結果なら、平均の比ではなく、90%信頼区間の両端が80〜125%に収まっているかを確かめます。

まずは手元にある薬の添付文書を1つ開き、薬物動態の欄の条件を書き出してみます。後発品の添付文書なら、先発品と比べた2本の平均血中濃度の曲線が載っていることが多く、山頂の高さと位置がそろっているかを目で確かめると、表の数字の意味がつかみやすくなります。

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  • 4. 自分の試験データでは、何から確かめるのか

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参考文献

  • 厚生労働省「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」(平成9年12月22日 医薬審第487号。令和2年3月19日 薬生薬審発0319第1号による改正を含む)
  • FDA, Bioequivalence Studies With Pharmacokinetic Endpoints for Drugs Submitted Under an ANDA(Draft Guidance、2021年8月)
  • FDA, Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence(2001年)
  • Davit BM, Nwakama PE, Buehler GJ, et al. Comparing generic and innovator drugs: a review of 12 years of bioequivalence data from the United States Food and Drug Administration. Ann Pharmacother. 2009;43(10):1583-1597.
  • Janssen Biotech, ZYTIGA (abiraterone acetate) tablets, US Prescribing Information, 12.3 Pharmacokinetics(食事の影響)
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非臨床・臨床へ進めたい(10項目のうち2番目)薬物動態を見積もる動物の血中濃度から、人での投与量と間隔をどう見積もるのか?この項目で確かめること(6項目)を見る
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シリーズの次(14/16)半減期とは?クリアランス・分布容積との関係と報告書の読み方→
シリーズDMPKの基本13 / 16 本目
半減期とは?クリアランス・分布容積との関係と報告書の読み方次の記事 14本目・基本・約5分半減期とは?クリアランス・分布容積との関係と報告書の読み方半減期(消失半減期、t1/2)は血漿中の薬物濃度が半分に下がるまでの時間で、クリアランス(CL)と分布容積(Vd)から t1/2 = 0.693 × Vd ÷ CL の関係で決…→
  1. 1DMPKとは?人で試す前に、薬の体内での動きをどう見積もるのか
  2. 2pKaとは?薬の分子は、なぜpHで電荷を持つのか
  3. 3脂溶性(logP・logD)とは?飲み薬の候補を選ぶとき、なぜ測るのか
  4. 4溶解度とは?薬が溶けるかは何で決まり、どう測るのか
  5. 5薬は、どうやって細胞膜を通り抜けるのか?受動拡散・細胞のすき間・トランスポーター
  6. 6Caco-2透過性試験とは?Pappは何を表し、どう読むのか
  7. 7BCS分類とは?溶けやすい薬なら、よく吸収されるのか
  8. 8生物学的同等性とバイオウェーバーとは?人の試験を溶出試験で代えられるのはいつか
  9. 9バイオアベイラビリティと初回通過効果とは?飲み薬の届く割合が低いのは、吸収が悪いからなのか
  10. 10血漿タンパク質結合と遊離型分率(fu)とは?結合率99%の読み方
  11. 11薬物代謝の第I相・第II相とは?代謝の結果が開発の判断を変える場面
  12. 12肝ミクロソームの代謝安定性試験とは?ミクロソームで安定なら、体内でも安定なのか
  13. 13AUC・Cmax・Tmaxとは?同じ量を飲んでも、なぜ数字が変わるのかいま読んだ記事
  14. 14半減期とは?クリアランス・分布容積との関係と報告書の読み方
  15. 15分布容積(Vd)とは?体の水の100倍になる薬がある理由
  16. 16CYP阻害・誘導による薬物相互作用(DDI)とは?効きすぎと効かない理由
#低分子#DMPK#曝露量#AUC

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この記事の目次
  1. 1. AUC・Cmax・Tmaxとは、血中濃度の何を表すのか→
  2. 2. なぜ、同じ量を飲んでも数字が変わるのか→
  3. 3. では、2つの製剤が同じと言えるのは何で決めるのか→
  4. 4. 自分の試験データでは、何から確かめるのか→
  5. 参考文献→
シリーズ13 / 16
DMPKの基本
  1. 1DMPKとは?人で試す前に、薬の体内での動きをどう見積もるのか
  2. 2pKaとは?薬の分子は、なぜpHで電荷を持つのか
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この記事の目次
  1. 1. AUC・Cmax・Tmaxとは、血中濃度の何を表すのか→
  2. 2. なぜ、同じ量を飲んでも数字が変わるのか→
  3. 3. では、2つの製剤が同じと言えるのは何で決めるのか→
  4. 4. 自分の試験データでは、何から確かめるのか→
  5. 参考文献→
シリーズ13 / 16
DMPKの基本
  1. 1DMPKとは?人で試す前に、薬の体内での動きをどう見積もるのか
  2. 2pKaとは?薬の分子は、なぜpHで電荷を持つのか
  3. 3脂溶性(logP・logD)とは?飲み薬の候補を選ぶとき、なぜ測るのか
  4. 4溶解度とは?薬が溶けるかは何で決まり、どう測るのか
  5. 5薬は、どうやって細胞膜を通り抜けるのか?受動拡散・細胞のすき間・トランスポーター
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/pk-exposure-auc-cmax-tmax

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